被曝者の祖母が見る21世紀が、少しでも良くなりますように

私の祖母は広島での被曝者である。今年94歳で、ちゃきちゃき元気にしている。ただ、未だに被曝して痛む膝を抱えて過ごしている。

私は被曝者三世である中で、今まであまり多くのことをしてこれなかった。一度、ベトナム語のスピーチ大会で「平和」がテーマであった回に広島で祖母が体験した話とベトナム戦争の枯葉剤被害者支援に携わった話を語ったが、私が本当にこの話を伝えたかったのはむしろ日本人相手なのである。

もともと祖母とは同じ家に二世帯で住んでいたのだが、今は私が一人暮らしているため祖母とはなかなか会うことができない。。祖母は若干の認知症で、私がなにか話しても数分後には忘れてしまい同じことを聞き返してくる。私はそんなやりとりも好きなのだが、ここ最近はコロナ情勢もありなかなか帰省できていない。

祖母は外が好きなので散歩はよく行くものの、特にすることのない日や雨の日は家の中でテレビをつけて新聞を読んでいる。そんな中、連日の報道がこのような騒ぎで、祖母の目にはどう映っているのだろうと思っている。願わくば、その光景があまりにつらい記憶を呼び覚まし続けることなく、こればかりはすぐに忘れされればいいのにと願うばかりである。

原爆が広島に落ちたのは祖母が17歳のときだ。祖母は広島の出身ではなかったが、医者を志しており、原爆が広島に落ちたときに負傷者が多いと聞き自ら志願して広島に向かった。その当時、原爆がどんな被害をもたらすのか、その場にいた人たちも、はたまた日本の多くの人たちも知らなかった。祖母は戦地でずっと看護師として働き続けた。足の痛みが現れ、それが被曝症状だとわかったのはあとのことなのである。

この詳細については、また書こうと思う。私は今、書くべきなのだと思う。私が17歳になった頃、祖母は私にたくさんの話をしてくれた。戦地や空襲の酷い話もたくさん聞いた。当時の私は想像するしかなかったものの、自分と同い年の女の子である祖母の経験は想像を絶していて、どうも世代を隔てた遠い出来事のように思え、人間がそんなことをできるとは到底思えなかった。

なのに、今の私の目の前に広がっている報道の映す景色はどうだろう。毎日のSNSに流れてくる情報は何だろう。先日爆発した爆弾も、後々まで人に健康被害や障碍を与え続けるものだという。なんでかんたんに人相手にそんなことができるんだろう。なんでこんなことが起こるんだろう。

私が17歳から時もたち、祖母と戦争の話をすることはなかなかなくなった。もう話したくないのか、話しきったのか、覚えているけれどあえて話さないのか、私にはわからない。忘れられるならいいのにと思う。せめてもの、新しい戦争の記憶を目に刻むことなく、すべての情報を祖母から隠してしまえればいいのに。その笑顔をずっと守れればいいのに。と思ってしまう。わからない。私なんかより、彼女はずっと達観してこの事態を見ているかもしれない。今度会ったときに、言葉に出して聴くことはしないものの、彼女の目を見つめてみようと思う。

いろいろな人の投稿を見て、やはりヒロシマナガサキを思い返す人が日本には多いのだなと思った。というかもしかしたら、それを思い返す人は世界にも多いのかもしれない。なのに、実際にそれを知る人は本当に少なくなったわけである。もしかしたら、実際にそれを知る人から話を聴けた人すら、だんだん少なくなっていくのかもしれない。ならば。

17歳のときに、祖母の話を聞いた。20歳のとき、スピーチを書くためにもう一度彼女と話をした。それから、彼女の当時の手紙を巡る座談会にも本人と一緒に2回参加した。彼女は伝えてきた。ずっとずっと。耳を傾ける人が少なくとも、手記もずっと残してきた。

彼女はずっと伝えてきた。そして今、あの時を省みる人が多くなってきた。でも、それを伝える義務は、私が思うに、もう彼女の世代ではなく私達の世代にあるのだ。私達が動かずして、誰が動くというのだろう。

これから、noteとは別の形を模索するとは思いますが、三世としてどんな発信をすべきかを模索しています。また同時に、私は国家間のどちらかが悪いという議論に興味はありません。ヒロシマナガサキに関して日本が一方的にやられたとは全く思っていませんし、今まで日本が犯してきた戦争犯罪、アジアからの搾取も他の国の論述も目にしてきました。国家の良し悪しよりも、私が関心があるのは人々の生活です。どこの国家の人であろうと、その人たちが戦争を望んでいたわけでもないのに、そして兵器や爆弾がどんなものかもわかっていないのに、戦火に巻き込まれて日常を失い、戦争が終わってもまだ傷を負い続ける人もいるということがひどいと思うのです。

どうかすべての命が守られますように。戦争のせいで後々まで辛い思いをする人がこれ以上出ませんように

ずっとそう思っています。

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