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喰らう! 天然記念物

 最近昔の、大映映画のことばかり書いてますが、本当は新作も見たい映画が多いのです。あれも見たいし、これも見たい、夜一回上映で上映館も少ないあれはいつ見に行こう。夜は寒いな、バイクは辛いな、電車にしようかな、近所に安い駐車場あるのかな……と逡巡しているうちに上映最終日。ここにきて安い駐車場も見つけ、さあ行くぞ、と車で飛び出し心斎橋へ。

 で、見たのが『キラーカブトガニ』。これかよ、そうだよ。

 ホラーは苦手だけど、こういった安い感じのバケモノ映画は気になってしまうんです。しかもカブトガニですよ。カニとかカブトガニとか、甲殻類にカッコよさを感じてしまうのです。それが群れを成して人を襲う。それ以上の発展はないと思われる1アイデアな作品ですよ。ちなみにカブトガニは甲殻類ではなく蜘蛛や蠍の仲間だそうです。パシフィックリムでも気になる怪獣はカニのお化け、オニババでした。84ゴジラの没案で巨大フナムシ、ショッキラスの群れがゴジラ上陸前に近くの漁村を襲うシーンがあったと聞きますがぜひ実現してもらいたかった。今回の映画はそういう感じになるのかな。拙作『バカと戦車で守ってみる!』で巨大甲殻類と軍隊の戦闘を描いたのはその幻のシーンとスターシップトルーパーズのイメージがあったからなのです。

なんと入場特典があった!

(以下、ネタバレのようなことが書かれてますが、それを読んでも多分支障はないかと思います)



 日本の原発事故でカブトガニが狂暴化、そしてなぜかアメリカの港町に上陸! イラストに爆破エフェクトをかけたような原発爆破シーンが安い、これでこの映画はこういうものなのだ、と安心させてくれます。自分の中でこの手のモンスターホラーの最安値は

『食人雪男』なので、それよりましであれば十分楽しめる、というほどに『食人雪男』がアレだったのです。

 しかし、安っぽい原発シーンから、海岸で騎乗位アオカン中のカップルがアアーンとかやってるところにタイトルがドーン! と出るに至って、あぁ、これは安心して見れる映画だな、と確信しました。

もちろんこのふたりが最初の犠牲者

 主人公は車椅子の少年、発明好きで手製の歩行具でガールフレンドとダンスを踊りたい、というピュアな心の持ち主。でも歩行具の動力源に得体のしれないエネルギーを個人輸入してるから、あまりピュアとはいえませんね。
 保安官代理の主人公の兄に、眼鏡美人のガールフレンドの母親はじめ、癖の強い住人が多いのもこの手の映画の定番。あとはいかにして子のクセ強い連中が無残に殺されていくか、なのです。そしてこの映画に出てくる大人はだいたいハッパ決めてます。

 イカれたルンバのように猛スピードで地を這い、そして『エイリアン』のフェイスハガーのように顔に張り付いて人肉を食らうカブトガニ軍団! 主人公が楽しみにしていたプロム会場は血の惨劇に! でも知性と凶暴さを兼ねてはいるものの、カブトガニなので、少々力を入れて踏んずけると、死にます。残酷ないたずら好きで、群れを成すカブトガニ軍団は、『グレムリン』のように街を荒らします。それだけでも大変なのに、カブトガニは異常進化し、カブトガニ怪人に進化します。これがただのカブトガニのでかい奴とかではなく、ちょっとひねったデザインなので妙にかっこいいのです。『宇宙刑事ギャバン』のシャコモンスターに似てます

カブトガニ怪獣


 予算的にカブトガニの群れで終わると思ってたから、これはうれしい誤算でした。さらには、深海にすむ彼らの親玉、鯨を捕食するほどの大きさのカブトガニ怪獣も控えていたのです。おぉ、ホラーかと思ったら怪獣映画にシフトチェンジ! グリーンバック合成が上手いのかそうでないのかよくわからない不思議な空間で、実景の港町に巨大カブトガニ怪獣が出現! その姿はカブトガニ怪人にトゲを増やしてさらにかっこよくなったデザイン。というか、明らかにヒト型になって日本の着ぐるみ怪獣デザインのアプローチですよ。
 
 絶望的な状況の中、車椅子少年が取った手段は彼らの天敵を生むこと。カブトガニの天敵って何? それは巨大ロボットだ! いつの間にかその辺のものを寄せ集めて作った巨大鮫型ロボットが起動、これも着ぐるみ演出で、ウルトラのような戦隊のような、そんないつもよく見ている光景が目の前で繰り広げられるのです。これをショーもないとするか否か、個人的には『なんか得した』気分になりました。その姿は『ゲゲゲの鬼太郎』のロボット大海獣にちょっと似ておりました。

ちゃんと武器持ってる鮫ロボ
ロボット大海獣

  なんだかこの映画、いつか見た何かに似ているなにかがたくさん出てきますが、気にしない。もう好きなこと全部やったるんじゃー予算内で! というい作り手の楽しそうな表情が見えてきそうです。大真面目にバカをやる、バカのふり幅が実に難しく、日本でこれをやると『バカ映画』のレッテルを張られておしまい、とか某あとしまつ怪獣映画のようにふざけてるのか真面目なのかわからないまま滑っておしまい、とかなりがちですが、向こうさんのこういった映画は『はいはい、映画はしょせん見世物ですのでー』という開き直り方が清々しいのです。とはいえ、中にはそれでも『これは……』と思うものがありますよ、『食人雪男』みたいに。

 いろいろ書きましたが、まあアオカンでタイトルが出るのは映画史上初だと思うし、あのインパクトはかなり強烈ですよ。そして怪獣映画を見せてくれたので、自分としては大満足な映画でありました。

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