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◎百足の草鞋/終局!京都戦車革命編(最終回)

 チャールズブロンソンのそっくりさんと本物を続けて見た2020年2月。その月の超大2020は『獣人雪男』『大怪獣バラン』の山奥に住む怪獣2本立て。それに合わせるように年末オールナイトで好評を博した『狭霧の國』が一週間限定ロードショー。公開記念に佐藤大介監督と造形の村瀬継蔵氏の舞台挨拶がありました。今回はその舞台挨拶の聞き手をやらせていただいたのです。

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『狭霧の國』上映後の舞台挨拶。今回は上映中の映画ということもあり、トーク内容はどんどん拡散していくという、いつものとは逆のパターン。佐藤監督がなぜ制作へ至ったか、人形特撮『サンダーバード』の国イギリスへ渡った佐藤監督が人形怪獣映画を作るのも何かの縁か。怪獣映画の中のリアルさ、を思い求めて人形劇にした、という話も興味深い。監督は怪獣ネブラの頭部をもって登壇。土砂や流木が堆積された表面、日本の怪獣はなぜか表面がつるつるして奇麗という疑問に対してのアンサーらしい。キンゴジの尻尾、とげゲルゲの背面、そして実現できなかったものの、チタノザウルスの頚部構造を兼ね備えたネブラは村瀬造形の集大成といった怪獣。バランの表皮を落花生の殻、トゲトゲをビニールホースで表現、村瀬さんのお話に出てくる『オヤジさん』が円谷英二監督のことで、ああ今歴史の生き証人とお話してるんだと思うとなんだかぞくぞくしてきました。
 ビニールホースのトゲトゲはのちに『小さき勇者たちガメラ』のジーダスでも再使用、と佐藤監督。ちなみにウルトラマンAのベロクロンのヒダヒダもビニールホースとのこと。バキシムはでかすぎて攻防の壁を壊して搬出したとか。本編でも空を割って登場したけど、リアルでも壁を壊してた!

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 そして『大怪獣バラン』『獣人雪男』上映へ。バランは後半からこっそりのぞく。東京進出を夢見るのは地方の芸人も、怪獣も同じこと。海底に眠るバランに機雷攻撃を浴びせる自衛隊。バランはそれでも倒れず羽田空港へのクライマックスへ。徹底した人間VS怪獣の攻防戦。バランはただ静かに暮らしていたかったのに、人間が、文明がそれを妨げた。鬼面の竜というべき荒ぶる神も、人類の英知には勝てなかった……と思うんだけど、あのラストでは完全に死んだとも言い切れない。流用フィルムが多いのは、もともとアメリカのテレビシリーズとして注文されていたからかな。

 『獣人雪男』も同じことで、バランよりも密接に地元民と平和に共生していたはずなのに、そこを文明人が余計なことをしたから……。日本にもまだ秘境があったといわれる時代、サンカや山の民の伝承にヒマラヤの雪男というタイムリーな話題をくっつけ、香山滋の太鼓へのロマンを振りかけた作品。怪物(神)の怒りの矛先はいつも手近にある集落で、文明人は『ひどい目に遭った』と都会に戻れるからいい気なものですよ。ゴジラ、アンギラスに続く東宝第三の怪獣、このまま埋もれさせるには惜しい作品です。(ブログより)

 山の怪獣大会も終わり、いつもなら帰宅、ということになるのですが、その日はちょっと違いました。先日の『続荒野の用心棒』が好評だったからか、なんと『豹/ジャガー』『殺しが静かにやってくる』の、セルジオ・コルブッチ監督オールナイトが急遽決まったのです。こんなチャンスは二度とないぞ、とみなみ会館に居残り。その裏では、これまた大好評のロシア製戦争映画『T-34』オールナイトも。こちらは通常版、完全版、応援上映と、ほぼ同じ映画を三回も回すという狂った企画。戦争映画とマカロニ、本当に21世紀なのか? という組み合わせのオールナイト。怪獣以外にこういうタガの外れたことをしてくれるからみなみ会館が好きなのです。

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 『豹/ジャガー』はメキシコ革命を舞台に武器商人と革命家の呉越同舟を描く活劇。メキシコ革命だし、飛行機や自動車が登場しているころだから純粋なウエスタンではない、でも派手だからいいのだ。金で結んだ関係がいつしか友情に変わっていく、そんなマカロニ浪花節。回想形式で物語が進んでいき、ラストへとつながっていく構成。しかし、マカロニでは派手さ重視のためか、善悪の判別がしにくい混沌とした情勢だったからか、メキシコ革命が舞台になることが多い。メキシコ革命で男二人の友情物語といえば後に『夕陽のギャングたち』でもレオーネが取り上げるネタでもあるけど、コルブッチのほうが早かった。歴史には疎いので要調査だけど、メキシコ革命っていつまで続いていたたのか? サントラはご陽気なバカロフとドスのきいたモリコーネの両方が楽しめる。


『殺しが静かにやってくる』は勧善懲悪ならぬ勧悪懲悪がまかり通るマカロニ世界においてもかなりの異色作。だって主人公が殺されるから。でも、これが微妙なところで、最後に生き残るのが賞金稼ぎだからこれはこれでマカロニのセオリーに乗っ取っていると思う。主人公こそが賞金稼ぎ殺しの悪漢だったのか、いつもは虫けらのように殺される賞金首にもそれぞれ事情があるんだよ、というところを掘り下げると異様な作品が生まれた、という感じで何度見てももやもやしてしまう。雪景色とモリコーネの楽曲が美しく、主人公サイレンスの持つモーゼルがかっこいい作品。
 
 最後に『続荒野の用心棒』。西部劇というアメリカ独自の文化をイタリアで咀嚼したら、ルックスとガンファイトしか残らなかった。あとはそれをいかに調理するかがマカロニ職人の腕の見せ所。『荒野の用心棒』に似せつつも、棺桶を引きずる主人公にあの主題歌をかぶせた時点でこの作品は完全なるオリジナルといえる。文字通りの泥臭さと奇抜さ、マカロニの下地を作ったのはこの作品かもしれない。まったく無関係な振りしてるけど、棺桶が重要なアイテムになるのは本家黒澤の『用心棒』を意識したからなのか。前半のジャクソン編&機関銃で魅力を出し切っている感があり、後半のウーゴ編はまるで別の作品のようでもあるし、若干もたついてる感じもある。ジャンゴ、棺桶にこだわりすぎ。それでも、クライマックスの墓場の決闘は燃えるし、ジャンゴもようやく本懐を遂げることができたのでありました。(ブログより)

 オールナイトが終わり、朝風呂浴びてフラフラの状態で、ガイドヘルパーの仕事に向かいました。

 そして来月はウルトラマンダイナイベントが京都、大阪で! のはずが……新型コロナウィルスの影響で延期。さらにはその月の目玉になっていたはずの、東京と京都で行われる予定の平成ガメラ降臨祭も……。

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 しかし、ガメラ降臨祭の前に行われる超大怪獣2020は通常通り上映されることに。今月は『戦国自衛隊』。角川映画である。怪獣も出ないし特撮もほんの少ししかないけど、これはこれでSF大作、意表を突くラインナップだ。
 演習中の自衛隊が戦国時代にタイムスリップ、そこで意気投合した武将と天下統一を目指す、という荒唐無稽な話である。いや、荒唐無稽だからいいのだ。騎馬兵と戦車、ヘリが同一画面に収まる異様なかっこよさ。淡々とした原作と違い、映画では自衛隊員一人一人の心情にスポットを当てた青春映画のテイスト。だから無駄、と思うカットやシーンも少なくない。でもそれが当時の日本映画、角川映画のやり方なのだな、と思う。単なる痛快な映画に終わらせず、どこかしんみりとした印象を見る者に与えてしまう。クライマックスの川中島の合戦で勝ったのは自衛隊ではなく、千葉真一だったんだ、と再確認。

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 上映前にはいつもより長めの前説で注意喚起。今、これが必要であり、大事なのだ。

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 その翌日も再び京都へ。
 『T-34レジェンドオブウォー・ダイナミック完全版』を見る。奇しくも裏では『戦国自衛隊』上映中で、戦車映画が並んだことになる。前々から評判の映画で、中毒者続出、みなみ会館では一晩これしか流さないオールナイトを敢行(その日は裏のコルブッチナイトを見ていた)するほどである。ロシア発の戦車映画がなぜそこまで人を惹きつけるのか、『内臓千切れろ』とは? キャベツの重要性は? 


 物語は第二次大戦のドイツ。ソ連軍捕虜を使って戦車の演習を行おうとするものの、捕虜たちは戦車を奪って逃走、ドイツ軍との追跡とバトルが始まるのだった。T34とは主人公たちが乗りこむソ連の戦車の名称。冒頭の長い時間を使ってのドイツⅢ型戦車とT34の一対一のバトルで、その性能を見せつけ、後半はその後継機を奪取して主人公たちが逃げる。ガンダムMARKⅡからZガンダムに乗り換えたようなものか。戦車による逃走劇というシンプルなないように、CGを駆使した外連味たっぷりの戦車対決。まるで戦車たちも俳優の一人であるかのように動き回る。このばかばかしい派手さこそ魅力なのだな、と確信。少数で大軍勢を向こうに回すのも、敵中突破ものも見るものを熱くさせる。
 ラストは因縁のライバルとのタイマン対決というのも実にシンプル。この時逃げていたソ連軍はのちにドイツに攻め込むんだな、と数日前に見た『ジョジョ・ラビット』をおもいだす。
 ちなみに『内臓千切れろ』は主人公がライバルにはなった台詞(ロシア語とドイツ語で、会話は通じないのもリアル)。キャベツは逃走中の主人公たちが奪った食糧。よくそれをピックアップしてオールナイトの目玉にしたな、みなみ会館。帰りにキャベツ多めのパスタを食べる

 61式が足軽を蹴散らし、T34がドイツの市街地を爆走する、戦車まみれの週末だった。Tシャツ買えばよかった。(ブログより)

 そしてしばらくして次々と全国の映画館が休館、4月に入ってみなみ会館も休館。ブログによれば最後に見たのは3月18日にMOVIX八尾で見た三池崇史監督『初恋』。それから新世界東映で『第三次世界大戦・48時間の恐怖』を見たのが2か月後。まだまだコロナは殲滅したわけではなく、感染の恐怖と隣り合わせの日々が続きますが、それでも少しずつ日常が戻っていくようです。関西では昨日越境自粛要請が解除されました。またみなみ会館に行ける。そして、休館前に告知だけされた『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウエスト(ウエスタン)』も公開されます。早くあの決闘を再び、みなみ会館の抜群の音響で見てみたい。そして超大2020も再開します。また新聞書かないと。日常が徐々に戻ってきます、映画も怪獣も戻ってきます。

 と、いうことで4月から始まったこの振り返り作業も今回でおしまいです。決して多くはないですが、色んな人に見てもらえたかと思います。大阪の兼業作家のどうでもいい話にお付き合いくださり、ありがとうございます。もし、京都に行くことがあれば、ぜひみなみ会館へ。そこに私はいませんが。

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