白黒無常、謝必安/范無咎の名前のルーツを探る試み

白黒無常、謝必安/范無咎の名前のルーツを探る試み。
白黒無常の上司にあたる城隍の廟を中国/台湾のgoogle map上で数えて苗字の分布図と重ね合わせた。
方法としては、google map で中国と台湾、香港、マカオの各自治体ごとに
城隍廟、あるいはChenghuang Temple、City god templeといった名前の寺社、地名を検索しカウントしていくもの。
明確なチェーン店などは極力除外した.

上皇廟の分布01


google map上で見られる城隍廟の北限は遼寧省。
白黒無常は中国全土で人気がある、といういいかたをよくされるが、あくまでgoogle map上での計測でありサンプル数が少ないことを鑑みても現在の中国の1/3ほどに集中しており、全土とは言い難いことがわかる。
また(少なくともgoogle map上では)遼寧省が城隍廟の北限。新疆ウイグル自治区にポツっとある城隍廟は区分が「ファーストフード店」となっていて廟かどうかわからないが、ショッピングモール区分の城隍廟が航空写真やストリートビューを使うとお寺の仲見世だったりすることもあり、詳細は不明。ストリートビューや航空写真がそもそも見られない場所も多くあり、
この結果が正確なものとはいいがたいが、それでもなんとなくの傾向はわかると思う。

上皇廟の分布05

廟の数はやはりというか、ぶっちぎりで台湾に集中してるのだけど、これは台湾が中国共産圏に入っていないからという理由がある気がする。マッピングしていて、大きな寺社以外のちっちゃい石碑とかお地蔵さん的位置の社がたくさん残っている。大陸側は割とちゃんとした寺社が多い。
また、湖南省の湘西土家族苗族自治州や貴州省の黔西南布依族苗族自治州など、少数民族の自治州に廟が存在する場合があるのも同じ理由かもしれないが、これに関してもきちんとした調査ができないので予想でしかない。

以上の図に謝氏、范氏の人工分布図を重ねる。
謝氏は全人口の0.79%、范氏は全人口の0.37%であり、両方ともそこまで多い姓ではない。
東アジアにおける有力姓については別途こちらの論文を参照されたい。

東アジアにおける有力姓氏とその発生要因 金 光林


上皇廟の分布02

上皇廟の分布03


参照元はこちら

尋根問祖百家姓之「謝」氏起源,不了解謝氏得姓始祖的可以看一看
尋根問祖百家姓之「范」氏起源,范氏「雞黍」堂號到底怎麼來的?


大谷氏の先行研究

『点石斎画報』に描かれた無常鬼たち―白無常と黒無常の非二元性に着目して―

から、謝氏の分布図と廟の分布図が重なると思っていたのだが、これを見るとむしろ范氏の分布図のほうが廟の存在箇所とより近い。

また、謝氏、范氏両方の分布図を廟の分布に重ねると

上皇廟の分布04

このようになるため、廟の分布とほぼ重なる。
また最も色が濃くなる台湾、福建において「南台」という場所が存在するが、中国文化圏になかった台湾に中国系移民がやってきたのがオランダ統治時代(1624年〜1662年)、清朝において台湾省の設置の検討が行われたのが1737年、実際に省が設立されたのが1874年であることを考えると、
福建省のほうがルーツとしては古いように思われるが、このあたりも検証が必要な部分ではあろう。

ネット上だけで私にわかることは今のところここまでが限界。
このままでは論文にもならないが、
覚書として皆様に共有させていただく。

追記:

南台橋については福州市南台の橋でほぼ確定と思われる。

というのは調べてみると福州衙门做一对小差役とか福建福州南台桥とか具体的な地名がバリバリでてくるので。ただ「民間故事」としか表記されていないことが多く、出典がどうもはっきりしない。

ともかく、福州南台橋ということはこの川は閩江である。

さらに追記

みつけた。

新加坡韮菜芭城隍庙の百年廟誌(百年焚火代々相傳)に全く同じ記述がある。出版年は2017年。シンガポール華僑のお寺。
ただしここでは七爺八爺じゃなくて八爺九爺になってる。

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