一人
独身の頃は、仕事帰りに10km以上歩いたり、気の向くままに外食したり、自分のためだけに高価な果物を買ったりしていた。就職して初めて住んだ街は便利だけど何もないところで、でも目を凝らせば意外といろんなものがあった。
会社に指定された、築20年を超えるマンションに住んでいた。住んでいる間に給湯器も鍵もトイレも壊れて修理した。ここを早く出て行きたいといつも思っていた。
休日には多種多様な男とデートをした。彼らは私を気に入ったり気に入らなかったりしたが、その全てがそれなりに楽しく、夜道を歩く私たちはそれなりに美しかった。
懐かしく思いながらも、たとえ今あの街に舞い戻ったところで、あの頃の私はもうどこにもいないのだということを私は知っている。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?