アラドゥワからシュルギへの手紙

シドゥリというカリフォルニア大学ロサンゼルス校、オックスフォード大学、マックスプランク科学史研究所(ベルリン)のシュメール文学のオンライン英文翻訳プロジェクトの粘土板テキストを翻訳していたのですが、ちょっと内容が面白かったので、翻訳から欠落文などを補いよみやすくして、みなさまにご紹介しようとおもいます。


これは、アラドゥワという外交官が、シュルギという王に向けて、スービルという都市のアピリアーサという地方領主がめちゃくちゃな無礼を働き、高圧外交してきたと本気で怒っている手紙です。以下全文。

アラドゥワからシュルギへのアピリアーサについての手紙

下僕アラドゥワより我が主へ、謹んで申し上げます。
主上は仰せになりましたね、私がスービル(都市)へ直行しました折り、地方税を確保し、領地の正確な規模を知らせよ、またスービルの人々を元の忠義の道に戻すためには「議会の賢人」であるアピリアーサに助言を求めるのが慣例的な手段であろうと。

しかし私が宮殿の門に到着しました時、誰一人として主上の御健康を尋ねませんでした。誰一人席から立つ事もなく、我が前にひれ伏す事もなく、あまつさえ私を脅迫してきたのです。

主上の路傍の宿(スービルの宮殿のこと)は1ヘクタールに渡って毛梳櫛(?)、金と銀で覆いカーネリアンまたラピスラズリで装飾した槍の先で覆われていました!
アピリアーサは、金と銀で飾り立てた豪華な布ばりの玉座に高々と座り立つ様子もなく、両足を黄金の足置きに置いたままにしていました。私の前ですらその足をどけようとしないのです!

彼の左右には、それぞれ5000ずつの兵が控えておりました。彼はその場で6頭の肥えた雄牛と肥えた羊を屠りました。主上のための偽りの宴を開こうというのです。

門の前でやりとりした後も、私に中に入るよう勧める者はありません。業を煮やして私が中に入ったとき、誰かが私に赤い金でめっきした杖をつきつけ、「ひざまずけ!」と命じましたが、私は「私は王命を示すためここにやってきたのだ、ひざまずくことはない!」と応えました。

彼は門の前にいる私のもとに、1頭ぶんの雄牛と羊の肉をもってまいりました。
主の兵(この手紙の語り主)は交渉の席につくことすら叶わなかったのです!私は恐ろしくなり、私の肉は震えました。

主上が私にご命令なさったのはエゼン=ニナズの月の15日でしたが、それから5日経っても彼らからは何の音沙汰もなく、さらに1日たった本日ウビグの月の朔日、私は主上の元に伝令として戻されました。
彼らはいまだ主上になんの忠誠も誓っておりません!
主上、このありさまをご覧になってください!


Black, J.A., Cunningham, G., Ebeling, J., Flückiger-Hawker, E., Robson, E., Taylor, J., and Zólyomi, G., The Electronic Text Corpus of Sumerian Literature (http://etcsl.orinst.ox.ac.uk/), Oxford 1998–2006.


これはおひねり⊂( ・-・。⊂⌒っ