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山羊が吠える、暇を持て余した神々の争い

  その日、学校で『子連れ狼 子を貸し腕貸しつかまつる』を見た。大映倒産後の三隈研次監督の外連味だらけの演出と、サービス過剰な勝プロの制作体制、そして原作者にnoと言わせなかった若山富三郎のスピーディーな太刀捌き。これらが混ざり合い、劇画以上に劇画チックなエロと暴力のつるべ打ちな快作に仕上がった、と思う。
 
 そしてその日の午後、こちらも漫画が元になってる『ソー・ラブ&サンダー』を。豪快な神様の華麗なる冒険譚からアベンジャーズを経て、前作で筋肉兄ちゃんバカ無双バカ映画に仕上げたタイカ・ワイティティ監督の目の付け所がよかった。この筋肉バカ兄ちゃんには、もっとバカに振舞ってもらったほうが面白いのだ。

 ガーディアンズオブギャラクシーの面々(こちらもジェームズガン監督によってバカ集団として描かれてる)と宇宙を旅したソーさんでしたが、神殺しのゴッドブッチャーの存在を知り、宇宙の、神々の危機を救うために立ち上がるのでした。

 本作の目玉は、ソーの元恋人、ジェーン博士がソーになって再登場するという点で、ナタリーポートマンが鍛え上げた二の腕を披露し、ソーとキャプテンアメリカしか持てなかった鉄槌ムジョルニアを振り回して大活躍。一体何があったの? 一見、賑やかしのように見せかけて、その裏では……。

 そう、ワイティティ監督だった。前作でも『ジョジョラビット』でも、楽しませるだけ楽しませて、実は暗く深い裏の面を出すのが得意な人だったよ。でも悲しいばかりじゃない、そこからまた新たなドラマをが生まれるんだけど、とにかく『激安店で飲んで喰ったらチャージ料がものすごく高かった』『激安商品をネットで買ったら送料がバカ高かった』ような。違うか。あげるだけ挙げてから思い切り落とす。でも、ちゃんと楽しませてくれるし、その根底にあるのはやはり『ラブ』なのだな、と思わせてくれる作品でした。超人だから二の腕逞しいけど、実は……の部分が残酷なぐらいに悲しいのです。そして宇宙を股にかけた神々のバトルのはずなのに、ご近所レベルのドツキあいなのがいいのですね。

 『ククルス・ドアンの島』に続き、これもまたヤギ映画で、なんで今年はヤギ映画が多いのだと思いました。ヤギ&サンダーですよ。そしてくしくも映画は、冒頭に書いた『子連れ狼』とほんの少しリンクするという偶然。そーいえば、ソーの映画はこれで4本目。まだ3本目だと思ってた。マーベルのヒーロー単体としては最長になるのかな。エンドゲームの後、わんさと出てきたマーベル映画も、ドクターストレンジ以外は個人的にはあまりはまらなかったので、まだまだ活躍して、筋肉バカっぷりを見せつけてほしいものです。そーです、アメコミ映画は明るく楽しいほうがいいのです。悩むな!



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