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◎百足の草鞋/超引用!京阪空想格闘完徹編

2019年8月。長いお休みから復活した京都みなみ会館、そして再開の超大怪獣大特撮大全集R(超大R) 、メカゴジラ2本立ても大盛況に終わりました。新しく3スクリーンになったミニシアター、『また行こう』といった舌の根も乾かないうちのその翌週には京都へ。見逃していた『サスペリア』『恐怖の報酬』のはしごを。

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『恐怖の報酬・オリジナル完全版』は1977年の作品。日本公開時は短縮版で公開されるわ、オリジナル版と比較されて酷評を受けるわで散々な目にあった作品だけど、この度4kデジタルリマスター化して復活。パンフレットを読むと『スターウォーズにやられた』らしい。
 巨大なトラックが吊り橋を渡るビジュアルに、ニトログリセリンを運ぶお話という情報しか頭に入れずに鑑賞。

 はじめはドキュメントタッチの冒頭のシーンで『映画間違えた?』と思ってしまった。メキシコ、イスラエル、パリ、アメリカ、それぞれの国と地域で罪を犯した男たち4人が、それぞれ理由は違えど、南米のとある国に逃げ込む。地獄のような劣悪な環境の中、男たちは報酬と新たな身分証のために、トラックによるニトログリセリン運搬という危険な仕事を引き受ける。
 トラックが動いてからはとにかく、ヒリヒリしっぱなし。崖っぷちをそろそろ進む、ジャングルをとろとろ進む。しかもちょっとでも事故れば積み荷のニトロが土管、と爆発するのである。道に迷って狭い路地に出たときに、車をこすらないように冷や汗かきながらノロノロ運転をすることがある。あれの何十倍もの緊張感が延々と続くのだ。そして問題の吊り橋のシーン。橋の傷み具合とトラックの大きさからすれば無理でしょ! でもやるんだよ! エンジンを唸らせもがくように進むトラックは手負いの獣にも見える。しかもタイミングの悪いことに暴風雨で水かさが増している。でも男たちはあきらめない。だんだんと、森が意思をもって男たちに襲い掛かってくるホラー映画のようにも見えてきた。これは各地で罪を背負った男たちの地獄めぐりのお話なのだ、たぶんそうだ。高額報酬は地獄に落とされた蜘蛛の糸、地獄の責め苦のように次々と難関が待ち構えている。
 そんな苦労を共にしたからこそ生まれてくる信頼関係。でもそれももろく崩れ去る。ジャングルとは打って変わった岩だらけの高地をトラックが走るシーンはまさに地獄をさまよう亡者のようだ。これが酷評? どこが? 本物をそろえた本物の映像、ヒリヒリするドラマ、見た後にどっと疲れ、実際汗をかいていてたけど、つま先までびっしょり濡れたような錯覚を覚える。細いタフガイ、ロイ・シャイダーは映画で関わった乗り物はトラックだろうが漁船だろうが戦闘ヘリだろうが、壊れるか、壊す。
  先日のトークショーの際、中野監督がこっそり中をのぞいて『音がいい!』と太鼓判を押してくれたのもこの映画でした。


 せっかく京都に来たのに一本だけではもったいない、と次に見たのが『サスペリア』これもまたリメイク作品。普段は進んで怖いものを見たくないのですが、なんとなく、怖いもの見たさで。しかもオリジナルは『決して一人では見ないでください』のコピーで、子供心に散々怖がった覚えがある。なので、オリジナルを見ないまま、リメイク版へ。こじんまりとした3番スクリーンで鑑賞。  
 ドイツの舞踏学校に入学したアメリカ娘の体験する奇妙な出来事。学園は魔女の支配する、ある儀式のための容れ物、学生は生贄だったのか? ストレートに怖い絵をバーンと見せるのではなく、奇妙な映像、ずれた映像を見せてじわりじわりと見せてく手法。これなら安心。 とあるきっかけで事件を追う老精神科医。学園の異変に徐々に気づく主人公の友人。奇しくも『恐怖の報酬』公開時の1977年のドイツを舞台に、当時の社会情勢を照らし合わせながら、様々な謎のピースをちりばめていく。それがクライマックスとぴたりぴたりと合っていくたびに『なるほど、そうか』と恐怖の真意が伝わってくる。
 小さな異変の積み重ねから徐々に壮大なクライマックスに向かっていく構成は今年見た『へレディタリー/継承』にも似ている。そして虚が実を食い散らかす、真相が明らかになる場面、やっぱり裸踊りかよ! この辺は国民性の違いなのか、魔女や悪魔に疎い日本人だからなのか、恐怖度が伝わりにくいが、とにかくおかしなことが続けて行われていることだけはわかる。物語の途中から『あれ、主人公が事件にかかわってこないよ?』と思ったけど、なるほど、そういうことか。つまりは極端なたとえだけど、志村けんの『変なおじさん』なのだ。『そうです、私が変なおじさん(魔女)です』で明らかになってからのずっこけ&ダンス。主演のダコタ・ジョンソンは志村けんだった! ティルダ・スィントンはその無表情なたたずまいが、何もしてなくても魔女っぽいけど、まさかの3役だったとは! 彼女と彼女の物語やったんか! とにかく珍妙で、それだからこそ心に残る映画。グロいシーンも、乳も尻も血も涙もチンチンも一緒になって渦を巻く。
 男だらけに女だらけ、1977年、リメイク映画、とこじつければ共通点が見える二本を見終わり、外に出ると土砂降りの雨。『サスペリア』でもほぼ全編にわたって雨、または雪が降ってたけど、そこまで映画に合わせんでもええやんかと、お隣の居酒屋でホルモン野菜炒めとライス(中)を食べながら思うのでした。(ブログより)

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 映画を見る前には古本屋であしたのジョーの全巻セットを買って、暑い中をひいひい言いながらぎりぎり映画館に入り、帰りは大豪雨の中びしょびしょになりながら駐車場に向かいました。そしてその翌週には新みなみ会館初のオールナイトへ。結局毎週通っているんですな。

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 去年暮れ、京都出町座で見た『アンダーザシルバーレイク』がとても奇妙な映画で、同じ監督デヴィッド・ロバート・ミッチェル(名前名前+姓、日本でいえば山田太郎次郎みたいなものか)の撮った『アメリカン・スリープオーバー』も観たいと思ってた。はて、そもそも爆発も炎上も怪獣も出てこない、ミニシアター、アート系の『アンダー……』や『アメリカン……』を、なぜ見たいと思うようになったのか? みなみ会館の吉田館長がイベント等でお勧めしていたから気になっていたのを思い出した。そんなみなみ会館が新生し、自主洋画配給のグッチーズフリースクールとの提携イベント『ルーキーズ映画祭』の一環として昨日デヴィッド・ロバート・ミッチェル、長いのでデロチェル監督の特集オールナイトが行われることになった。
 
 新生みなみ会館初のオールナイト、ふかふかの椅子で寝落ちするのではないか? 一応仮眠はとっておいたが、さて。

まずは『アメリカン・スリープオーバー』。スリープオーバーとは? お泊り会のようで、アメリカの若者の間では恒例の行事らしい。学期(学年)が変わる夏休み、それぞれの思い出を作ろうと、複数の少年少女の姿を同時進行で描く群像劇。しかし、国は変わっても女子の集団はキャッキャしてるのに対して男は本当にインインメツメツとしてるな。女子が恋バナとか酒とか薬とかやってキャッキャしてるのに男どもはみんなで映画見てエロいシ-ンで『今の巻き戻し!』ですから、どこでもいっしょです。
 それよりも、劇中に出てくる映画『モスキータ』が気になる。巨大な蚊の怪獣で、日本語で歌う双子の妖精がそばにいて……とモスラのパロディで、対峙する人間たちのルックス、ロケ地、アングルが『モスラ対ゴジラ』とまるでそっくり。デロチェル、そっちも好きやな? 
 青春映画のテイストを残して次に撮ったのがホラー映画『イット・フォローズ』。ホラー映画は若手監督の登竜門ですが、ここでも一癖も二癖もある作品に仕上げている。
 『アメリカン……』と同じく、どこかの郊外の町。わめきながら飛び出した少女が、何者かに逃げるように車を飛ばす。つかみは充分。いわゆる『呪い』の一種なんだろうが、この映画では『それ』は人の形を取ってひたひたとやってくる。突然知らないおじさんやおばさんが、ゆっくりとこちらに向かってくるのだ。冒頭でその説明をしているおかげで、特に凝ったメイクもしていないおばちゃんが歩いてくるだけでも怖くなってくる。その呪いを解くにはどうするれいいのか? 異性と交わることで呪いを移すのだ! やればやるだけ被害は免れる、と書くと艶笑ホラーになりそうなのだが、これも設定をしっかりと説明することでとても切羽詰まったものになってくる。しかしヒロイン、そのために何人と寝たよ? 要するにビデオをダビングし、人に見せることで呪いを回避する『リング』の肉体版というべきなのか。

 逃げても逃げても追ってくる『それ』の不気味さ。ドアを開けて、友人だとわかってほっとしたのも束の間、後ろから微妙に背の高い男がぬーっと入ってくるシーンは思わずギャッとなった。

 そして夜もすっかり更けて最後は『アンダーザシルバーレイク』。今回で二回目だけど、やっぱりわけのわからない、ハリウッド地獄巡り。都市伝説という虚構が現実を飲み込むには、虚構を作るハリウッドがふさわしいのか。デロチェルの映画を最初に見たのが一番ややこしいこれだったけど、改めて過去作も見ると、もともと癖の強い監督だということがわかる。三作に共通する郊外の町、幻の女、雷雨にプールに、色気のない水着女子。これらには意味があるのか、4作目もこの癖の強さは健在なのか? いや案外、そろそろドラマもホラーもとれるし、癖が強いのでモンスターバースやDCコミックの監督に大抜擢されそう。
 外はすっかり明るくなっており、プールの出てくる映画ばかり見たので、珍しく朝風呂を決めてみた。雷雨はなく空は快晴、残暑がまだ厳しく、寝不足でもうろうとしながらも職場へ向かったのでした。ひょっとしたら全部夢だったのかもしれない。(ブログより)

 京都の次は大阪へ。新世界東映でまたまた面白そうな特集をやっていたのでした。長いけど、抜粋。

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洋泉社『ブルース・リーと101匹ドラゴン大行進』を何度も読んだ身としては、その名を何度も目にした山下タダシとその主演作『ザ・カラテ』シリーズ。本物を使ったカラテ映画とは、いったいどんなものだろう? ソフト化もされておらず、いや、されていても見ようとは思わなかったかもしれない。
 そんな『ザ・カラテ』が三角マークの映画を積極的に上映する、大阪のオアシス、新世界東映で上映! 一仕事終えたので、見に行くことにした。

『ザ・カラテ』
世界武道大会に出場するため、アメリカから京都にやってきた山下さん。ラーメン屋のお手伝いしながら、武道大会の裏に潜むどす黒い陰謀を空手で解決する。
『ザ・カラテ2』
武道大会が終わったものの、まだ京都在住の山下さん。前回敵によって両目が見えなくなってしまったものの、空手の技は衰えず、世界中の武術家に狙われることに。今回は名刀を盗んだ武術集団と対決する。

 以上、ざっくりとした2作品の解説。主演の山下さんは、空手の腕前はすさまじい、鎌ヌンチャクもトンファー捌きも鮮やか。対する世界中から集められた武術家も胡散臭いものの、かなりの動きを見せて、山下さんと好勝負を見せる。武術大会、盗まれた名刀というメインの話に、やくざじみた武術集団という、いつかどこかで見たような東映カラテフォーマット。しかし、主演の山下さんは俳優ではない。ヒゲ面で西城秀樹を模したようなもわっとしたヘアースタイル。どう見ても、主演の顔ではない。しかも演技が棒読み、というかそこはアメリカ帰りということで片言。棒読みの片言という感情が全く見えない演技。しかしそれでも山下さんは一生懸命怒ったりものを食べたり、照れたり、笑ったりを演じる。カラテに真摯に向き合ってきたであろう山下さんは、演技に対しても真剣に向き合っている、棒読みだけど。

 対する世界中からやってきた、怪しげな流派の武術家たちももちろん外国人。よって台詞はもちろん片言の日本語。
『ヤマシタァ、オマエヲタオスー』
『ヨオシ、カカッテコイ!』
 そんなやり取りが続く。よって台詞のない、アクションシーンになるとなぜかほっとした。
 片言VS棒読み、さらに山下さんが身を寄せる日本正武館の、鈴木館長も出演作が多いものの、空手はプロでも芝居は素人。こなれているとはいえ、どこか微妙。さらには館長の娘役堀越陽子さん(常に和服、着物はだけてのパンチラキックもあり)も女優さんなんだけど空手の型がばっちり決まっていたので、この人も素人では? と錯覚してしまう。棒読みに見えてくる! 恐るべき片言棒読み地獄! 

 これが延々続くのか、もうずっと戦っていてくれ! あぁ、どっちにも福本清三が別の役で出ている、怖い! しかし心配無用。山下さんが下宿するラーメン屋。カンフー映画のポスターがそこら中に貼られている、マニアなら行ってみたいお店。でもラーメンは汁っ気が少なくてまずそう。そんなお店の厨房で働くのはあの男、主人の孫娘が帰ってくるなり『身体検査か?検便取ったか、虫おったか?』と、ティーン女子にずけずけと下ネタをぶつける男、山城新伍である。棒読みと片言の渦の中、どうせ誰もわかるまい、と思ったかいつも通りのマイペースなのか、限りなく出演シーンに笑いをハヒーハヒーとギャグをぶち込んでいく山城新伍。言葉でのコミュニケーションが不自由ならば、言葉の遊撃隊をぶち込んでおけ! という趣旨だったのかもしれない。
 このギャグ要員山城新伍とラーメン屋との交流が、殺伐とした『ザ・カラテ』シリーズをマイルドなものに仕上げ、片言の青年の協力者というポジションにうまく収まっていた。
 1、2作ともにクライマックスは鈴木館長親子も巻き込んでの乱闘になるのがパターン。しかし、2にはあのヤン・スエが出演。筋肉ムキムキの不愛想、こんな顔のおばちゃんいるよねと思わせるヤンスエが京都に! しかも山城新伍との夢の顔合わせも実現。誰が望んだ、この組み合わせ! 
1作目で両目を負傷した山下さんは、2作目では全編盲目という設定。なぜその設定? 『座頭市』テイストも盛り込みたかったのか、単なる気まぐれか? 素人俳優にさらに盲目の演技を強いるとは。ひょっとしたら、山下さんの目力が強すぎるので、その目を塞いだのか?(ブログより)

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 この時期、シネコンでレオーネの傑作『ウエスタン』がまさかのリバイバル、喜び勇んで駆けつけたのですが、どうもこの頃にあの騒動が持ち上がり、どこに出かけてもお金のことが頭をぐるぐると回り、どこかの大金持ち(『ジャスティスリーグ』で銀行ごと買い取ったブルースウェインとか)と友達にならないかな、朝起きたら全部夢だったとか、そんなことないかな、と思っていたのでした。

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 そして9月の超大Rへ。その前に一本『さらば愛しきアウトロー』を。

 今年公開の映画だけど、舞台は80年代。レッドフォードといえば、最近はヒドラ党幹部だったりするのですが、個人的には『明日に向かって撃て!』のサンダンス・キッドである。アメリカを股にかける老強盗とそれを追う刑事の姿を並行して描くが、その鮮やかな手口と紳士的な態度で、憎めない。最終的に刑事が強盗にシンパシーを感じていくようになる。しわくちゃでもかっこいいレッドフォード。ヒロインはシシ―スぺイシス。70年代に大活躍した二人だ。イーストウッドも今年公開の『運び屋』で、図らずも犯罪に手を染める老人を演じていたけど、大スターが犯罪者を演じるという偶然。

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 そして超大Rは『妖星ゴラス』『鋼鉄の巨人(スーパージャイアンツ)怪星人の魔城』『地球滅亡寸前』の人類SOSな三本。
『スーパージャイアンツ』はあの手この手で地球を攻めるカピア人VSジャイアンツのおじさん。アクションに舞踊を入れたり、魔女や変装等々、江戸川乱歩の少年探偵団のテイストも。 四年ぶりの『妖星ゴラス』は、地球を移動させるまさにザ・空想科学特撮映画。決まってマグマ不要論が起きますが、自分はありやと思います。(ブログより)

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あの事を引きずりつつも京都と新世界通いが続く中、10月へ。またもやカラテ、またもや怪獣! だらだらと続く! 第一回のお話とようやく繋がり、きれいに輪が閉じたように思うけど、それでもまだ続く! 弁護士とか不動産屋さんとか、普段会わないような職種の人と出会うのもこの頃! 

 次回『京都異能力内覧編』! たぶん。

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