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縁の下には超力持ち・拳と拳銃の映画史

 たまの休み、というぐらいに今月は夜勤スケジュールがキツキツで、ようやくまるまる一日休みができました。という、もはや作家職よりも介護職の方が濃厚となってきている日常を、淡々と過ごしている次第でございますよ。

 さて、たまのお休みなので、映画に行こう。見たい映画は上映館数が極端に少ないので、時間を合わせて梯子しよう。なんとか時間が合うのは、朝イチの上映か、ならこの時間、駐輪場も空いてないし、行って満車だったらどうする? それに寒い。では電車でいくか、等々、あれこれ道筋を考えるのも楽しいのです。そして通勤ラッシュが少し落ち着いた時間、朝ドラを見ずに家を出て、難波に向かいました。

 まずは『モリコーネ映画が恋した音楽家』を。本人と関係者の証言で綴る、あの偉大な映画音楽家、エンニオ・モリコーネの人生。音楽を始めたきっかけから始まり、様々な映画監督との出会い、創作秘話が次々と披露される構成。大阪のシネコンの大スクリーンに展開される、マカロニウエスタン名場面の数々に、大満足でした。そういえば、難波の地下のレコード屋でモリコーネやマカロニ関連のCD買ったなぁ、とか昔のことを思い出してしまいました。輸入CDといえば原題(英語かイタリア語)で表記されているので、曲は知っていてもそれが何の映画の曲かわからず、今回映画を観て『あ、これがあの曲だったのか!』と気付くことも多くありました。もちろんマカロニだけでなく、モリコーネの膨大な作品の中から、代表的な作品の映像が名曲と共に映し出されるのもこの映画の見どころ。個人的には『物体X』『エクソシスト2』『レッドソニア』等々の『なんで引き受けたの?』な仕事のことも知りたかったですね。マカロニ時代から来る者は拒まず、の精神だったかも。キューブリックとレオーネに挟まれる、まるで『続夕陽のガンマン』の三すくみ状態のエピソードに驚き、アカデミー名誉賞をもらい、プレゼンターのイーストウッドと並ぶ姿に売るッと来そうになりました。そしてついにアカデミー賞を受賞したのは、ファン代表のようなタランティーノの作品、というのもまた面白い。

 音と映像で堪能するマカロニ、いやモリコーネ世界を堪能し、難波から徒歩で心斎橋へ。飲食店が多いからか、昼間でも堂々と大きなネズミが走っており、自らを隠すようなことをせず、すっと、とあるお店に入っていきました。お店の人のリアクションが見たかった。

 心斎橋パルコ、普段はゴジラショップぐらいしか用のないここの12階、シアタス心斎橋で『カンフースタントマン』を。

  最近できた映画館であり、感染対策を徹底流しているため、極力人力を使わず、シートもパーテーションにテーブル付きと、両隣を気にせず映画を楽しめる。

 『カンフースタントマン』も『モリコーネ』と同じく、いわゆる映画の裏方さんに焦点を当ててたドキュメンタリー。70年代から現代、京劇から映画へという、時代の変遷を追っていき、ブルースリー、ジャッキーチェン、サモハン、ジェットリー、ドニーイェンといった功夫スターを輩出する中で、危険なアクションに挑んでいったスタントマンたちの姿を描くもの。

 80年代の全盛期から40年、時代は変わり、大手制作会社は今はなく、映画の需要も、そしてスタントマンも少なくなってきた現在の香港映画界。本土中国の映画界が活気づいてきている中、それでも若手を育て、次世代に繋いでいくスタント職人たち。ただただ功夫映画名場面の数珠繋ぎだけでない、映画に命を懸けてきた人間たちの悲喜交々が見えてくる作品。とはいえ、劇中に挿入される数々のデンジャラスなスタントは今見ても驚愕されっぱなしであります。ほとんど事故映像じゃないか、と思うものもありました。NOとは言えないスタント稼業、それでも楽しいんですと笑顔で語る人もいれば、生命の危険を感じたり、不況の波にのまれ転身していったもの、それぞれの人生がさらりと描かれていました。大変なのはどこの業界も一緒だな。

 音楽とスタント、映画にまつわる職人たちの伝説を見て、満足な休日。帰りに心斎橋の逆襲ゴジラの挨拶をして地下鉄へ。

 なんばではマジンガーZにも出会えたし、好きなものしか見ない休日でした。

そして帰宅すれば、購入した『究極のマカロニウエスタン』CDが届いていたという偶然。たまの休みは充実しすぎた。


 

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