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静かに奥底から湧き上がってくるなにか(ヨコハマトリエンナーレ_2020)

去年の夏、勤めている会社が完全在宅となり公私共に引きこもりに引きこもっていた時期に「ヨコハマトリエンナーレ」が開催されてしまいました。
3年に1度のスパンでしか開催されないためどうしても行きたい…行きたいったら行きたい……でも調べてみて入場制限とかなかったら諦めようさすがに…
と思っていたら入場制限ありだし予約制!そしてそのタイミングで友人からも誘われ「行かねば」となり、しっかり対策済みで行って参りました。楽しかったです。

まぁ楽しかったです。どころでなく作品の熱量がとにかく凄まじくて圧倒されたので、印象に残った作品やそれに対し感じたことを今更ですが思い出し思い出し書いていこうと思います。

まず、2017年のトリエンナーレはどんなだった?

ヨコハマトリエンナーレには3年前の2017年の開催時に初めて行ったのですが、ピヴィやら柳幸典やらケイティ・パターソンの世界観が大好きだったのでめちゃくちゃワクワクドキドキしながら心躍らされるまま展示を見て回った記憶があります。
兎に角「おもしろい」。月並な言葉だけどほんとにこれ。共感できるものから『は???』なものまで、ポジティブさを感じ取れる作品がすごく多かった気がします。作者の方々も「真っ直ぐ」楽しんで制作してそうというか。もちろん生みの苦しみとか、出来るまでの過程で自分自身との葛藤やらあったでしょうが。
どちらかというとプラスオーラを分かりやすく感じ取れる、明るいトリエンナーレ年(トリエンナーレ年てなに)だったかな、と。

ちなみに2020年のトリエンナーレ見終わってから2017年の作品集買って帰りました。だって買うの忘れてから!そして2020年を多分今年買います!大体リアルタイムでこういうの買わない。なんで。
そのうち2017年のトリエンナーレについても書きたいです。9割記憶からなくなってますけど。

じゃあ2020年のトリエンナーレは?

そうですね…なんか………すぐに思い浮かんだ言葉は「地鳴り」…かなぁ……足元からじわじわと体に伝わる振動。確実にそこにあるんだけど、すっごい大きな力が働いてるんだけどわかりやすく目に見えるわけではなく、ハッと気づいたときには地面が割れてた…みたいな。誰にも伝わらないなこれ。

うーん、2017年が「キラキラワクワクな甘くて酸っぱいジュース」だとしたら、2020年は「ゾクゾクフツフツな甘くて苦い毒薬」ってイメージです。やっぱり誰にも伝わらないなこれ。

少しでもわかりやすくお伝えできるよう、ここからは残している写真と共に進めます。

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まずこちらですね。メイン会場である横浜美術館入ってすぐ、目の前に広がるのが▼ニック・ケイヴの【回転する森】

幻想的で綺麗。部屋に飾りたい(小並)。一目見てそんな感想を持つ方は少なくないのでは、と思います。事実アメリカのご家庭では「ガーデンスピナー」と言うこれに似たものを飾るご家庭が多いらしいです。
キラキラと光に反射してくるくると回るモチーフが本当に美しい作品。ですが、ピースマークのモチーフや虹色の輝きの中に紛れ拳銃・銃弾などが見え隠れしており、世の中の光と闇を垣間見たような気分になります。一見すると美しく平和。だけど少し目を凝らすと…。世界の真理ですね。

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こちらは▼ロバート・アンドリューの【つながりの啓示】です。

パッと見ショッキングな画像に見えちゃうかと思いますが、こちらは水をキャンパスに吹き付けていって、土を溶かし徐々に文字を浮かび上がらせる。という作品です。90日かけて完成させていた模様。私は開催されて割と早い段階で行ったのですが、既に大体の文字がわかるくらいに出来上がっておりました。
『nagula』というこの単語、ロバートさんのルーツであるアボリジニの言葉らしいのですが、調べても調べても意味を見つけられなくてモヤモヤしてます。もしご存知の方いらっしゃったらぜひ教授ください。

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▼エヴァ・ファブレガスの【ポンピング】

「誰の大腸?!」てセリフがまぁまぁな声量で口から飛び出てしまい、一緒に行った友人に二度見されました。誰の大腸でもないんだよなぁ。
この作品、触れることができたのですが見たままの感触でした。見た目には腸以外の何物でもない!そんな感想。そして色合いが可愛いですよね。体内をこういう色で表現するっていう発想がないのでニコニコしながらナデナデしてきました。ミニチュアを玄関に飾りたい。

あんまり意識したことなかったんですが、ビビッドな色をつけたり謎サイズにしてみたり、「そうじゃないよね???(困惑)」ってなる作品すごく好みだったみたいです私。気づかせてくれてありがとう。よく考えたらピヴィの作品とかもそうだな…

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▼ローザ・バルバの【地球に身を傾ける】

薄暗い展示室の奥の奥で映し出される映像。ドドドドド…という静かに響く音と共に淡々とこの美しい色を発する施設が映し出される作品。
まずはキャプションを見ずに眺めていたんですが、「あ、これは穏やかな場所じゃないな。」と感じなぜだか妙な汗が…そしてキャプションを読む。

周囲の自然を拒絶するように鮮やかな色付いたこの場所は、『放射性廃棄物貯蔵管理施設』とのことで、放射性廃棄物がいつか「無害」となる日まで静かに眠るために用意された施設でした。言い方が正しいかわからないですがそういったもののお墓なのですね。

普段から「あれは危ない」「これは安全」と個人個人で自分の周りに置くものを意識的、無意識的に選別している私達ですが、周りに置かない(置けない)ものの行方をこうして知ると、なぜだか居心地悪い気分になるんですよね。なんでだろう。のんきな自分に呆れるような情けないような気持ちになるのかな?
それでもこの生き方をすぐに変えることは出来ないんですけど。

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だいぶ長くなってきた気がするので最後の画像です。

…まずですね、意味わかんないんですよ。

いや正直2017年に比べて2020年はね、全体的に意味わかんなかったんですよ正直。正直に、そして正直言うとね。且つ、普段のほほんと生きてるだけじゃ絶対にぶつからないようなパッションにどっかんどっかんぶつかっちゃう様なアート展だったわけです。まぁそもそも現代アートって理解するために見るものでもないと思ってますけど(ええ…)

その中でも異彩を放っていたのがこの▼エレナ・ノックスの【ヴォルカナ・ブレインストーム】

正しくは意味わかんないんじゃなくて意味を理解する事を承知できないなのかな…
この方の作品はざっくり言うと「エビは整えられた世界では繁殖しなくなる…じゃあエビをムラムラさせて繁殖手伝ってやろうぜ!!」という研究を兼ねた展示群です。※あまりにも簡易的な説明。
そう、展示「群」です。エビのためのえっちなビデオやらエビのための拘束具やらがあったり、果てには、かの有名な男女を1か所に住まわせて恋が生まれる様子を見守るという不思議番組のパロディ…正確には登場人物の顔が全員エビに挿げ替えられた番組が流れていたり。
エレナさんのやりたいことも言いたい事もわかるよ。
でも共感はできんのよ…!!!エビへの情熱があふれすぎて受け止めきれんのよ…!!!!!!
好きです。(思考放棄)

こんなにも何か一つに没頭、執着してあの広いスペースを埋め尽くす作品達を一人の人間が作り上げるってすごすぎる。狂気と芸術は紙一重だと思いましたまる

まとめるよ

2020年のトリエンナーレは最後のエビちゃん作品を含め、ちょっとアダルトなものが2017年に比べ大幅に増加していたなぁ~という印象。私は全く嫌いじゃないんですけども。お子さんと行ったりしたママパパはちょっぴり「あら~^(子の両目を手で隠す)」てなってしまったのでは。

画像があったので上記の作品を中心にメモ程度に書き連ねましたが、他にも印象に残った作品はたくさんありました。

▼パク・チャンキョンの【遅れてきた菩薩】
かなり長い映像作品なのにめちゃくちゃ集中して見てしまいました。
日本の原発、「もんじゅ」「ふげん」は共に仏教用語。そしてインドの核実験の名は「Smiling Buddha(微笑むブッダ)」。
今まで何も考えたことなかったんですけどゾッとしましたね。人を救う信仰心と並列に語られるべきものではないはずなのにその名を借りている。でもこの名前を付けた人は「それ」が人を救うのだと信じて疑わなかったのでしょうね。シンプルに怖いなって。

▼佐藤 雅晴の【ガイコツ】
柔らかい色になめらかな線の絵。そしてクスっとしてしまうお茶目で、だけど切実さを感じるキャプション。
佐藤さんの人柄が作品にあらわれてたのかな。だとするとすごく「この人のこと好きだな」って思いました。
≪ヤモリ≫が最もツボでした。かわいい。

▼ジェン・ボーの【シダ性愛Ⅰ】
「Ⅰ」ってことは「Ⅱ」もあるんです…?ぜひ見せてくれ…
○○性愛って色々ありますよね。私も一時期調べてみた覚えがあります。確か対物性愛の方がベルリンの壁とかエッフェル塔と結婚なさったというのを見て「え?めっちゃ素敵なんですけど」と思ったのがきっかけでそこから多岐に渡る性愛があることを知りました。
その中の一つですね。シダと戯れる裸のニンゲンが映し出されて官能的で倒錯的ですごく美しい映像でした。ドキドキしちゃった。
多分ニンゲンが裸でなかったとしても、シダを見つめる眼差しが愛おしいものに対するものだと伝わってくるのでどちらにしろドキドキしたと思います。

まとめセクションなのに長いんだよな。

それだけ心に残る作品が多かったという事ですね。どうにかいい感じに終わらせようとする。
先ほどもちょっと書きましたが、2020年は全体的に性に関するものが多く、またメモしたものの中にもある通り放射線とか原発とかいったものをじっくりと分析し作品にしてるものが多かったです。
そういうところが「現代アートって謎!でも面白い!」だった2017年とは違い「どうしよ、わからんけどゾワっとする…」の雰囲気を生み出していたのかな。
2020年のトリエンナーレは、背後から飴で出来た殺傷能力の高いナイフ突をきつけられてるような気分で作品を見てましたね…いい意味で(いい意味とは)

2023年のトリエンナーレが開催される頃には、買い物のついでに「お、なんかやってんじゃん」ていうテンションで横浜美術館に寄れるような世の中に戻っていて欲しいですね。
今から次の作品に会えるのがとっても楽しみです。

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