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    つぼみと、落ち合ったのは、空が、オレンジ色に染まる、夕暮れ時だった。二人が、揃うのを、見ていたかのように、一匹の猫が、現れた。
「こんばんは。拙者は、ミケと申します。未来からきた、旅の案内人です。これから、あなたたちを、時空の世界へと、導きいたします。」
    キョトンとした僕らを、気にもとめず、猫は、話を進める。
「もう、すでに、分かっていることですが、拙者が来たことで、多少なりとも、現実に歪みが、生じています。それを、最小限に抑えるため、これから、お二人に起きることを、申し上げることは、できません。」
    世界が、まるで、ひっくり返ったように、音の強弱を、見失ったみたいに、バグを起こしている。あっけにとられる僕を、横目に、つぼみは、すべての、事の成り立ちを理解したみたいに、その猫に、話しかける。
「はじめまして、ミケさん。あなたは、少し痩せているように、見えるわ。生命力のない生き物みたい。なにか、食事をしたら、どうかしら。」
「お気遣い、ありがとうございます。実は、長旅だったもので、ろくに、食べ物に、ありつけていないのです。」
「好物は、おありかしら。」
「やはり、なんといっても、キャットフードが、一番です。」
    近くのペットショップで、購入したものを、差し出すと、猫は、いっきに、それを、たいらげた。そうすると、満足したかのように、歩き出した。とりあえず、その後を、追うことにしよう。つぼみは、なんだか、嬉しそうに、
「未来の猫は、おしゃべりするのね。」
と冷静に話し、僕に、笑顔をみせた。

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