見出し画像

スカイ・クロエ/美人将校VS飛翔悪魔・空中大決戦

 いいお天気が続き、ポカポカした妖気が続きます。そんなときは、天候なんて関係ない映画館に行きましょう、ということで『シャドウ・イン・クラウド』を見に行ってきました。予告編で『クロエ・グレース・モレッツVSグレムリン!』というシンプルな謳い文句を見て、これは新しい怪物映画だ、ぜひ見たいと思っていました。

画像1

 

 以下内容に触れるかもです。


 第二次大戦中、ニュージーランドを飛び立った一機の爆撃機。離陸直前に乗り込んだ、とある密命を帯びた女性将校。彼女の密命とは何か、そして敵機が飛び交う空域を逃れることができるか? という軍事エアサスペンスな内容でも十分面白いと思うのです。しかも、このころはまだ珍しかった女性将校に対する周りの見下した対応や言葉による性的なからかい、それらにも屈しない強い女性を描くことで今風な雰囲気を醸し出してます。戦地の女というものは何も戦闘機のノーズアートに描かれるセクシャルなものだけじゃないんだぞ、というテーマも構築できるはず。下部銃座に押し込められたクロエ将校の閉所での葛藤、そして通信のみで構築されるドラマというのもなかなか面白いものがありました。下部銃座って足元が透けているから高所恐怖症の人にはたまらない場所ですね。下部銃座のサスペンスといえば『世にも不思議なアメージングストーリー』のスピルバーグ監督作品を思い出したりします。

 この映画は、こうした戦争と女性というものに、今風の解釈で切り込んでいく作品でもよかったはず、でも制作側はあえてそうしなかった。先にも書いたように、このエアサスペンスに、飛行機乗りの間で噂になっている怪物、グレムリンをぶち込んできた! グレムリンといえばスピルバーグ&ジョーダンテの作品でも有名だけど、もともとは航空機の機械を食い荒らす空の魔物として有名で、これまたスピルバーグの『トワイライトゾーン』にも登場していました。そのグレムリンが、クロエが大真面目に通信で男たちとやり取りしている間にコソコソと動き回っている。なんの伏線もなく、『いるんだから仕方ない』とばかりに爆撃機内に巣食っていた! これは軍事サスペンスと見せかけた至極まっとうな怪物映画。中盤からはゼロ戦が襲い掛かってきたりと、クロエたちの爆撃機は内外からの危険に晒されるのです。そして高所恐怖症でもない自分も思わずヒヤッとするような、爆撃機の底面に張り付いたり、あわや落ちかけたりとまさに手に汗握る描写もあり。でも最後の最後に『そんなアホな?』となる描写があって、さすがにそれはやりすぎだろうと思いました。

 ゼロ戦の攻撃をかわしつつ、グレムリンとも戦うクロエと乗務員。空から地上に戦いの舞台が移り、今まで控えめだったクロエの中で何かがブちぎれる。片袖をちぎり、二の腕をあらわにしたクロエは強い、いささかふくよかにも見えるが、その腕から繰り出すパンチは重そうだ。重く素早いクロエパンチ、そして軍事教練で習ったであろう格闘術! 最近の洋画だと、いきなり後ろ回し蹴りをかましたりする、いわゆるカンフーまがいの格闘技が頻発するのですが、ここではきちんと? 軍隊で教えそうな格闘技で怪物に対処していきます。だからこそその一発一発が重い。そして怪物相手にステゴロでやりあえる人間もそうそういない。クロエ強い!

 エンディングのにこやかな出演者に『プレデター』を、そしてシンセサウンドにジョンカーペンターを想起させ、あぁこの監督はかなりこういうジャンルが好きなんだな、と思いました。数年に何度かやってくる『とにかく怪物を見せたいんや!』な作品でした。そしてそれほど期待せずに行ったら思いがけず面白かった作品でもあります。それに最近ハリウッド映画の上映時間がどんどん伸びている中、90分弱というのも、すっきりと見やすい。ほら、余計な枝葉を取り除いたら英がこれだけシンプルかつ面白くできるのですよ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?