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【基礎講座5】アウトライン操作の5つの「型」

※有料記事ですが全文無料で読めるようになっています。

自由のための「型」

ある時期から、アウトライナーを自由に使うためには「型」が必要だと考えるようになりました。「自由」と「型」とは矛盾していると思われるかもしれませんが、例えるなら武道の型のようなものです。

同じ竹刀を持っても、剣道を身につけた人とそうでない人との間には雲泥の差がある。竹刀を本当に自由に使うためには型を身につける必要がある……いやそこまで大げさなものではないですが、それでも「型」を意識しているのといないのとでは、けつこう大きな違いになります。

アウトライン操作の「型」は5つあります。

型1 リスティング(項目を書き出す)
型2 レベルダウン(下位項目を作る)
型3 グルーピング(他の項目の下位に収める)
型4 レベルアップ(上位項目を作る)
型5 ソーティング(項目を並び替える)

複雑なアウトライン操作も、実際にはこの5つの「型」の組み合わせです。ひとつひとつ見ていきましょう(『アウトライナー実践入門』などを読んでくださっている方はお気づきかもしれませんが、「型」の名前や説明が少し変わっています。2022年6月現在の最新の説明だと思ってください)。

型1 リスティング(項目を書き出す)

リスティングは、項目を書き出す操作です。

リスティングはアウトラインづくりのスタート地点になります。通常は「箇条書き」として行われますが、普通に「文章を書く」こともリスティングです。もっと言えば、既存の文章をアウトライナーに貼り付けてもいい。

時間を決めて頭から出てくる文章を自由に抑制せずに書くことを「フリーライティング」と呼びます。目的にもよりますが、フリーライティングはリスティングの手段(つまりアウトライン・プロセッシングのスタート地点)として非常に強力な手法です。

リスティングの時点で「アウトライン」の形になっている必要はありません。フラットに書き出せばいいのです。ついつい最初から階層化しようとしてしまいがちなのですが、それはアウトラインを最初から「完成品」として捉える思考です。

「最初からアウトラインを作ろうとしない」というのは、アウトライナーを自由に使うコツのひとつです。まずはフラットにリスティングする。後からアウトライン化する。そのために必要になるのが他の4つの「型」ということになります。

型2 レベルダウン(下位項目を作る)

レベルダウンはある項目に対する下位項目を作る操作です。

以下は「項目A」をレベルダウンするイメージです。

項目A

項目A
 下位項目
 下位項目
 下位項目

(この操作のことを、これまで「ブレイクダウン」と呼んでいたのですが、それは思考の形であって「アウトライン操作」ではないなと常々思っていたので変えました)。

レベルダウンの操作に乗せる思考として典型的なのは、ある項目を構成要素に分解することです(これがつまり「ブレイクダウン」です)。タスク管理で「なかなか実行できないタスクは細かいサブタスクに分割してみよう」と言われますが、これはアウトライナー上ではレベルダウンの操作に乗せて行われます。

あるいは、アウトラインの伝統的(?)使い道である文章のアウトラインで、トップダウン的に見出しの構成を考えることは、見出しの構成要素をレベルダウンの操作に乗せて考えていることになります。

他にも、目的に対して手順を検討する、チェックリストを作る、選択肢を書いてみるなど、さまざまな思考が乗せられます。

型3 グルーピング(他の項目の下位階層に収める)

グルーピングはある項目を他の項目の下位階層に収める操作です。

以下は項目A〜Gの中で項目Dと項目Gの下にグルーピングするイメージです。

項目A
項目B
項目C
項目D
項目E
項目F
項目G

項目D
 項目A
 項目B
 項目C
項目G
 項目E
 項目F

既存の項目の下に収める場合もあれば、新たに作った項目の下に収める場合もあります。わかりやすいのは決められたカテゴリーに沿って項目を分類していくことですが、グルーピング操作に乗せられる思考はそれだけではありません。

文章を書いているときに、ランダムな文章の断片を該当しそうな見出しの下に振り分けていくことがあります。これもグルーピングですが、カテゴリーによる分類とは性質が異なります。「ここに入りそう」という感覚に基づいて恣意的に分けるという意味で「正解」がないからです。使えなさそうな断片をとりあえず「未使用」という項目の下に落としていく、というのも同じですね。

グルーピングの「group」という言葉を「分類」ではなく「ある項目の下にまとめる」という意味だと捉えれば理解しやすいかもしれません。

型4 レベルアップ(上位項目を作る)

レベルアップはある項目に対する上位項目を作る操作です。その名の通り「レベルダウン」の逆です。

以下は項目A〜Cをレベルアップするイメージです。

項目A
項目B
項目C

上位項目
 項目A
 項目B
 項目C

「レベルアップとグルーピングの違いがわかりにくい」という方がいるのですが、グルーピングが項目を他の項目の下に収めるのに対して、レベルアップでは上位項目を新たに作るところが違います。

レベルアップ操作に乗せられる思考の典型は「見出しつけ」です。ひとまとまりの項目(多くの場合文章)に見出しを立てる。これは文章をレベルアップしていることになります。タイトルをつけることや、要約することも同じです。

さらには、その項目を包含する上位概念、総括、結論……など、「その項目の上位に何かがあるとしたら?」という思考全般がレベルアップの操作に乗せて行われます。

レベルアップは「5つの型」の中でおそらく最も意識されにくいものですが、アウトライン・プロセッシングの創発性(アウトライナーを「アイデアプロセッサ」たらしめる部分)を担う重要な操作です。

型5 ソーティング(項目を並び替える)

ソーティングは、項目を並べ替える操作です。

数値を基準とした「ソート」ではなく、意思にもとづいて恣意的に並べ替える操作はアウトライナーならではです。たとえば手順を組み立てること、論理を組み立てること、重要度で並べること、ストーリーを作ること。これらはすべてソーティングの操作に乗せて行われます。

もちろん単に「並べ替える」だけならエディタやワープロの編集機能でもできるわけですが、アウトライナーが強力なのは、他の4つの型と一体で行なえることです。リスティングし、レベルダウンし、グルーピングし、レベルアップした結果をソーティングするのです。

「型」は変形され、組み合わされる

5つの「型」は武道の型のようなものだ、と言いました。武道の稽古では、型を繰り返し反復します。もちろん、本番が型通りに行なわれることはありません。本番では型は自在に、臨機応変に変形されることになります。でも、その自在な動きが可能になるのは、反復することで身体に染みついた型があるからです。

 5つの「型」にも、それと似たところがあります。実際のアウトライン・プロセッシングで「レベルダウンをしよう」とか「レベルアップをしよう」などと考えることはあまりないでしょう。5つの「型」は意識されることなく、自由自在に変形され、組み合わされるはずです。

前回お話しした「シェイク」の中でも、5つの「型」がブレンドされていることに気づくと思います。トップダウン思考の場面ではリスティングとブレイクダウン。ボトムアップの場面ではレベルアップとグルーピングが行われています。そしていずれの場面でもソーティングは不可欠です。

5つの「型」の意味

「型は意識されない」とは言いましたが、やはり型を知っているのと知らないのとでは大きな違いがあります。

アウトライナーで文章を書いたり考えたりしていて行き詰まったときに、5つの型を思い出してみるのです。具体的には「ここで使えそうな型は何だろう」と考えてみる。

たとえば上位項目が作れないか考えてみる(レベルアップ)。出てきた上位項目の内容によって視界が開け、霧が晴れたように内容が流れ出してくることがあります。

アウトラインのコピーを作り、構成とは無関係に使えそうなパーツ、そうでもなさそうなパーツに振り分けてみる(グルーピング)。

ある見出しの中での展開の選択肢を複数書き出してみる(レベルダウン)。不思議なことに、選択肢として複数のパターンを書き出してみようと意識することで、実際には複数パターンを書ききらなくても「書けてしまう」ことがあります(たぶん、今書いていることは複数のあり得るパターンのひとつなのだと思うことで肩の力が抜けるのだと思います)。

アウトラインは脇に置いて、その場で思いつくことをひたすら書き出すことに徹してみる(リスティング)。アウトラインに縛られずに書き出したことをあらためてアウトラインに組み込んでみると、ヒントがつかめることがあります。

つまり、「型」を意識することで、アウトラインを不自由に使っていたことに気づかされるのです。

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