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潔癖超人に狂暴獣人、そして敵中突破

 先週末は恒例超大怪獣2021、今月は『ウルトラマンゼアス』『新世紀ウルトラマン伝説』『新世紀2003ウルトラマン伝説』のゼアス25周年上映会。同時期のウルトラマンティガがアニバーサリーで盛り上がる中、ゼアスをチョイスするというのが、実にこのイベントらしい。ゼアス正続編の二本立てでもよいのでは? と思われる方もいるかと思いますが、ゼアス2はすでに5年前、ウルトラ大全集の枠で上映済みだったのです。この時のトークイベントは、いまだにうまくいってなかったなぁ、と反省することしきりです。

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 まずは長めの円谷インフォメーションから始まって『ウルトラマン伝説』から。ウルトラマンコスモスまでのダイジェストが見れるだけでなく、あのウルトラエクササイズを劇場で、しかもフィルムで拝めるという滅多にないチャンス。実はどうにもウルトラマンの人間ぶりってのが苦手でして、ウルトラマンのダンス? と最初は敬遠気味だったのですが、あの不思議なリズムと踊りにすっかり魅了されてしまいました。これはこれでありだ。クライマックスの超巨大怪獣天空魔と全ウルトラマンの迫力バトルも、ダンスの前には霞んでしまうほどです。そして続く『新世紀2003』は更にダンスに特化し、ウルトラマンがヒップホップダンスを踊る、という怪作。ダンス用衣装を着たウルトラマンや怪獣が達者なダンスを見せる、それを見ているその他のウルトラさんたち。一体どのテンションで見ればいいのだ? と思う間もなく映画は終わる。あぁ、これはインド映画のノリなのだ、とみてから思った。考えずに体を動かせばいいのだ、それがたまたまウルトラマンだっただけのことなのですよ、たぶん。

 そしてメインの『ゼアス』。とんねるず主演ということで、バラエティ色が強い、おふざけのあるものかと思ってたけど、実は結構真面目なウルトラ映画だったりしたので驚いた。おっちょこちょいで潔癖症でも、努力家のゼアス、最後の最後まで怪獣コッテンペッペとベンゼン星人と立ち会わないのがうまい。最後の最後に苦手を克服し、みんなのエールを受けて泥沼の中からその雄姿を現すシーンは、25年ぶりに劇場で見ても、ウルっと来てしまう。しかもゼアス、割と実戦は強い。怪獣と宇宙人を向こうに回し、すっと自分の有利になるようなポジションに変わるさりげない動きが、ウルトラの戦士っぽさを見せてくれる。

 でもとんねるずと鹿賀丈史のセリフはほとんどなに言ってるかわからなかった。これはいくら音響がよくっても無理なことでした。

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 令和に甦るウルトラマン伝説グッズのクリアファイル。ちゃんとみんな踊ってる。そして次回もまたアニバーサリー上映。30周年の『ミカドロイド』!

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 今回は中短編三本立て、ということで上映時間がかなり短かった。さて、何をするかね。ここはみなみ会館で上映中の新作怪獣映画『食人雪男』を見ておこう、でも先に見た人たちからは『ひどいから見ておいた方がいい』という謎のメッセージを頂く。ひどいから見るな、というのはわかるけど、見ておけとは?

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 世界の怪獣映画の中には「雪男映画」というジャンルが少なからず存在する。全く雪男が出てこない『恐怖の雪男』という作品もあるし、さすが東宝、と言わざるを得ない雪男大盤振る舞いの『獣人雪男』もある。さて今回はどんな雪男なのだろうか?

 結果から言えば、雪男は後半からその姿を惜しげもなく見せてくれていた。しかもタイトルに偽りなくその狂暴性を発揮し、人間を血祭りにあげている。たぶんおそらく、雪男映画史上最も残酷な雪男なのではないだろうか? だが、安い。安ければ安いなりに工夫するものがあるだろうが、それもなかった。雪山に生育するという『雪男草』を探しに来た調査隊一行。どうにも前任は何者かに襲われ、全滅したらしい。捜査をする中、一人、また一人と山の守り神・雪男の魔手に掛かっていく。ざっくりしたお話はこんな感じだけど、調査隊の目的がよくわからない、雪男草を探すのか、通信環境をよくするために雪山にビーコンを設置するのか、どっちともつかない。雪男が着ぐるみ丸出しで、手首にスーツの境目が見えた、とかそんなことな些末な問題である。彼は十分怪物らしい活躍を見せてくれた。銃撃には耐えられるけど、光に弱い、でも日中行動しているとかよくわからない行動をとるけど。銃撃の際、マズルフラッシュが手書きのようなCGなのもまぁいい。安いのだろう。でもお話がよくわからない。低予算映画はもっとシンプルにすべきだと思う。冒頭で雪男から逃げる人の後ろでのんきに散歩している人たちが映っているのを見て、何かを察した。知り合いの家に泊まり込んで、一週間ぐらいで撮影したのかな。という自主製作感がぬぐえない、珍奇な一本でした。でもタイトルに『雪男』とついちゃうと見たくなる哀しき怪獣好きの性。もう、トカナ配給のホラーは見るものか、と思いましたが、11月にはビッグフット映画『ドーン・オブ・ザ・ビースト』が来るらしい。あぁ、悩ましい。

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 とても安い怪獣映画を見て数日後。午前十時の映画祭『隠し砦の三悪人』を見る。つい先日ブルーレイで見たばかりだけど、4k版とか言われると見たくなるのです。

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 亡国の姫を逃がすべく敵中突破の大冒険、西部劇タッチとコミカルさも描いた痛快時代劇。侍たちの謀に巻き込まれる百姓コンビやその設定が『スターウォーズ』に影響を与えた、ということはさておき、実にクリアな画面になっていて驚いた、ただでさえ鋭い三船敏郎の眼光がさらに磨きがかかったように見えるし、雪姫の能面のようなメイクもお美しいけど、眉つぶしがモリっとなってるのも見える。木製の日本家屋や着物の生地、前回の『座頭市物語』でも思ったけど、モノクロの時代劇の方が4kにした際そのディティールがくっきり見えてくるのではないかな、と思ったりもした。夏の暑い盛りに撮影したのだろうか、みんなうっすら汗をかいているし、男は大体短パンかふんどしだ。

 戦乱の世でもあっても、敵味方に分かれても変わらぬ友情。それがラストのセリフに繋がり、痛快なのです。やっぱりタイトルの三悪人って真壁六郎太と百姓の太平と又七なんでしょうが、後半は六郎太と雪姫、それに裏切り者の兵衛が真の三悪人なのでは? と思えてくる。

 次回は『赤ひげ』。3時間の超大作をさて、見るか見まいか、たぶん見る。

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