時代を観る

2020年11月29日 待降節第1主日礼拝

聖 書  ローマの信徒への手紙1章24~32節
説 教  時代を観る


前回、11月15日の礼拝では、ローマ1:18~32の聖書箇所から「崩壊する世にあって」と題して説教しました。教会のホームページでは、you tube で説教動画を配信していますが、記録が保存されており、いつでも好きな時に視聴できます。また、説教原稿も保存されていますので、お読みいただければ幸いです。

 本日の説教題は、「時代を観る」です。ローマ書1章29節からでは、悪徳のリストですね、悪徳表がこれでもかという塩梅で挙げられています。現代のわたしたちの社会では、日常茶飯事となっている事件や社会と人間関係の状況です。学校、職場、隣近所において、家族間においても、こういう悪徳が蔓延っています。これは2000年前も同じです。約4000年前のアブラハムの時代、また遡ってアダムとエバの人間創造の時代以降からも変わるこのなき人間の罪の様相です。カインとアベル、そしてカインの子孫の罪の様相。
神は人間を創造したことを後悔され、裁こうとされます。そして、ノアとその家族以外が滅ぼされました。ノアの箱舟と洪水ですね。神の怒りと裁きはアブラハムの時、ソドムの滅びによって二度目に現されました。この時は、全人類の滅びではなく、ソドムという一つの地域です。
パウロがこのローマの信徒への手紙を書いた時代も同じように、人間の罪が蔓延った時代です。1章29節以下には人間の罪による悪徳表、悪徳のリストが挙げられています。

あらゆる不義、悪、むさぼり、悪意に満ち、ねたみ、殺意、不和、欺き、邪念にあふれ、陰口を言い、人をそしり、神を憎み、人を侮り、高慢であり、大言を吐き、悪事をたくらみ、親に逆らい、無知、不誠実、無情、無慈悲です。

 しかし、この人間の罪は、パウロがローマの信徒への手紙を書く20年ほど前にも当然あったことです。その時のユダヤでは、イエス様が降誕され、神の子としての宣教活動を始めておられました。イエス様ご自身が、この罪の世の救いときよめを行っておられたのです。
 しかし、人間の罪は神の子イエス様を十字架につけて死に至らしめたほどに、救いがたかったのです。イエス様は十字架につけられ、死にて葬られましたが、三日目に甦り、神の力の偉大なわざを現わされました。そのご昇天、聖霊降臨によって教会が誕生しました。福音は教会にゆだねられ、神の国の福音宣教のわざをこの2000年間継続してきたのです。教会は、時に自堕落になった時代がありましたが、地の塩・世の光としての働きを主の助けによって継続してきたのです。
 この2,000年の歴史は、いろいろと評価がされるでしょう。絶えることがない戦争と殺戮の歴史が繰り返されました。そして、原爆投下です。東日本大震災、フクシマ原発、そして、いまやコロナ・ウィルス禍です。

さて前回では、説教で二つのことをポイントとして挙げました。
1.人間の罪 2.神の怒り

本日は、その続きです。説教のポイントは3つです。
3.人間の自滅 4.今の時代の問題 5.神の介入の決意・・・です。

3.人間の自滅
 聖書に戻りますが、神の怒りと裁きにあって、人間はそのなすがままに任せられます。
24節にあるとおりです。
そこで神は、彼らが心の欲望によって不潔なことをするにまかせられ、そのため、彼らは互いにその体を辱めました。神の真理を偽りに替え、造り主の代わりに造られた物を拝んでこれに仕えたのです。

 任せられたということは、罪と悪徳に人間を引き渡されたということです。たとえば、豚ですね。聖書は、豚は穢れた動物として食べてはならないとあります。わたしたち日本人や中国、韓国人は豚を好んで食べます。栄養があり、美味ですね。しかしユダヤ教徒、イスラム教徒は今でも食べません。律法では穢れている動物として食べてはならないのです。
 ペトロの手紙二 2章 22節にこうあります。
「犬は、自分の吐いた物のところへ戻って来る」また、「豚は、体を洗って、また、泥の中を転げ回る」と言われているとおりのことが彼らの身に起こっているのです。

 これが罪人の姿です。体を洗って清くしても、また泥の中を転げまわり、這いずりまわって汚れる。よごれ、穢れに舞い戻るのです。清くなることはないのです。これが罪の姿です。神は、人間を豚のように転げまわるままにされるのです。その結果、人間はどうなるのか? その行くつくところは、自滅です。混乱と崩壊、破滅です。
創世記11章にバベルの塔の故事が記されています。人間の権力と力を誇り、神に並ぼうとしたとき、そこに混乱と崩壊が起こりました。
「神の力は必要なし。神なくしても大丈夫、自分たちの力だけでやっていける」
その思い上がりが、たとえ人間が力を合わせて、人間の叡智でもって建設的に事を行っているように思えても、その行き着くところは破滅です。協力とは名ばかりで、そこに支配関係が生じ、力と権力、経済力による支配によって相手を屈服させ、服従させる力関係だけが生じるからです。バベルがそうです。結果は、混乱と崩壊です。

4.今の時代の問題
 本日の説教題は、「時代を観る」です。時代の中にわたしたちは、生きています。旧約のアブラハムの時代、イサク、ヤコブ、ヨセフの時代。それから1600年後のイエス様の時代。ローマ帝国のパウロの時代。2000年後のわたしたちの時代。悪徳表という泥の中です。豚のように、泥の中を這いずり、転げまわってきました。
 聖書は、預言の書です。同時に、警告の書でもあります。預言は、裁きがあることを警告しています。わたしたちは、時代の中で、時の徴を観ていく必要があります。

 今の時代はどのように言えるでしょうか。

 グローバル化や情報化、少子高齢化など社会の急激な変化、地球温暖化現象、環境問題、
人権問題と多様な課題があります。また、人口が爆発的に増えています。日本は少子高齢化で人口は減少していますが、アフリカ、中東諸国は増えているのですね。そこから食料問題が出てきます。今日の食べ物も食べられない人たちが増えているのです。また、原発再稼働、炭酸ガスによる地球温暖化ですね。北極圏、南極の氷山がすさまじい勢いで溶けています。
 地球温暖化は気温の上昇だけでなく、海面の上昇から熱波、大雨やそれによる洪水、干ばつなどの気候変動も引き起こります。 日本では気温の上昇や大型台風の通過による被害で、農作物の不足などが起こっているのです。
また海水温度が上がり、魚が減少しています。日本近海による漁が難しくなってきています。サンマ漁が不調です。原発が流す廃棄の水で、海がますます汚染され、魚も死滅し、あるいは突然変異を起こすことがあります。頭が二つあるサメが捕獲されました。突然変異でしょうか。病気を持ち、弱った魚を人間が食べるのです。人間のからだによいわけがありません。経済的な発展のために、地球を壊しているのです。
 悲観的なことばかりですみません。これが現実です。今の時代です。

 自滅の現象は、まず弱いところに痛みや傷は現れます。人間のこころと精神が荒んできています。子どもへの虐待、殺害が毎日のように報じられます。社会の弱者は悲鳴をあげています。虐待された子どもは、大人になって、同じように子どもを虐待する立場に変わります。悪と罪の連鎖です。尊属殺人、夫婦、親子、姦淫、淫乱と好色がはびこっています。

 アメリカ合衆国の大統領選挙が終わり、バイデン氏が選挙人を半数以上獲得し、次期大統領を決定づけました。しかし、選挙が終わり、開票もほぼ終わっているのに、トランプ氏は敗北を認めず、政権移行が始まらないと言われています。
 大統領選挙での選挙人制度というのは、わたしたち日本人には理解できないことですが、当のアメリカ人も矛盾を感じているようです。選挙人制度を廃止したほうが良いとの報道が出ています。
 ところで、今回注目したのは、トランプ氏を支持するグループの多くは、アメリカ南部の保守派のクリスチャンです。おもに保守バプテストの教会に属している人たちです。熱心なクリスチャンです。これに対して、バイデン氏を支持するおもなグループは、リベラル派と言われます。これは、北部のリベラルなキリスト教の人たちです。同じキリスト教、同じプロテスタント、同じ教会でも保守派とリベラル派で分断があるのです。何がどう違うのか? 
 教理的な問題、社会的な考え方の多様さが同じキリスト教の内部でもあるのです。保守派は、聖書の言葉に忠実で、ある程度厳格に守っているクリスチャンです。
 リベラル派の教会というのは、時代の状況に応じてその時代の価値観、科学的実証をふまえて聖書を適用し、信じる教会の群です。リベラル派の教会の一部は、進化論を受け入れています。また、中絶、同性婚を受け入れています。リベラル派は、保守派の信仰に比べると、進歩的なのです。
保守派の教会は、中絶、同性婚には反対です。しかし、2015年アメリカ合衆国の連邦最高裁判所において、同性婚は認められたのですね。
今日の聖書でいえば、26節

 それで、神は彼らを恥ずべき情欲にまかせられました。女は自然の関係を自然にもとるものに変え、同じく男も、女との自然の関係を捨てて、互いに情欲を燃やし、男どうしで恥ずべきことを行い、その迷った行いの当然の報いを身に受けています。彼らは神を認めようとしなかったので、神は彼らを無価値な思いに渡され、そのため、彼らはしてはならないことをするようになりました。

同性婚、同性愛、性倒錯者、セクシュアルマイノリティ(性的少数者)
LGBT ですね。 

L レスビアン、G ゲイ、B バイセクシャル、T トランスジェンダー
トランスジェンダー とは、「自らの性別の役割に違和感をもっている状態」ということ。
 昔は、性倒錯者として退けられました。現代社会では、人権問題ととらえられる事柄です。かつて、議会の上院議員がその傾向、もしくは性癖があることが分かれば、社会的生命が抹殺されました。つい最近まで、同性婚は禁じられていました、法的な承認をされるようになったのです。いま、アメリカのいくつかの州では、同性婚が認められるようになっています。日本基督教団において、牧師が自分は同性愛者であることを公にしています。
 中絶の問題、中絶はいけない。イスラエルを支持しよう。LGBTはいけない。トランプに投票しよう。そんな保守的な結論になっているのです。
 ここで驚いたのが、選挙後、トランプ氏は日曜日にゴルフに行き、バイデン氏は教会の礼拝に行っているニュースがあったことです。保守派の支持を受けているトランプ氏は、日曜日に教会の礼拝に行くのではなくゴルフで出かけている。それを見た保守派のクリスチャンはどう思ったでしょうか。
その他、黒人差別問題、アジアとヒスパニックの移民、シリアはじめイスラム圏からの移民と問題は錯綜しています。
 中国の問題、香港のこと。台湾のこと。イスラムのテロ。
これらが時代の流れです。その時代の中で、日本の教会は、アメリカの教派的な違いに影響されています。教会は一つではないのです。聖書自体もひとつではないのです。共同訳聖書と新改訳聖書があります。

5.神の介入の決意
 悲観的なことを申しました。わたしたちの社会、地球に未来はあるのだろうか? 救いはあるのだろうか? そう、考えますと、客観的な情勢は悪く、悲観的になるばかりです。しかし、わたしたちは聖書に立ち帰り、まず神の言葉と神のみ旨に立って、そこから将来の歩むべき道筋を見極めたいと思うのです。
 まず、神はその自滅の道を辿る人間の悲惨さにあって、真のいのちと希望を示されました。これが主イエス・キリストです。
 
 神は人間の罪と神なくしてもよいという思い上がりの中で、人間になおも関心を示しておられる。ここに神の愛があります。無視された神の側が、もう一度、いや何度も、右の手を差し出して、和解を求めて手を差し出してくださるのです。
 闇の世界、罪の世界に神が人となられた。主イエス・キリストです。この罪の世に、神が介入された。その決意をキリストにおいて示された。そこにわたしたちの希望があります。
 
 汚濁の中で、清さを。闇の中で、一条の光を。望みなき世にあって、なおも希望を。憎しみと恨みの中で、愛を。人間の欲望による支配と力の中で、神は仕えることを示されました。

ここにわたしたちの救いと希望があるのです。

 キリストの十字架は、神の愛の象徴です。そのキリストによって、わたしたちはこの罪と闇の中から救い出されました。平安と生きる意味を与えられたのです。そして、神はわたしたちに使命を与えられました。
この世だからこそ、一緒になって壊してしまうのではなく、腐敗したままで放置するのではなく、清さを保つ信仰と力強さをこの世にあって現し、証するという使命です。
 イエス・キリストの十字架こそ救いです。神の愛の現れです。世の終わりが近づいています。それは滅びです。滅びの前に、わたしたちは悔い改めて、イエス・キリストを信じ、永遠のいのちをいただきましょう。

 前回の説教にも最後に申しましたが、本日もここに語ることをお許しください。
ほっておかれたままなら、まさしく世の中は地獄です。立ち帰る機会を与えられること。これが神の愛であり、天地創造の目的の一つであります。壊すために、神は天地を創造されたのではありません。滅ぼすために、神は人間を造られたのでもないのです。
 主イエス・キリストの十字架による贖いという、とっておきの恵みを神は人間に提供されたのです。このゆえに、わたしたちが生きているのです。生かされているのです。
 本日からアドヴェントに入りました。クリスマスです。ここに希望があります。主が来られる。世を裁くために、そして、世を救うために来られる。そして、再臨される。ここに希望があります。
感謝し、神を賛美いたしましょう。





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