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時代劇に古いも新しいもありゃしないのだ

 前回の超大怪獣トーク&上映イベント2デイズ。その二日目の朝、早起きしてシネ・ヌーヴォへ。4kで復刻された山中貞雄特集の一本『河内山宗俊』へ。山中貞雄といえば28歳の若さで戦病死した、天才映画監督。その現存する三本のフィルムを4K化、ということで、時代劇好きとしては気になるところでした。以前『丹下左膳余話 百萬両の壺』を見たことがあり、その斬新さに驚いた、というか、現代の時代劇(という表現もおかしいですが、そう書くしかない)のフォーマットがすでに80年前の映画で作られているのでは? と思ったのです。山中貞雄の時代劇は『チョンマゲを付けた現代劇』と言われたそうだが、なるほど、と思うところも多々ありました。

 『河内山宗俊』は今から86年前、1936年の作品。モノクロで、格式ばった歌舞伎の延長のようなもの、を想像したけど、まるで違っていた。ヤクザの用心棒の浪人と、飲み屋の主人の坊主、その日暮らしの無頼な日々を送る二人が『これで人間らしくなった』と、一人の少女のために一肌脱ぐ。デジタル修復された画面、やや鮮明な音声。ユーモアを感じるセリフのやり取り、ろくでなしコンビの友情と決意の固さ。もっとぼんやりした画面で、ガチガチした構図で話が進むかと思ったけど、これまた『丹下左膳余話 百萬両の壺』と同じく今に通じる、時代劇のフォーマットがすでに敷かれていた。クライマックス、少女を奪還に来るやくざ者たちとの大立ち回り、狭い水路での大立ち回り、逃げる河内山宗俊を追うヤクザ、それをとらえる横移動撮影。戦前の時代劇はもうここまでやっていたのか! ニヒルに無頼に生きた男たちの最期を描くラストは、最後にほんの少しの希望を見せる、余韻を持たせる幕切れ。

 

 まったく古臭さを感じさせない、古いけど新しい時代劇を見た、という印象でした。なんだかすごいものを見た、と思いつつ、その後は超大怪獣のトーク&上映へ。特撮も時代劇も、その遺伝子が今も流れているんだな、と痛感したのでした。


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