朝と夜と永遠と一瞬の話。

ずっと続く朝と、ずっと続く夜、どちらがいいだろう。

生活リズムでいえば朝型タイプで、22時半には寝てしまうし、多少夜更かしをしても日付が変わるまでもたないし、徹夜もできない。夜になるにつれて思考力や脳の回転、パフォーマンスがあきらかに落ちるのがわかる。でも、だからこそ、夜が好きだ。たゆたっているような感覚がする。明るいとき、私は私のからだの外を向いていて、なにかを見て、相手に見られて、些細なことがささくれみたいにこころに引っかかって、それを気にしている間に流れに置いて行かれる。暗くなると、だれのことも見ないで済む。私のことも見られないで済む。明るいときに気にしていた小さなことが気にならなくなって、私に意識は内に向く。

夜のほうが世界が広い気がするのだ。日中、目の前にしかなかった世界が、夜になると空間になる。夜空みたいだ、とおもう。そして私は星のひとつで、ほかにもたくさん星は輝いて、同じようにいろんなところでいろんなひとが生きているのだな、とおもう。暗いと見えないものと、暗いから見えるもの。夜のあいだ、我々は創造力で飛べる。

でも朝も捨てがたい。なにせ気持ちがいい。晴れた朝、カーテンと窓をあけると、心が晴れる。行動するなら断然朝だ。夜の散歩もいいけれど、世界が広くなったぶん自分が小さくなったようで少し心細い。それに比べて朝の散歩の私の堂々としていることといったら。緑やつやつやして花の色が鮮やかで、川面にひかりが反射して、そのひかりに焼かれた目がしばらくちかちかして、世界がきらきら。

朝が来て夜が来て朝が来て、夜が来る。その繰り返し。この先じぶんがどうなっていくかはわからないが、それでも世界に朝が来て夜が来ることはわかる。眠れなくても起きれなくても泣き止まなくても、もう動けなくても、やっぱり朝は来るし夜も来る。ずっと同じことを繰り返しているようで、それでも我々はとしをとって、普段とちがう朝や夜がたまにあって、いままで積み重ねてきた朝と夜が、そのまま人生なんだなあ。

いつかどこかで白夜を体験したい。暗くない夜。それは終わらない朝なのか、明けない夜なのか。

永遠の朝と一瞬の夜。永遠の夜と一瞬の朝。ほんとうは朝も夜も永遠で、私たちが一瞬なのかもね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?