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所得税の約11倍の負担! 社会保険料


個人の税金①


入社3年目、独身者の「源泉徴収票」


 所得税を知る第一歩として、まず「源泉徴収票」を見てみましょう!
 源泉徴収票は、給与所得者(サラリーマン)にとって、所得証明としての役割を果たす重要な書類です。

 1年間ずっと一つの会社に勤務し続けた場合は、12月の最後の給与支給時に会社から交付されます。
 年の途中で会社を辞めた場合は、退職するときに交付されます。

 住宅ローンを申し込む時には、源泉徴収票の提出を求められます。
 ご覧になったこと、ありますよね。

 え?  中身までじっくり見たことはない? 

 それでは、ワンダマル(株)に入社して3年目、高城浩二さんの源泉徴収票を見てみましょう。事例は、令和6(2024)年分を想定しています。


入社3年間、(花の)独身、
高城浩二さんの「源泉徴収票」


年末調整で課税完了!


 高城さんは、1月1日から12月31日までの1年間とおして同じ会社に勤務していますので、主たる勤務先の会社が「年末調整」を行います。
 年末調整とは、給与所得者にとっての確定申告に代わる手続きで、会社が各従業員の年税額の計算と国に対する納税を代行するシステムです。

 「会社がすべて処理してくれるから、楽で良いです~♪」と思いますか?
 確かに、楽な面もあるのですが、会社に年末調整をしてもらうためには、従業員はさまざまな個人情報を会社に提出しなければなりません。

 たとえば、控除の対象としたい家族の収入と個人番号(マイナンバー)、同居か非同居か、障害者である場合にはその内容、住宅ローンの年末残高、契約している生命保険の受取人など、個人的な情報です。
 会社に対して、あまり積極的に提出したくない書類もありますね。


過去には、裁判も


 もちろん会社にとっても、年末調整の事務作業は相当な負担です。
 月給と賞与から税金を天引きして国に納付する「源泉徴収」のしくみも、給与所得者の確定申告といえる「年末調整」の作業も、すべては会社の事務負担の下で成り立っています。

 過去に、「これほど作業負担を会社に押し付けるのはいかがなものか!」と年末調整担当者の人件費、事務用品代などのコストを国に請求する形で、裁判を起こした会社があったほどです。


給与に対する「みなし必要経費」は124万円


 高城さんの給与収入(給料・賞与の合計である年収)は400万円ですが、給与所得控除後の金額は276万円となっていますね。
 給与所得控除とは、給与収入に対する「みなし必要経費」です。
 みなし必要経費として124万円(月々約10万円)が適用されています。

 給与所得控除額は最低保障額55万円から上限額195万円まで、個人の事情は考慮せず、給与収入に応じた控除額を所得税法が定めています。

 「いやいや私は、業界紙を読んで勉強し、資格取得のために学校に通い、もっと給与収入をアップさせるべくお金を使っています!」という方には、概算額での経費控除だけではなく、実額による必要経費の一部を控除できる「特定支出控除」の特例も用意されています。


生活面の必要経費は1,116,968円


 続いて「所得控除」は生活面での必要経費です。
 個人の事情を考慮した人的控除保険料控除が適用されます。
 
 高城さんには扶養する親族はいませんが、独身者であっても自分に対する基礎控除48万円が適用されます。
 基礎控除48万円ということは、1か月当たり4万円。
 毎月の生活費4万円で最低限度の生活維持に足りそうでしょうか?

 次は、保険料控除。
 社会保険料596,968円は生活面の必要経費として全額が控除対象ですが、生命保険料や地震保険料などは控除額に上限があります。

 高城さんは一般生命保険に加入し年12万円の保険料を支払っているので、新契約分の生命保険料控除4万円が適用されています。
 地震保険には加入していないようです。

 これら所得控除の合計額1,116,968円(=48万円+596,968円+4万円)が所得税計算において認められた生活面での必要経費です。


てんやわんやの「定額減税」


 さて、高城さんの年収(支払金額)は400万円、年税額は53,200円です。
 ただ、令和6(2024)年の所得税には「定額減税」の適用がありますので、もしも、令和5(2023)年と同じ年収であっても税負担は減少します。


 ちょっと、寄り道。
 所得税は、合計所得金額1,805万円以下である所得者本人に対して3万円、その同一生計配偶者と扶養親族に対して1人につき3万円が減税されます。
 所得者本人、同一生計配偶者、扶養親族のいずれも居住者(日本に住所がある人)に限ります。   

 住民税は、所得割額から本人1万円、同一生計配偶者と扶養親族は1人につき1万円が定額で減税され、こちらの事務は地方団体の担当です。
 算定される減税額が定額減税前の所得税額と住民税の所得割額を上回り、減税しきれない額がある場合は自治体から「調整給付金」が支給されます。 

 4人家族であれば16万円の定額減税、小さくない金額ではありますね。

 高城さんの年税額53,200円は定額減税3万円が適用された後の税額です。 
 そのため、年末調整後の源泉徴収票には「定額減税の恩恵があります!」という政府のアピールを記載しなければなりません。
 具体的には、「源泉徴収時所得税減税控除済額30,000円」(所得税3万円の減税額を控除済みです)と「控除外額0円」(控除し切れなかった金額はありません)という摘要への記載です。

 このように地方自治体の作業負担の増大に加えて、会社ご担当者の減税額の計算と給与明細書や源泉徴収票への記載など事務負担は相当なものです。
 普通に、1人当たり給付金4万円の支給とすべきだったと感じます。


所得税の約11倍! 社会保険料、恐るべし


 さて、年収400万円で所得税が年53,200円、月当たりにして4,433円です。
 税負担は高いというイメージでしょうか?

 しかし驚くべきは、社会保険料等の金額は59万円、令和6年は所得税が減税される影響もあり、何と所得税の11倍もの負担となっています!

 社会保険料は労使合わせて給料に対して約30%の負担であり、本人も給料から約15%天引きされ、会社も給料に対して約15%の負担が生じています。

 消費増税は大きく取り上げられ、反対だ!やむをない!の議論のなかで、やっとこさっとこ軽減税率の創設と合わせて税率2%がアップしました。
 しかし、その陰で、社会保険料の負担率は年々上昇しています。

 保険とは保険料を支払うことで万が一のリスクに備えるためのしくみで、相互扶助の精神で助け合う制度です。
 しかし「Social Security Tax」と表現されるとおり、社会保険料は税と同じ性質であり、見返りがなくとも支払いが義務となっています。


税知識は、きっと武器になる!

 「年末調整で完結!」することが、税金と社会保険は会社任せで大丈夫、納税している感覚が希薄になる、という状況を生み出す一因でもあります。

 さまざまな会社を渡り歩く、副業をする、独立してフリーランスになる、すでに働き方も多様化しています。

 ご自分の税と社会保険について、チェックしてみませんか?
 ご一緒に、「Tax Literacy」(税知識)を、高めていきましょう!
 


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