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帰国便

空港が見える街で夕日を見た。次々と何でもないように旅客機が飛び立っていった。

その翌日にミュンヘンに向かった。
初めて降り立ったその街には色が溢れていた。建物は殆ど同じ高さとデザインに統一されていて、窓辺に花が飾られていた。石畳には大きな花壇とフルーツの屋台が並んでいた。

人々は親切だった。私たちの拙い英語を一生懸命に聞き取ろうとしてくれた。
時々ニーハオと声をかけられた。夫が「こんにちは」と訂正すると、いつも「ありがとう」と返ってきた。

様々な観光スポットに赴いたものの、記憶に残っているのは国鉄の窓から見えた草原の風景。
そして閉店間際のデパートの薄暗さや、高速で雨の中を駆ける路線バスの乗り心地や、街中に漂う匂いのこと。

帰国後、会社でたくさんの人に「どうだった?」と聞かれたが、私はチョコレートを配りながら、ただ「街が綺麗でした」と答えた。

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