連珠を楽しむために

初めまして、星月たまです。

最近、五目クエストの影響で連珠に触れて遊んでくれるプレーヤーが増えてきていて大変喜ばしいです。ただ、連珠で「何を考えたらいいのかわからない」というような話を耳にすることもあります。

私が連珠で楽しんでいる部分は「考えを表現すること」なので、よりたくさんの人に考えて表現することを楽しんでもらいたいので、少しでも道標になればいいなと本を書こうと思いつきました。

ただし、いきなり本を書くというのはこれまでそういった経験が無いのでハードルも高く、その本を書くための準備としてnoteの記事として簡略的に書いて反応を見ようと思いました。簡略的とは言いつつもちょっと文章長くなってしまったかもしれません。誤解なく伝えようとするとそれなりの量になってしまいました。初めの三章は連珠を考える上での大事な速度に関するお話をする予定になります。四章以降では考え方のお話をする予定になります。

また、図解等の準備が追い付かず、文章だけの記載になっており大変読み難く理解し難いものになっておりますが、これは後々に章毎加筆訂正しながら図解を追加して別投稿していこうと思います。意味がわからない、或いは理解しにくい記載があれば適宜修正をして、よりよい文章にしていきたいと考えていますのでお手数をおかけしますがTwitterID@hoshiduki_tamaまでご連絡お願いいたします。

【はじめに(自己紹介)】

五目クエストでは[hoshiduki_tama]というIDでプレイし、最高R2443・最高順位3位。Renju Offlineという連珠専門の対局サイトでは[elenia]というIDでプレイし、最高順位1位までいきました。ほとんど白番で受け潰す棋風ですが、極稀に調子がいいときは攻め棋風になります。連珠歴は15年程になります。実戦と問題作成を重ね、自分なりの連珠への理解を深掘ることで強くなっていきました。その間に学んだ既存の定石と呼ばれる進行は、たった一つしか知りませんし、今ではもう並べられないと思います。
最近YOUTUBEにて五目クエスト実況配信を始めましたのでよかったら遊びに来てください。そしてよかったらチャンネル登録お願いいたします。

【一章 連珠の速度について】

連珠は五個珠を並べたら勝ちになるというゲームの性質上、最序盤から「詰み」を意識した組み立てをすることが大事になります。「詰み」を意識した組み立てを行うためには、まず「詰み」に関連する速度を知ることが大事です。速度は五段階※(「伍」「肆」「参」「弐」「壱」)に分類するのがわかりやすいと思っています。それぞれについて以下説明していきます。
※ここで使っている五段階の速度は一般的な連珠用語では無く、私がそういう解釈で話すのが伝わりやすいと思って使用しています。普通の漢数字で書くと四連や三連と紛らわしいので大字で記載しています。

「伍」・・・五連のこと
「肆」・・・四のこと
「参」・・・三およびミセ手およびフクミ手のこと
「弐」・・・呼珠のこと
「壱」・・・大呼珠のこと
余談.三を打つことを三をヒク、四を打つことを四をノビるといいます。

これらの速度を知ることが何故大事なのかというと、基本的に自分の手番では相手より速度の高い手か相手の速度を下げる手しか打てないからです。さらに詳しく見ていきましょう。

伍...勝利条件です。五目並べなので五個珠を並べたら勝ちになります。

肆...勝利条件の一歩手前の速度です。自分が作った四を相手が放置すれば次の手番に五連を作って勝利することができるため、相手の手を防ぎに絶対的に強制させることができます。肆の速度には棒四も四も含むことにしますが、棒四の場合には防ぎがないため次の自分の番で五連を作り勝つことができます。(言葉の定義については連珠ルールブックを参照お願いします)

参...棒四の一歩手前の速度です。棒四ができると前述の通り防ぎが無くなるため、参も相手の手を防ぎに強制させることができます。ただし、その強制力は肆より弱く、相手は肆の速度の手であれば、参よりも速いため打つことが可能です。参の速度と肆の速度の強制力の高い速度をまとめて、連珠用語では追い手といいます。
参の速度の手の種類には三とミセ手とフクミ手があります。三が棒四の一歩手前であることは理解しやすいと思いますが、ミセ手とフクミ手が何故棒四の一歩手前であるのかは、理解しにくいことだと思います。ミセ手とフクミ手については次章でもう少し触れていきますので、ひとまずは三とミセ手とフクミ手が同速であると覚えておいてください。

弐...詰みの一歩手前の速度です。この手のことを連珠用語では呼珠といい、将棋では詰めろに相当する手になります。相手が防がなければ、追い手の連続で詰みを残している速度になります。
詰みというのは、「棒四」「白の四ができており、黒が防がなければならない場所が禁手で着手できない」のいずれかを指します。黒は四三、白は四四や四三や三三など、参以上の速度を二つ同時に打つことで詰みに持ち込むのが一般的な連珠の勝ち方です。
呼珠も参や肆と同等で相手が防がなければ詰みが生じますが、防ぐ手段は多岐に渡ることが多く、相手の手を強制とまではいかず相手の手に制限をかけるくらいになります。

壱...詰みの二歩手前の速度です。この手のことを連珠用語では大呼珠といいます。これよりも遅い速度もあるのですが、最初の段階であまり意識する必要はないため、ここではこれより遅い速度も壱に含めることにします。ここまでくると相手の手に制限はほとんどかかりません。

ここまで速度についての話をしました。次章では、その速度を認識することについてみていきたいと思います。

【二章 速度の認識について】

具体的にどういう考え方で打てばいいのかという話にまだ全然入れていないですが、これは考え方の基盤になる大事な大事なお話なのでもうしばし速度のお話にお付き合いください。

連珠では自分と相手がどの速度にあるのかを認識して、お互いの速度状態にあった手を考えて打っていきます。そのため、連珠における最初のハードルは速度を認識することになります。

認識することは簡単と思う方もいるかもしれませんが、連珠においてこの速度の認識を正確に行うことはなかなかに難しい(私も完璧にはできないし、これからもずっと課題として付き合っていくつもり)です。いきなり100点を目指さずに、少しずつ認識能力を高めていくことが大事になります。

以下、速度を認識することとはどういうことか説明し、認識する力を鍛えるためにはどうしたらよいか触れていきます。

・伍の認識
伍を認識する時には既に決着しているため、対局中に直接この認識能力を使うことは基本的にありません。しかしながら、五連の距離感というのは、四や三を認識する能力や、中終盤の限られたスペースの中で勝ち筋を見出す(五連を作るスペースがなければ連珠は勝てないため)能力に関わってくる大事な要素です。
この力を鍛えるためには自分で追い詰め問題を五連まで並べるようにすることや、五目クエストでの投了や時間切れを除く決着局を開いて五連のできている場所を探すことで形成されていきます。

・肆の認識
肆の認識ができないとたった一手で相手に勝たれてしまったり、一手での自分の勝ちを逃したりと、ゲームに対しての影響度合いがかなり大きいです。そのためミスなく認識をしたいところではありますが、これは高レート対であってもこれができていないことで決着することがあるくらい見落としがちです。
初めのうちは最新に打たれた場所の上下左右と斜め方向の8方向を5マスを指さし確認するつもりで(特に斜め方向に注意)認識していきましょう。
この力を鍛えるためには、最新に打たれた場所はわからないものの、トレーニングとしてにゃんこならべサイトのにゃんこパズルがおすすめです。

・参の認識
参の認識ができないと肆と同様に自分と相手の勝ちを見逃してしまうことになるのでゲームに対しての影響度合いが大きいです。しかし参は意外と複雑です。三とミセ手とフクミ手に分解して考えていきましょう。三の認識は肆の認識と似ており、最新に打たれた場所の上下左右と斜め方向の8方向を4マスを指さし確認するつもりで認識していきましょう。
ミセ手の認識をする前にミセ手とフクミ手について説明します。ミセ手は次に相手が放置したときに1手四三(四と三を同時に作る)が打てるというような手になります。フクミ手は次に相手が放置したときに3手以上の四追い(四の連続)での四三が打てるというような手になります。これらが三と同じ速度である理由を考えます。以下に二つの例を挙げます。

①「自分が三を引く→相手がミセ手を打つ→自分が棒四を作る⇒自分の勝ち」
②「自分がミセ手を打つ→相手が三を引く→自分が四三を作る→相手が四を止める→自分が棒四を作る⇒自分の勝ち」

①②をみると三とミセ手はいずれも先に置いた方が勝ちになってます。これはこの二つが同じ速度であることを示しています。フクミ手に関してはミセ手の延長になるため具体例は割愛しますが、同様に証明できます。
ということで参の速度には三とミセ手とフクミ手があります。

ミセ手やフクミ手を認識することは、これまでと異なり認識しなければならないことが増えるため、難易度が跳ね上がります。まず、ミセ手やフクミ手自体は三や四を作っていません。次に四三になる場所を作りだしているため、珠のある場所ではなく珠がこれから置かれるであろう空間に着目して認識を働かせなければなりません。また、四を伸びる方向と三を引く方向の二方向の認識が必要であり、これは一方向の単純に二倍というわけではなくそれ以上の認識能力が必要になると思っています。
参の認識トレーニングとしては四追いがおススメです。ミセ手では五目クエストの勉強機能-単純四追い3手、フクミ手では五目クエストの勉強機能-単純四追い5手~9手が便利です。前述の通り、ミセ手の認識には三を認識する能力も含まれるので、特に単純四追い3手からやりこむことをおススメしています。また、書籍では「実戦で勝てる連珠四追い問題集」がおススメです。オンラインでも売っていると思うので検索してみてください。

・弐の認識
連珠における最大最強のテーマといってもいいかもしれません。呼珠(弐)なのか呼珠じゃない(壱以下)のかというのは、判断がつかない難しい局面に永遠に出くわすことになります。判断が難しいのであればどうすればよいかというと、「おそらく弐(呼珠)だろう」というような推定をします。連から三をヒイた時に新たな連ができ、そこからさらに三をヒイた時に新たな連ができ・・・というような発展をしていくものを、読み切れないけれど攻めの組み合わせ次第でおそらく詰みが生じそうだろう、というものを推定呼珠として捉えます。初めのうちは3回連続で三がヒケるものは推定呼珠としていいと思います。慣れてきたらその先について読みを入れ、段々と手数を伸ばしていき、最終的には詰みの判断を正確に行うことが理想です。
単純な連(二連)のことを呼珠だと思っている方も多いかもしれませんが、他の珠との繋がりがなく攻めが連続しないものは呼珠ではないため、速度としては一段階下になります。
弐の認識はくどいですが難しいので焦らずゆっくりやっていきましょう。初めは「これは呼珠かな?」「違うかな?」と考え始めるだけで大丈夫です。弐の認識トレーニングとしては追い詰め問題で詰みを鍛えることで、呼珠の判断を行える幅が広がっていきます。こちらは書籍「実戦で勝てる3手の詰め連珠」「実戦で勝てる5手の詰め連珠」がおススメです。オンラインでも売っていると思うので検索してみてください。

・壱の認識
弐以上の速度じゃなければ壱としておきましょう。

ここまで速度を認識することについてのお話でした。次章からは速度に影響を与える手段について話していきます。次章で考えるための素材のお話はお終いの予定です。次次章からお話を組み立てていって実際連珠でどう考えていくかについて記載する予定です。

【三章 速度に影響を与える手段】

次は速度に影響を与える手段についてです。自分の着手では基本的に自分の速度を上げるか相手の速度を下げる手を打つことが多くなります。例外として、自分の速度を上げず相手の速度も下げない手というのもありますが、まずは自分の速度を上げたいのか、相手の速度を下げたいのか、或いはその両方を同時に行いたいのかを意識して打つことが大切であり、以下でそれぞれについて説明します。(さらに例外として自分の着手で自分の速度を下げたり相手の速度を上げたりすることも条件が揃えば可能ですが、普通は得になることが無いので打ちません)

自分の速度を上げる手段について
これは前章の速度の認識ができていれば理解できると思います。肆の速度に上げるときには四をノビ、参の速度に上げるときには三をヒイたりミセ手を打ち、弐の速度に上げるときには呼珠を打てばいいです。ただし呼珠は難しいので、これも推定呼珠の考え方で、初めのうちは3回連続で三がヒケるような手を目標にして打つとよいと思います。

相手の速度を下げる手段について
ここが本章のメインテーマになります。こちらの方は相手の速度別に考えていってみましょう。

・相手の速度を肆から下げる
肆の速度は絶対的な強制力を持つ手でした。相手の肆の速度が棒四であればもう相手の速度を下げる防ぎの手段が無いので潔く投了するのを個人的には勧めています。四であれば止められる箇所が一か所しかないので、そこに止めるのが相手の速度を肆から下げる唯一の手段です。

・相手の速度を参から下げる
参の速度は強制力を持つ手でした。こちらのとれる手段は以下の3種類に限られています。

①直接止める
これは一番わかりやすいです。相手が三のときは2か所、飛び三のときは3か所、ミセ手のときは4か所以上、フクミ手のときはさらにそれ以上直接とめる場所があります。

②ノリ手防ぎ
これは知らないとなかなか発想にでてこないかもしれません。参の速度では相手の手がミセ手やフクミ手の時に、ノリ手防ぎというものができる場合があります。ミセ手というのは次に四と三を同時に作る手でした。その四を止めたときにこちらに四ができるように防ぐことをノリ手防ぎといいます。四は肆の速度のため、「自分がノリ手防ぎをする→相手が四三を打つ→自分が四を止めながら四を作る(ノリ手)→相手が四を止める→自分が三を止める」という流れで防ぎが成り立ちます。このノリ手という考え方は非常に大事です。

③肆を利用する
相手が参の速度であればこちらは肆の速度の手を打つことができます。ということで四をノビることで②のノリ手防ぎに必要な珠を用意したり、白であれば四をノビて相手の黒に止めさせることで、禁手を利用した防ぎができることがあります。

・相手の速度を弐から下げる
これには4種類あります。考え方の根幹は相手の速度を参から下げるときと同じです。

①直接止める
直接止めるといってもその方法は二連を止めるだけではありません。次の手から相手が追い手で詰みになるので、その通り道のどこかに珠を置けば直接防いでいることになります(これは間接では?という感じもしますが、説明の便宜上、今は直接に含むこととします)。直接二連を防ぐのは強い場面も多いですが、あくまでも選択肢の一つになります。

②ノリ手防ぎ
相手の手が弐の速度でもノリ手防ぎは存在します。参の速度から下げるときのノリ手防ぎには肆の速度のノリ手を用意しなければならなかったですが、弐の速度から下げるときのノリ手防ぎは参以上の速度でのノリ手を用意します。手の流れのイメージとしては「自分がノリ手防ぎをする→相手が参の速度の手を打つ→自分が相手の参の速度の手を止めながら参の速度の手を打つ(ノリ手)→相手が自分の参の速度の手を止める→自分が相手の弐の速度の手を止める・・・」という感じになります。

③肆を利用する
④参を利用する
こちらはまとめてしまいます。参の速度から下げるときと同様の考え方で、相手が弐の速度であればこちらは肆と参の速度の手を打つことができます。ということでそれらの手を打つことで②のノリ手防ぎに必要な珠を用意したり、白であれば相手の黒に止めさせることで、禁手を利用した防ぎができることがあります。

・相手の速度を壱から下げる
これは元々遅い速度なので、ここからさらに相手の速度を下げるというのは特に意識する必要はありません。

ここまで、連珠を打つときの考え方の基礎となる速度という要素について紹介しました。基礎というのは決して簡単というわけではないので、根気強く意識して取り組んでいきましょう。次章からこの速度の考え方を用いて連珠の打ち方について考えていきます。

【四章 連珠の考え方】

ここからは連珠を打つときの考え方について話をしていきます。どういう手が良い手になるのかというのを気になる方が多いと思いますが、この章では私が自分の手番時に考えているプロセスを話していきます。基本的には序盤も中盤も終盤も考えていることは下記になります。

・自分と相手の速度を判断する
→判断した結果で①~④に分岐

①自分の方が相手より速度が速いと判断した場合
 →速度を使って自分の勝ちになります。
 例)自分が打った四に対して相手が無視して三をヒイてきた、など

②自分と相手の速度が同じ(速度が弐以上)と判断した場合
 →速度を使って自分の勝ちになります。
 例)自分が打った四に対して相手が無視して四をノビてきた
   自分が打った呼珠に対して相手が無視して呼珠を打ってきた、など

③自分と相手の速度が同じ(速度が壱)と判断した場合
 →自由に効果的な手を考えます。
 例)事象の地平線(※定型の呼称)
 
④自分の方が相手より速度が遅いと判断した場合
 →相手の速度を下げる手段をとれる範囲内でより効果的な手を考えます。
 例)自分が打った呼珠に対して相手がミセ手を打ってきた時ミセ手を止める手のなかでよさそうな場所を考える、など

どうしてこのように速度をベースにして考えているかというと、連珠というゲームが序盤も中盤も終盤も不意に詰みの局面が訪れるからです。そのためいつでも詰みが有るか無いかというのは目を光らせておく必要があります。

上記①や②の判断というのは基本的には相手がミスしなければすることは無いのですが、やはり呼珠(弐の速度)の判断は非常に難しいのでミスがかなり頻繁に起こりえます(私もたくさんミスします)し、そうでなくても五目クエストで時間に追われて(あるいは節約しようとして)うっかり見逃したということは誰にでも多々経験があると思います。

上記③の判断を行ったときが、私は連珠で一番楽しいです。どのようにして効果的な手を考えていくのかについては次章で触れていきます。

一見してこれらの判断を行うというのは、あたり前のようですが、④の判断ができず(自分の方が遅いと思っておらず、別の考え方をしてしまった)に負けてしまうということは、初めのうちは非常に多いと思います。特に、弐の速度だったのに壱の速度だと誤認識してしまうということはどこまで強くなってもつきまとう問題です。

この判断を早く正確に行うことができると連珠の内容がよくなっていきます。「連珠で相手と会話ができるようになる」と私は表現しています。この判断を行うために必要な能力は、二章の速度を認識する能力になります。もちろんいきなり正確にはならないと思いますが、まずは問題を解いてその速度の感覚を得ること、次に実戦で速度の判断を意識して行っていくことで少しずつ速度の判断に慣れていきましょう。

連珠で負ける原因は①判断を間違えた②相手よりも効果の薄い手を打ってしまい詰みに追い込まれた③相手が完璧だった、の三種類に分類されます。完璧な相手はそうはいないので、概ね①or②になります。負けた対局の反省をするときに①で負けたのか②で負けたのかの切り分けを行うことでも速度の意識は成長していくと思います。

次章から効果的な手の考え方に入ります。

【五章 効果的な手の考え方】

効果的な手とはどのような手かというと、場面に即した役割を複数持たせられている手になります。ではどのような場面があって、どのような役割を珠に持たせられるかということについて述べていきます。

・序盤の場面
序盤とはどういうものであるかについて触れます。連珠は15×15の盤の中央から打ち始めていきます。5個並べるのには意外と広いスペースを必要としますが、最も空間的に制約の少ない中央から打ち始めているため序盤は珠が自由に展開しやすいです。そのため、序盤では詰みに関する速度が発生しやすく、一手あたりの価値がものすごく高いです。

序盤に悪手を一手でも打つと必敗の形勢になることはよくあります。ただし、これについて過度に怖がる必要はありません。多くの連珠専門家も序盤での数えきれないほど大失敗を経験していますし、そもそも長年の研究により整備されてきた序盤を読みや考え方だけで正しく打つのはかなり困難です(私はできません)。大事なのは、失敗を許容しつつ、少しずつ考え方の上に経験を蓄積していくことになります。

序盤の流れについて考えていきます。初手から黒(先手)と白(後手)がお互いに一直線に五連を目指したらどうなるでしょうか。先手の黒が先に五連を並べて勝利します。当然、連珠の結論はそんな単純なものではありません。何故なら相手を妨害して速度を落とすということができるからです。しかしながら、やはり先手の利は大きく、基本的にゲームの流れは黒が先手のアドバンテージを活かして攻め、後手の白は防ぎに回りつつ反撃の機会を伺うことになるパターンが多いです。

序盤で効果的な手について考えていきます。序盤、具体的に言うと概ね5手目~7手目で弐の速度が発生します。ここで大事になるのはなるべく相手に自由に打たせない(四章での③の判断をさせない)ということです。黒であれば、序盤で白に主導権を渡すと禁手にさせられる変化が生まれることが多いです。白であれば、序盤は後手番というディスアドバンテージが働いているので、一手甘くなると一気に黒に寄せられます。黒も白も互いに序盤は余裕がほとんど生じないのです。

・役割を複数持たせる手 攻&防
では相手を自由にさせないためにどういうことをするかというと、相手の速度を下げながら自分の速度を上げるという、攻防一体となる手を考えていくことが大事になります。攻防一体の手を打てれば、相手の手に制限をあたえる(四章での④の判断をさせる)ことができるのです。

はじめたての方向けのわかりやすい説明として「連(二連)を止めて連(二連)を作る」という言葉が攻防手の例としてよく使われます。これはつまり「相手の速度を下げながら自分の速度を上げる」というのが本質になります。なので、ただ「連を止めて連を作る」ことを行うのではなく、「相手の詰みを残している連を止めて、自分の詰みを残す連を作る」ことを意識するとより効果的な手につながってきます。

ここまででも何回か言っていますが、連珠は詰む詰まないの判断がとても難しいです。なのでまずは、相手の連から三が〇回繋がっていくかどうか、自分の連から三が〇回繋がっていくかどうか、として、初めは〇の中に1をいれて考え、徐々に数字を増やしていくと良いと思います(例:相手の三が2回繋がる連を止めて、自分の三が2回繋がる連を作る)。

さて、ここでですが、相手の速度を下げる手段は直接止めるだけではありません、ノリ手防ぎというものが存在すると二章で話していました。「連を止めて連を作る」が有効なように、「ノリ手防ぎをしながら連を作る」のもまた有効な手段になります。特に、自分の弐の速度を作りつつ相手の弐の速度をノリ手で壱に下げるような手を連珠用語で牽制と言います。紹介はしたもののこの牽制はなかなかに難しいです。まず意図的にノリ手防ぎ自体を行うことが一つハードルになると思います。ただ誰もがいきなりできるわけではなく、意識して挑戦してみないことには身についていかないので、頑張って挑戦して手札を増やしていくと連珠の幅が広がっていきます。

ここまで攻防一体になる手を考えてきましたが、攻防一体にとなる手が存在しないことも連珠ではよくあります。そのときは局面的に既に負けている(防ぎが追い付かない)こともあれば、防ぎに専念すればなんとかなることもあります。

局面が負けている場合はその局面に至るまでの選択肢で自分がよくないものを選んでいたか、相手が上手かったかです。なかなか初めのうちはどこの選択肢でまずいことをしていたかというのは自分で反省するのは難しいと思います。そういう時には自分より上位の人に対して色を変えて同じ形を仕掛けてどこで変化されるか、その結果どうだったか(自分の手よりも変化された方が嫌だったかどうか)を考える、ということをやっていくと少しずつ道が見えてきたりします。余談ですが、これは五目クエストR2400以上の対局でも頻繁にこの光景は見られます。(そして往復ビンタされるところまでがセット)

・役割を複数持たせる手 防&防
防ぎに専念すればなんとかなる場合の効果的な防ぎ方について考えていきます。これは私の中では三パターンに分類しています(※私の理論)。①単純に焦点に止める②一番筋が通る場所に止める③相手の攻め筋にノリ手を添える。一つずつみていきます。

①単純に焦点に止める
これは、次に相手に置かれたときに一番連や剣先の本数ができる場所や相手の連から三が連続でヒケる場所のヒキ始めの場所を止めるという手です。

②一番筋が通る場所に止める。
これは、相手から三が連続でヒケるルートが複数あるときに、その両方のルートが通る共通の場所を止めるという手です。連を止めるのではなく連携を切断するという意識になります。

③相手の攻め筋にノリ手を添える。
これは、相手の攻め筋に対してノリ手を用意して、「行きたい方向には行かせないぞ、行くのであればノリ手で速度を奪ってやる」という手です。これは何を言っているのかわかりにくいと思いますし、実際に図を見てもわかりにくいと思います。後日そのうち頑張ります。

基本的にはこの3パターンを使い分けていきます。この状況の時にはこのパターンだ!と言えればいいのですが、盤面全体の状況を鑑みてバランスをとって選ぶことが多いです。ただ、この部分は実際に人の好みが出やすい場所で、同じ局面で複数の高段位者に打ってもらうともっとも手がわかれるようなポイントに感じます。私は②の判断をすることが多いですが、①の判断をする人が一番多い傾向にあると感じます。自分の好みの防ぎ方を探していきましょう。

・役割を複数持たせる手 攻&攻
さてさて、自分が四章での③の判断をできたときには自由に効果的な手を打つことができます。もちろんこの③の判断をしたときであっても防ぎのことを意識して防ぎの手を打っても連珠はOKです。ですが、こういう判断をしたときでないと攻めオンリーの手を指せる機会が無いので、積極的に攻&攻の手を打っていきたいところです。

これは単純に連や剣先(片方が止まっている三)を同時に複数作る手がわかりやすく強いです。同じ複数でも空中に浮いているとさらに強いです。これは空間の取り方に関係してくるのですが、中盤の方の話でもう少し触れていきます。

この攻め&攻めをうまく繰り返して行っていくと、相手がどう受けても自分に詰みが残る状態に持ち込めます。

段々と慣れてきた方がもう一歩進んだ効果的な手を考えたいときには、同時に複数作る手が複数個所あるような場合、2手先を読んで相手に攻防一体の手を与えないような手を選ぶとよいです。それができるようになると、次は3手先を読んで相手に攻防手を打たれてもその先にまた自分の攻防手を用意しておく・・・といったように段々と先を読む力をつけていくようにしていきます。

・中盤の場面
中盤とはどういうものであるかについて触れます。中盤は珠の数が増えつつあり、徐々に五連を作ることのできる空間が減っていきます。自分がより攻めやすい空間を手に入れるための手や、相手の攻めやすい空間を消すための手といった空間を考える比重が高くなっていきます。

中盤の流れについて考えていきます。中盤に突入したということは序盤の詰みのやりとりをくぐりぬけて段々と速度が壱に落ち着きつつある状態になります。お互いが完全に壱の速度に落ち着いたときには、禁手がある分、白にアドバンテージが働いている形勢になります。そのような中で、黒が大事なことはいかにして攻めを継続していくか、白が大事なことはいかにして黒の攻めを切らすかです。黒は攻めの継続のために、白は攻めを切らすために空間をとっていきます。

中盤で効果的な手について考えていきます。中盤のキーになるのはとにかく空間です。ですが空間とは何かというのを言葉で表現するのはなかなかに難しいですが、「他の珠とくっついていない」「盤端から4路以上離れている」「ケイマ」が目安になると思います。

他の珠とくっついていないというのは、珠の自由度が高いということなので、色々な方向に珠が展開する可能性を残しています。これが攻めの継続性につながります。逆に言うと防ぐときは色々な方向に展開する可能性を消すためにくっつけにいくことが大事です。

あまり盤端に近い位置だと盤端に邪魔をされて珠の働きが鈍くなるため、状況次第ではありますが、なるべく展開は盤端にひっかからないようにしていきたいです。防ぎの観点でいうと、やはり逆の観点で、盤端に近い手を相手が打ってきたら、その手の働きを削るようになるべく端へ端へと追い込むような防ぎ方が大事になります。

ケイマというのは将棋の桂馬、チェスのナイト、の位置関係になります。連珠では自分の珠でも相手の珠でもケイマの位置関係にある珠というのは、それぞれの働く筋が一つも被らないので、筋を増やす或いは相手の筋を削るという意味で最大効率の手になります。これは攻めでも防ぎでも共通した空間へのアプローチになります。

・役割を複数持たせる手 空間&攻と空間&防
空間の取り方については上記で説明しました。これらの空間系の手を実現しつつ詰みを残していて弐の速度が出せれば空間&攻めの複数の役割を持てていますし、空間系の手を実現しつつ相手の詰みを消して壱の速度に落としこめれば空間&防の防ぎの複数の役割を持てています。

中盤の空間の考え方の言語化は初めて行いました。自分としてまだしっくり来ていない部分もありますので、引き続き少しずつ考察を重ねていきたいと思います。

・役割を複数持たせる手 空間がとれている状態での攻め&攻め
中盤でうまく空間を制圧することに成功した状態になったら、序盤の攻め&攻めと同じように、空中で単純に複数の連や剣先を作り出すのが強いです。大抵の場合、相手がどう受けても自分に詰みが残る状態に持ち込めます。

・終盤の場面
終盤とはどういうものであるかについて触れます。終盤は珠で盤面全体が埋まりつつあり、中盤までに築き上げた空間や構造物を使って勝ちを捻りだしにいきます。そのため終盤では詰みに関する手を考えることの比重が高いです。

終盤の流れについて考えていきます。終盤では黒がよほどうまく空間を作りだせていない限りは、禁手のアドバンテージの分で白が主導権を握っている時間帯になります。そのため黒は禁手に注意しつつ防ぎ、白は禁手に仕留めることを視野にいれながら広く打ちまわしていきます。連珠では互いの合意があれば満局(引き分け)となりますが、概ね120手を超えるようであればお互い勝ち筋がほぼほぼ消え去っている状態に近いので満局が妥当に思います。(その後の展開を見据えて60手前後で満局になるような例もあります。五目クエストでは100手強制満局になります。)

終盤で効果的な手について考えていきます。終盤で効果的な手は白であればとにかく紛れを増やす手、黒は地道に白の戦力を削ることになります。終盤では役割を複数持たせるというよりは、盤面の様々なところに散った戦力を紡いでいく(あるいは分断していく)という考え方になります。ここも後日もう少し丁寧に補足したいと思います。

・色々な役割を複数持たせる手に触れたあとで
複数のことを考えるのは初めはハードルが高いと思います。ですが少しずつでいいのでそのハードルを乗り越えて手札を多く持つと、「今回は連を止めて連を止めた方が強そうだ」「今日はノリ手防ぎをしながら連を作ってみよう」とやることに幅を持ててきます。そうやって増やしていった複数の手段の中から、自分の考えで選択して表現していくことが、私が最も連珠で楽しんでいる部分なので、この文章を読んでくださっている方にもそういった楽しみ方をしてもらいたいと思っています。いろいろな手段を少しずつ身に着けて、是非それらを使いこなしていってください。

・記載が間に合わなかった(というかどこに書くべきか)課題事項
「攻め(防ぎ)での形を整えるための参(肆)」の使い方については、後日考えて再更新します。他も思いつき次第随時追記していきます。

【おわりに】

連珠には長年の研究の成果である必勝定石と呼ばれるものが多く存在します。「勝つための手を教えて下さい」や「強い手を教えて下さい」と聞かれたとき、必勝定石を教える(私は知らないけど調べることはできる)ことはかなり強い抵抗があります。結局のところ手の意味がわかっていないと丸暗記の状態になるので変化に対応することが難しいのです。必勝定石は良い手段のオンパレードです。ですがその手の意味の解釈は初心者にはとても難しいと思っています。なのでまずは四を、三を、連を認識する力をつけ、肆を、参を、弐を(推定でもいいので)判断する力をつけ、色々な手段を試せるようになり、ああこの手はこういう意味なのかなぁと解釈ができるようになった頃に、少しずつ意味の解釈と一緒に学んでいってもらいたいナァと思っています。

とはいえ、何が楽しいかは人それぞれで、みんなが楽しく連珠で遊んでもらえれば、それが私は一番嬉しいことです。そのために自分ができることとして考えたときに、考え方の助けになるような文章を書いてみようというのを思いつきました。わかりにくい部分も正しくないこともあるかもしれませんが、一応私なりの解釈を率直に記載したつもりです。少しでも伝わることがあって、みなさんが連珠を楽しんでくれる一部分になれたらうれしく思います。

他に、みんなが楽しく連珠で遊んでもらえるためにと考えた活動として、まず自分が楽しく連珠で遊んでる姿をみていただき、こんなに楽しいゲームなんだと思っていただこうと思い、YOUTUBEにて五目クエスト実況配信を始めました。(少し叫び気味かもしれませんが)精いっぱい楽しんでやってますのでよかったら見に来てください(さらによかったらチャンネル登録もお願いします)。

再度重ねてになりますが、常によりよい文章に改善していきたいと考えているので、指摘/ご意見/ご感想あればTwitterID@hoshiduki_tamaまでお願いします(こちらもできればフォローお願いします)。

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