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煌く焼肉全開完食!

 狂気、と一口に言っても様々なタイプの狂気がある、と思う。ロバート・ブロックの小説『サイコ』はもちろん、あの有名なヒッチコックの映画の原作なわけだが、日本で出版された当初は『気ちがい(サイコ)』という題がつけられていた。同じ意味だけど、日本語と英語にすると、そのニュアンスが変わってくるな、というのが個人的な感想で、前者はどこか明るく、後者はどこか暗い。あくまでも個人的の意見ですよ、どちらも常識を逸脱した言動をとるのだから、その根幹は一緒なのですけどね。

 で、現在放送中の『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』の話になる。メンバー中二人がCG処理、男性初のピンク、名乗らない、レッドがとにかく無敵で非常識等々、これまでのセオリーを覆したような設定に、裏がありそうなストーリー、常識人だと思っていたら、内に秘めた闇が深かったり、お尋ね者だったり、無職だったりと悪役よりもキャラの立つヒーローサイドがとにかく話題で、明るく派手な中に、どこか暗い、狂気(サイコ)のようなものが潜んでいそうな気がする。しかし、前作『機界戦隊ゼンカイジャー』もいい意味で狂っていた。まず、主人公チームが5人中4人が着ぐるみである。毎回敵のナンセンスな攻撃に素直に応じて右往左往しながら愚直にこれを突破していく構成等々、どこか狂っていた。先述の『気ちがい(サイコ)』のテイでいけば、ゼンカイジャーは前者で、ドンブラザーズは後者のイメージなのです。見た目からしてどこかおかしいゼンカイジャーに、見た目もおかしいけど、内面はもっとおかしいドンブラザーズ。狂わないとスーパー戦隊になれないのか? と言われると、さらにその前の『魔進戦隊キラメイジャー』は実に正統派、王道の戦隊だったなぁと思うのです。で、その戦隊も好きですよ、と書いたところで、先日見た『機界戦隊ゼンカイジャーVSキラメイジャーVSセンパイジャー』のお話。


 毎年恒例の戦隊VS シリーズで、あのゼンカイジャーのその後が見れるのは実に嬉しいことなのです。王道のキラメイジャーにコミカル要素多めのゼンカイジャーがどう絡むのか、戦うのか? といえば、まあクライマックスはいつものように共闘するのですが、そこに至るまで、両戦隊は延々敵(カルビワルド。カルビの怪人というのもおかしいかもしれませんが、ゼンカイジャー世界では平常運転です)の策にはまって焼肉を食べ続けることになるのです。戦隊映画で焼肉? このナンセンスな加減が実にゼンカイジャーであり、王道キラメイジャーもその渦に飲み込まれていくのでした。60分強の上映時間の大半が焼肉といういい意味で狂った展開もゼンカイジャーならでは。その後ろではゴーカイレッド、ルパンレッドという『センパイジャー』にキラメイシルバー、ツーカイザーといった追加戦士たちがヒーローっぽい活躍をしているのですが、メインのヒーローたちは延々焼き肉。もうすべて「ゼンカイジャーらしいねえ」で片づけてもいいかもしれないぐらいに、彼らの一年の活躍はこのようにシリーズの、いやドラマの常識を逸脱したものだったのです。


 食べても食べても減らない焼肉地獄の突破口もまたゼンカイジャーらしい。戦うのではなく、食べる、ひたすら食べる! そこに歴代戦隊の力を使っても食べる! 戦わない! これもまた……。

 そしてエンディングはおなじみのダンスで〆るのですが、これも両戦隊のオープニングとエンディングを無理やりミックスしていて、ぎこちなさ全開、こちらもどこか狂っていました。

 狂ったような1時間の上映、見終わった後に残っと野は『焼肉食べたいな』という気持ちだけでした。そしてその翌日、トンテキを食べました。

 

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