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思わぬ人生の落とし穴

思わぬ人生の落とし穴。
ドラマなどでよく聞く話だ。もちろんホントの落とし穴の事ではない。
ふとした隙に入り込む禍の事だ。
誰にでも一度はそんな経験があるだろう。
私も同様だが、こんな時は気をつけないと落とし穴に落ちてしまうぞと言う時がある。

それは「待ち」の時だ。

例えばパンツの裾直し、或いは機種変の手続きなどで、しばらくどこかで時間をつぶして再び来店してくれと言われる時がある。誰でも一度は経験した事があろう。
私はこの時に穴に落ちる事が良くあるのだ。

アキバのユニクロでスラックスを買い、裾直しの為に1時間どこかで時間を潰さなければならなくなった。そこで、献血をしようと思いついた。
それなら丁度1時間くらいで済むだろうと。
以前に何度も行ったことのあるアキバの献血センターは、かなり広々としていて快適だ。サブカルチャーの聖地であるアキバらしい、マンガやフィギュアが大量に置いてあるかなり特徴的な献血センターだ。私はどちらも興味がないが、たまに利用している。

この頃、コロナ禍で深刻な血液不足に陥っていた。センターでは、職員が外に出て「献血募集中!」のプラカードを掲げて協力を呼びかけていた。よく見る光景ではあるが。
そんな中ノコノコと献血しに来た訳だが、事前の血圧検査で脈拍がひっかかってしまった。
詳しい数値は忘れたが、上限を10ほど超えていた。
以前にも血圧が基準を超えていて献血せずに帰った事もあったので、仕方ないと帰ろうとしたら、職員に捕まった。
「待って下さい!とにかく落ち着いて。脈拍を落として下さい。落ち着いて」
歩いてきたから多少は脈が早まったかも知れないが、私はいたって落ち着いている。これ以上どうやって落ち着けと言うのか。
杓子定規なセンター職員は、脈拍が基準以下まで下がらないと献血はできないと言う。しかし献血させるまでは帰す気もなさそうだ。観念した私は時間をかけて何とか脈拍を落として献血するハメになった。建物を出たのは3時間後だった。危うくユニクロが閉まってしまうところだった。


akiba:F献血ルーム



その他にもある。
地元のサイクルショップで新しい自転車を買った時、手続きに30分ほどかからるからとまた「待ち」の時間ができた。
その店はオリンピックの1階にある店で、地下にペット売り場があった。
子供の頃から犬好きな私は必ず見に行くことにしている。
そこで、豆柴の子犬に私は心を奪われた。
ここまで一目惚れしたことはなかった。

5歳の頃から40年犬を飼ってきた。4匹の犬達と人生のほぼ同じ時間を過ごしたゴリゴリの犬派の私だ。しかし最後の犬を見送った後に、もう犬は飼わないと家族会議で決定された。
可愛いだけではない、日々の散歩一つとっても犬を飼うのは大変な事だと身をもって知っている。
命を預かる事の重大さ、それを失う事の痛みも嫌と言うほど経験してきた。

しかしそんな決意は目前の豆柴で吹き飛んでしまった。とにかくかわいいの一言。
それ以来その犬の事が頭の中の大半を占めるようになった。家族の反対を押し切って現金を用意していつでも買えるように準備をしていた。
完全にイカれていたと今は思う。

しかしその頃、他の用事でバタついており、どうしても犬の事が後回しになってしまい、3度目に店に見に行った時には既に引き取り手が見つかったと札が貼ってあった。
その向こうで気持ちよさそうに眠る子犬に
「良かったね。幸せになるんだよ」と勝手に念を送ってその場を去った。
寂しいような、反面ホッとした様な安堵感が胸を去来したのを覚えている。

危うく3万の自転車の為に、その10倍の出費をする所だった。
用意した金を元に戻すのも癪なので4年ぶりにスマホを買い替えてやった。


そして、つい最近の事だ。
老眼鏡を買いに近所の駅ビルのJINSに向かった。
フレームを選び、レンズの調整をしてまた30分ほど「待ち」が出来た。
流石に私も学習している。幸いにもこの建物にはペットショップも献血センターもない。しかしまた別の新たな穴が空いていないとも限らない。
とにかく派手に立ち回るのは控えてタリーズで時間を潰して無事にメガネを受け取って帰ろうとした。

ふと花屋の花が目についた。
最近、部屋に花を飾ってみたいと思い立ったのだが、1人で自分用の花を買い、そしてその花束を抱えて帰ると言うのがかなりハードルが高くて躊躇していた。
単に照れ臭いだけなのだが。

しかし、思い切って店員に声をかけてカーネーション3本とひまわりを買った。
「ご贈答用ですか?」と聞かれて「、、、自分用です、、、」と絞り出す様に答えて逃げる様に店を去った。

ここまで照れ臭い経験も久しぶりだ。
その花達は今私の殺風景な部屋に彩りを添えてくれている。

わたしはまた新たな穴に知らずのうちにハマったのかも知れない。





















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