シルヴェストロフについて

初めてシルヴェストロフの音楽を知ったのは、もう10年以上前かなぁ…アファナシエフの京都でのドキュメンタリー番組を見たのがきっかけだったと思います。京都のお寺でアファナシエフがシルヴェストロフの作品を弾いていて、なんて美しい音楽なんだと息を呑んだ記憶があります。そのとき彼が弾いてたのがオーラルミュージック第1番という作品。(ツイッターに一部演奏アップしました。noteは動画アップできないのかな…?)

所謂、難解な現代音楽とは一線を画す、なんとも静謐で味わい深い音楽だと思います。
当時の僕は今と違ってリゲティもクセナキスも弾いたことなかったし現代音楽のことはほとんど知らなかったけど、シルヴェストロフのキャッチーだけど決して大衆的なわけでなく、深い精神性を感じるその音楽にとても魅了され、その後すぐに楽譜を買いました。

当時僕の愛知の師匠ヴァディム・サハロフ先生はアファナシエフと同時期にモスクワ音楽院で学んだロシア人ピアニスト。先生はもしかしてシルヴェストロフ知ってるかなと思い楽譜を持ってレッスンに行ったところ、もちろん知っていてとてもテンション上がって楽譜を読み、これ良い曲だよ〜といろいろ教えてくれました。シルヴェストロフはウクライナ人ですが、その世代の旧ソ連の人々にとってとても大切な作曲家なようです。

シルヴェストロフの楽譜の特徴は、このようになかなかテンポ、リズムの表記が複雑で細かいことです。聴いてるだけだとなかなかわかりませんよね。


当時僕はレッスンに“ノスタルジア”という作品(リサイタルで弾きます)を持っていき、この細かい指示をできるだけ守るように楽譜をよく見ながら弾いたところ、「そんな細かいことはどうでもいい。難しいこと考えなくていいから、とにかく心の底から歌うんだ」というようなことを言われたことをよく覚えています。本当にどうでもいいわけではないと思いますが笑、テクニックでなく、純粋に心から自然と湧き上がるものを大切にして、作曲家自身から出てきた歌の“結果”がその細かい表記なのでしょう。当時のソ連の人々の精神性、慰め、理想などなど…をなんの虚飾もなく素直を吐露した音楽がその歌なのではないでしょうか。

アファナシエフはドキュメンタリーの中で、シルヴェストロフとシューベルトが精神的にとても繋がっていて、共通点を感じる、とのようなことを述べていましたが、確かにその静謐な中に広がる純粋な心からのメロディには、まさにそのような共通点を感じます。

あの番組とても良かったからまた観たいんだけど…ネットにないかなぁ。どなたか見つけたら教えて下さい。

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