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報酬から源泉された所得税を取り戻す④1号報酬(原稿料等)で稼ぐ人


外国語通訳と手話通訳は違う?


 所得税204条第1項第1号報酬(原稿料、講演料等)に規定する源泉徴収すべき報酬等の具体的な内容は、下記<参考>のとおりです。
 源泉徴収の対象とすべき報酬、料金、契約金等は、所得税法において列挙されています。

 源泉徴収の対象とすべき報酬等は、所得税法施行令に、「・・・にかかる報酬もしくは料金とする」と書かれており、基本的に、そこに列挙されている報酬、料金、契約金に限定されます。ただ、判断に悩む支払いも多いため、所得税基本通達において追加の説明がなされています。

 たとえば、通訳または翻訳に対する報酬は源泉徴収すべきものとして列挙されているため源泉徴収が必要です。一方、列挙されていない「手話通訳」の報酬は源泉徴収の必要がないということになります。これら通訳、翻訳、手話通訳はいずれも専門的な役務提供に対する報酬ですが、源泉徴収すべきかどうかの取扱いは異なるのです。

 なお通訳の報酬については、税制改正で、2007年7月1日の支払分から、源泉徴収すべき報酬として追加された経緯があります。海外とのビジネス、訪日観光客の増加などで、通訳の報酬支払いの機会が増えたのですね。
 報酬支払いが増えることは、その報酬の受け取りで稼ぐ人が増えることを意味します。国としては所得税を先取り(徴収の確保)したいわけです。

 近年は手話ニュース以外にも、政府や都道府県知事の会見時に手話による情報伝達が合わせて行われる機会も増えています。今後の税制改正により、手話通訳の報酬も新たに源泉徴収の対象とされるかもしれません。 

 支払側は源泉徴収の失念によるペナルティを避けるため、受取側は源泉徴収された税額を控除または還付で取り戻すため、どちらの立場からみても、源泉徴収の対象となる報酬の範囲には目配りしておく必要がありそうです。

第1号報酬に対する源泉徴収税額
 第1号報酬に対する源泉徴収税率は、報酬に対して10.21%です。ただし、同一人に対する1回の支払金額が100万円を超える部分の金額については、20.42%となります。
(1)報酬の支払金額が100万円以下の場合 ・・・ 報酬等×10.21%
(2)報酬の支払金額が100万円超 の場合
  ・・・(報酬額-100万円)×20.42%+102,100円


<参考>「1号報酬」に含まれる主な報酬
(所得税法204条第1項第1号/所得税法施行令320条第1項)
◆原稿の報酬、演劇・演芸の台本の報酬、口述の報酬、映画のシノプス(筋書き)料、文・詩・歌・標語等の懸賞の入賞金、書籍等の編さん料または監修料、((注1)の支払いは源泉徴収の対象外)
◆さし絵の報酬
◆作曲、編曲の報酬
◆レコード・テープまたはワイヤーの吹き込みの報酬、映画フィルムのナレーションの吹き込みの報酬
◆デザインの報酬、映画関係の原画料、線画料またはタイトル料、テレビジョン放送のパターン製作料、標章の懸賞の入賞金((注2)の支払いは源泉徴収の対象外)
◆放送謝金
◆著作権・著作隣接権または工業所有権の使用料、映画、演劇または演芸の原作料、上演料等
◆講演料(ラジオ、テレビジョンその他のモニターに対する報酬は源泉徴収の対象外)
◆脚本、脚色、潤色(脚本の修正、補正料)またはプロット(粗筋、構想)料の報酬、
◆翻訳または通訳の報酬(手話通訳の報酬は源泉徴収の対象外)
◆校正の報酬
◆書籍の装ていの報酬(製本の料金は源泉徴収の対象外)
◆速記の報酬
◆版下(写真製版用写真原板の修整を含むものとし、写真植字を除く) もしくは雑誌、広告その他の印刷物に掲載するための写真の報酬等
◆技術に関する権利
◆特別の技術による生産方式もしくはこれらに準ずるものの使用料
◆技芸(生け花、茶の湯、舞踏、囲碁、将棋、編み物、ペン習字、着付け、料理、ダンス、カラオケ、民謡、語学、短歌、俳句等)、スポーツその他これらに類するものの教授もしくは指導または知識の教授の報酬等
◆金融取引法に規定する投資助言業務に課する報酬等

(注1)懸賞応募作品の選稿料または審査料、試験問題の出題料または各種答案の採点料、クイズ等の問題または解答の投書に対する賞金等、直木賞、芥川賞、野間賞、菊池賞等の賞金品、鑑定料、テレビ・ラジオとのモニターに対する報酬
(注2)織物業者が支払ういわゆる意匠料(図案を基に織原版を作成するに必要な下画の写調料)または紋切料(下画を基にする織原版の作成料)、字または絵等の看板書き料





 

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