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通学路

眠る前、過去の記憶がスライドショーのように静止画で頭に浮かぶ。何の記録にも残っていない過去は、妄想か現実か区別がつかない。

中学生の頃、私は片道1時間も歩いて通学していた。同じ方向にこんなに長く歩いて通学している友人はおらず、毎日一人だった。校則があるから音楽もカメラもない。通学路の風景以外の情報は何も得られない時間を、私は一日に2時間も過ごしていた。
だから今でも、あの国道を鮮明に思い出せる。郵便局、果物屋、バラック小屋のような古い美容室。長いプリーツスカートが膝を撫でる。冬は日が短いから、車のライトが早く点いて眩しい。

だけど、それも夢だったと誰かに言われても、私に過去を証明する術はないのだ。

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