駆け込み政策の「定額減税」で、現場は混乱
定額減税が受けられる人
令和6年分(前年課税の住民税は令和5年分)の合計所得金額が1,805万円以下である本人と、同一生計配偶者および扶養親族に対して定額減税が実施されます。
本人および親族は、いずれも居住者に限ります。
(注)居住者 ・・・ 国内に住所または現在まで引き続き1年以上の居所を有する個人
定額減税の対象者は、基本的に、給与収入が2,000万円(所得金額調整控除(子ども等)の適用がある人は年収2,015万円)以下で年末調整の対象となる人を想定しています。
(注)所得金額調整控除(子ども等)・・・ 給与収入850万円を超える人が、子育て・介護世帯等である(同一生計内に23歳未満の扶養親族または特別障害者がいる)場合等に給与収入から最高15万円を控除する減税措置
給与計算で減税の適用を受けたものの年末時点で合計所得金額が1,805万円を超えることとなり、減税額を年末調整または確定申告で納税しなければならない(取り戻される)ケースも起こります。
いったん手に入れたお金を後で取り上げられると、負担感が増しますし、差し引きチャラであっても、何だか損した気分になりませんか?
6月に向けて源泉事務のご担当者、市役所の方々の作業量が増大します。駆け込み政策の実施で混乱するのは、いつも現場の方々ですね。
制度の概要を見ておきましょう!
所得税からの減税
令和6年分の所得税額から、本人3万円、同一生計配偶者と扶養親族は1人につき3万円が定額で控除されます。
4人家族であれば減税額は12万円となりますので、大きいですね。
(注1)同一生計配偶者 ・・・ 所得者(合計所得金額の制限なし)と生計を一にする配偶者で、合計所得金額が48万円以下の人
(注2)扶養親族 ・・・ 所得者と生計を一にする親族、里子、養護受託老人で、合計所得金額が48万円以下の人(16歳未満の扶養親族も含む)
(注3)パート・アルバイトなど給与所得だけの場合は、給与収入103万円以下であれば合計所得金額48万円以下
住民税からの減税
令和6年度分の住民税所得割額から、本人1万円、同一生計配偶者と扶養親族は1人につき1万円が定額で控除され、控除しきれない額がある場合は「調整給付金」が支給されます。
なお、「控除対象配偶者以外の同一生計配偶者を有する人」については、令和7年度分の住民税所得割額から1万円が控除されます。
「控除対象配偶者以外の同一生計配偶者」とは、本人の合計所得金額が1,000万円を超えるため配偶者控除等の対象外となる配偶者であり、税額計算での人的控除は適用されませんが配偶者としての定額減税は受けられます。
定額減税の事務において「非控除対象配偶者」と呼びます。
ただ、同一生計配偶者が障害者等に該当する場合などを除き、納税義務者からの申告がない限り、令和5年末の時点で「控除対象配偶者以外の同一生計配偶者(非控除対象配偶者)」の情報を市役所側は補足できません。
そこで令和6年分の年末調整後に会社が作成する「給与支払報告書(源泉徴収票)」の摘要欄に「非控除対象配偶者減税有」の記載をすることとし、この情報に基づき非控除対象配偶者に対する減税は1年遅れで行われます。
結果として、同一生計配偶者に対する定額減税1万円については、令和6年度と令和7年度の2年間とも受けられる場合が生じます。
給与からの所得税の月次減税
所得税については、令和6年6月1日現在の「甲欄給与」の受給者を対象として、主たる勤務先において6月1日以後に支払われる給与等から順に定額減税を実施します。本人に交付する給与明細書には「定額減税額△○円」などの表示が必要となります。
(注)甲欄 ・・・ 給与の支払者に「扶養控除等申告書」を提出している人に支払う給与等の源泉徴収税額を算出するときに適用する税額、税率表
配偶者と扶養親族に対する定額減税は、年初に提出済みの「扶養控除等申告書」に基づき適用されます。
給与計算で人的控除の対象外となる同一生計配偶者、扶養控除等申告書の「住民税に関する事項」に記載していない16歳未満の扶養親族がいる人は、新設された「源泉徴収に係る定額減税のための申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書」に、その家族の名前等を記載のうえ会社に提出することで控除を受けられます。
後味が悪いケースも
給与計算での定額減税は、所得者本人の合計所得金額を考慮に入れずに、つまり所得制限を超えることが明らかである人も含めて、6月1日時点での甲欄給与の受給者を対象として適用します。
そのため年末時点で令和6年分の合計所得金額が1,805万円を超えることとなった場合は、減税額が取り戻される結果となります。
給与収入2,000万円以下で他の所得との合計額が1,805万円を超える人は、年末調整において精算され、給与収入が2,000万円を超えるため年末調整の対象とならない人は確定申告において精算します。
いったん減税された税額を改めて納税することになるため、痛税感が高まりそうです。
住民税の減税
住民税は定額減税適用後の納税通知書が市役所から送付されます。
令和6年6月分は住民税の天引き(特別徴収)がなく、「定額減税後の税額」を令和6年7月~令和7年5月分の11か月で均等に割った税額が徴収されることになります。
個人事業者の方など普通徴収の場合は、第1期分(令和6年6月分)の税額から控除し、控除しきれない場合は第2期分から順次控除されます。
年末調整における控除(年調減税)
従来の「基礎控除・配偶者控除等・所得金額調整控除申告書(基・配・所)」に「年末調整に係る定額減税のための申告書」が追加されます。
本人と配偶者について定額減税を受ける人は「年末調整に係る定額減税のための申告書」の定額減税対象の欄にチェックを付けて提出します。
年末調整では、住宅ローン控除後の所得税額(年調所得税額)から定額減税額を控除し、その後に102.1%を乗じることで復興特別所得税を含めた年調年税額を計算します。細かい話ですが、月々の給与計算では復興特別所得税を含めた所得税額から定額減税を行いますが、年末調整では定額減税控除後の年調所得税額に102.1%を乗じます。
年末調整後に作成する「源泉徴収票」の摘要欄に、実際に控除した年調減税額を「源泉徴収時所得税減税控除額△○円」、年調減税額のうち年調所得税額から控除しきれなかった金額を「控除外額△○円」と記載します。
さらに、先に見た合計所得金額が1,000万円超である所得者の同一生計配偶者を年調減税額の計算に含めた場合は、市役所への情報提供として「非控除対象配偶者減税有」の旨を記載します。
今年は、6月以後の給与計算での源泉徴収に加えて年末調整においても、ご担当者の事務負担が増えそうです。
くれぐれも体調にご留意いただき、定額減税事務を乗り切ってください!
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