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NONA REEVES「SIDECAR」(1996年)ライナーノーツ

※この記事は2014年にリリースされたNONA REEVESの1stアルバム「SIDECAR」再発盤CDのライナーノーツを再掲したものです。アルバムのオリジナル音源は各ストリーミングサービスで聴くことができます。

「SIDECAR」は1996年12月13日にUNDER FLOWER / GIANT ROBOT RECORDSからリリースされた、NONA REEVESのインディーズ1stアルバム。

NONA REEVESの誕生は1995年5月、西寺郷太(Vo)が4トラックのMTRで「BIRD SONG / 自由の小鳥」のデモテープを制作したときにまでさかのぼる。当時早稲田大学の音楽サークルに入り、小松シゲル(Dr)や千ヶ崎学(B)らとバンドを始めた郷太だったが、活動をうまく軌道に乗せられずバンドは解散。新たな方向性を模索したのちに「自分が好きなグルーヴィなブラックミュージックをバンドスタイルで演奏する」というコンセプトを思いつき、自身のソロプロジェクトとして始めたのがNONA REEVESだった。

自信作「BIRD SONG」を完成させた郷太は、当時小松が深夜アルバイトをしていたファミリーマート早稲田夏目坂店にこの曲のデモテープを持っていき、一緒にバンドをやろうと誘う。音源を聴いた小松は「これまでの郷太の曲とまったく違う。すごい曲だ」と絶賛しNONA REEVESへの加入を即断。その後バンドは師岡忍(G)、小山晃一(B)、奥田健介(G, Key)を迎えた5人体制で、本格的なライブ活動をスタートさせることになる。

具体的なサウンドのスタイルとして採用されたのは、THE ISLEY BROTHERSのようなソウルナンバーを90年代の下北沢で通用するラウドなギターポップとして聴かせるという手法だった。この時期に彼らは「BIRD SONG EP」「SIDECAR EP」「MY LOVELY NONA EP」と題した3作のデモをカセットテープで各500本ずつ制作。その後GIANT ROBOT RECORDSと契約し、1996年の夏から白金台のスタジオファーストステップにて1stアルバム「SIDECAR」のレコーディングを開始した。

アナログ16chの機材を使ったアマチュアライクなレコーディングではあったが、多くのアイデアを詰め込んだこのアルバムはリリースされるやいなや高い評価を獲得。インディーズチャートを大いに賑わし、メジャーレーベルからのアプローチも呼び込む結果となった。「SOUL FRIEND」や「YOU ARE THE 'NO.NINE' OF LIFE」といった美しいメロディのポップチューンが聴き手の胸を躍らせる一方で、アルバムには「PAL」や「THE DOG」といった自由度の高いトラックも収められ、彼らのみずみずしい衝動と遊び心を同時に感じることができる(なお「THE GREAT STOMACH」は「MY LOVELY NONA」と「FREAKY」の間に一瞬入る電子音のこと)。

本作は1999年12月にボーナストラック収録の8cmシングルを同梱する形で再発され、2004年8月にはCRYSTAL CITYからもリイシューが行われている。

(大山卓也)
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※西寺郷太の自伝的小説「'90s ナインティーズ」文藝春秋digitalにて連載中
※「西寺郷太のPOP FOCUS」音楽ナタリーにて連載中

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