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何かが空を飛んでいた、ような

 数か月前から、気になる予告編があった。牧場、ふわふわ揺れるくねくね人形(チューブガイ)、陽気な序盤から徐々に不穏な空気が漂い出して、そしてみんな空を見上げて、にげて行く。

 これはただのホラーじゃないぞ、空から何が来るんだろう、そんな映画『NOPE/ノープ』がついに公開された。

 急死した父の跡を継いで動物プロダクションを経営する男。しかし、動物の出番はCGにとってかわられ、やむを得ず馬を近所のテーマパークに売ることになる。父は空から落ちてきたコインが刺さって死んだ。そんなことってある。それよりも、牧場の上空をなにかが飛んでるぞ、ホームセンターで監視カメラを買って調べよう、ひょっとしたら特ダネが撮れるかもしれない、それを売って大儲けできるかもしれないぞ!

 


以下、内容に触れてます、たぶん。


 
 『NOPE/ノープ』は久しぶりに現れた『喋りたいけど話せない内容の映画』だった。とんでもないものを見ちゃった、という感じである。

 ものすごく簡単に言えば『ハリウッド版恐怖の円盤生物シリーズ』だった。そう、ウルトラマンレオのあれである。

 空飛ぶ円盤、ひょっとして宇宙人の乗り物と思われたそれは、普段は雲に隠れており、空腹になると地上のものを食い散らかす。ジョーズ、トレマーズに並ぶ、捕食怪生物だった。それがなぜ生まれたのか、なぜそこにいるのか、の説明はない。それがまたミステリアスである。主人公たちは何でもいいから、こいつが存在するという決定的瞬間を撮影して売り込みたいのだ。結果的に退治する形になるものの、最後まで怪物の特ダネを追う登場人物というのも珍しい。

 ジョーダン・ピール監督はエヴァの使徒からインスパイアを受けたと言っているそうだが、絶対レオの円盤生物である。このバケモノをショーの目玉にしていたテーマパークの主催が『来いー』といったらやってくるんだから、絶対円盤生物である。

 映画の歴史やら、放送中のアクシデントといった要素をちりばめつつ、かしこぶっているけど、『恐怖の円盤生物』じゃないの、とにかくえらいものを見た。今年はこれにバカに振り切った『シャドウ・イン・クラウド』とか、そらの怪物映画の当たり年かも。そうえいば年末には『ラドン』の4Kもあるし、大ヒット中の『トップガン・マーヴェリック』もバケモノみたいなオッサンが空を飛ぶ映画である。

 『未知との遭遇』かと思ったら『ジョーズ』だった。怪獣好きにはうれしい不意打ち、とにかくえらいものを見た、という感じでした。

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