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2類感染症か、5類感染症か・・・

新型コロナウィルス感染症の新規感染者の爆増に伴い、
毎度必ず起こる議論があります。
それは「感染症法の分類について」
今回の第7波でも随所で論じられています。

「今の医療の混乱は、5類にすれば全て解決!」
なんていう記事やコメントを目にします。
自分がヴォルデモート認定している医師も口にしています。
果たしてそうなんでしょうか・・・

1.2類・5類の違い

2類感染症と5類感染症はどこが違うのでしょうか。
感染症法における重要度の分類で、2類の代表的な疾患には結核、5類の代表的なものには季節性インフルエンザがあります。

2類感染症
・全例、直ちに届け出
・法に基づく入院勧告・就業制限ができる
・医療費が公費になる
・基本、指定医療機関で診療

5類感染症
・全例~定点で、直ちに~7日以内に届け出
・医療費は自己負担
・多くの医療機関で診療、一般病床に入院

現在は2類相当ということで直ちに全例報告、一部の医療機関でのみ診療しています。
もし5類にすると、全例の把握が必要なくなり、多くの医療機関で診療できることがメリットとして挙げられています。
結果保健所の仕事量も減り、コロナに多くの病院・病床を利用できるようになります。
ですが、そんなに上手くはいくでしょうか・・・

2.5類に移行すると・・・

2-1.感染対策のできない医院での診療は危険

2020年から始まったコロナの診療ですか、コロナの患者と一般の患者が接することがないように、動線を別にすること、または時間帯を別にすることが求められました。
結果多くの一般のクリニックは、コロナの診療に関わることが出来なくなりました。

ではそんなクリニックが5類になったからと言って、すぐにコロナを普通に診療出来るのでしょうか。

病院の待合室にコロナ患者であふれると、高齢者が危険です!

5類になっても、ウィルス自体が変わる訳ではありません。
街中のクリニックがコロナで溢れかえったら、そこでクラスターが起こる事は確実です。
高齢者は怖くてクリニックを受診できなくなります。

そう考えると、5類になったからといってコロナの診療をするクリニックが増える事はないと思います。

2-2.一般病床に入院も困難

5類に運用変更しても、ウィルス自体が変わる訳ではありません。
入院しているような高齢者が感染したら数%死にます。
院内感染をおこすわけにはいきません。

そして5類感染症でも、感染症法にない感染症でも、病院は感染対策を講じてベッドの運用をしています。
例えば5類のインフルエンザは個室隔離でアルコール消毒。
感染症法にない疥癬は個室隔離、ガウン&手袋で対応。
同じく感染症法にない偽膜性腸炎は、おむつ交換時にカーテン隔離&グルタルアルデヒドで消毒。

法規制に関わらず、我々は院内感染を防ぐ努力をしています。
オミクロンの感染力を考慮すると、全ての一般病床をコロナに転用するのは危険かつ困難です。
法的にはコロナ患者をどこの病室にも入院させる事ができますが、現実的には今の状況と変わることはないと思います。

2-3.医療費は高騰する

2類は医療費が国の負担となりますが、5類は通常の保険診療となります。
あまり知られていないのが、コロナの薬の値段の高さです。

1人あたりに使う薬の量で計算すると、
抗体製剤のゼビュディやロナプリーブは20万円弱。
抗ウィルス薬のラゲブリオやパキロビッドパックは10万円弱。
抗ウィルス薬のベクルリーは30万円以上します。

昨年夏から秋、コロナの治療薬が続々と登場して世の中は歓喜しました。
高額な薬ですが、2類感染症相当のため自己負担な使用できました。

ですが5類になると基本的に1-3割の自己負担金が生じます。
結果、検査して抗ウィルス薬をもらって帰るだけで4万円!とかしてしまうかもしれません。

3.結局どう考える

医療現場では「5類にしろ!」などという人はみかけません。
おそらく5類にしても、外来の対応、入院ベッドの運用はほとんどかわりません。
我々は感染症法の法律のためではなく、病院を少しでも安心して受診してもらうこと、院内感染を防ぐことを目標に仕事をしています。
何トカ法が2から5になっても、その目標は変わりません。

変わるのはコロナの診療のお金が高くなること、保健所の仕事量が若干減ることくらいでしょうか。
「5類感染症にすれば全て解決!!」
そんなことは断じてありません!!
「大して変わらないし、ドッチでもいいよ!!」
とも思っています。

4.厚生労働省アドバイザリーボードより

8月3日に専門家有志の会から、段階的な感染対策の緩和、保険医療体制の移行の提言が公開されています。

はっきりと2類、5類との記載はありませんが、
・医療対応 ・保健所・行政対応 ・感染状況の把握 ・高齢福祉施設対応
・インバウンド対応
の5項目について、社会の受け止め方を見ながら段階的に緩和してゆく案が示されています。

第93回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード:専門家有志の会の提言より

今、感染が爆発しています。
そして今後、ケンタウロスが来ても重症化は少ないのか、
冬のツインデミックを前に制度を一気に緩和してよいのか、
様々な事を調べ、考え、慎重に段階的に規制を緩和すること。
そんな柔軟な対応が求められているのだと思います。


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