浜松漫才グランプリ 2024レポ

どうも、増田拓斗です。
帰省する度に「帰省したならここは行きたい!」ってなるラーメン屋が増え続けた結果、長期連休はラーメン屋巡りに必死になって終わることが増えてきた男です。

前書き

浜松漫才グランプリ前に食べた、ラーメン三太のみそラーメン


さて、浜松漫才グランプリ2024の本戦を観て参りました。
(ちなみに私はダディダディドゥで出場し動画審査落ちしています)
お世話になっている先輩から、失礼ながら初めて拝見した方まで、それぞれに魅力があり大変勉強になりましたので、レポらせていただこうかと思った次第です。
レポの度に書いてる気がしますが、下っ端社会人芸人のど素人分析が入っていますので、もし読んでご不快になられた出演者の方等いらっしゃいましたらご連絡ください。速攻消します。

本戦

1組目 ワカドリさん

名古屋で、いつも私の先を走り続けておられるイメージの先輩です。
普段から感じているワカドリさんの魅力といえば、『雑に見せる緻密さ』です。
一見、仲の良い2人がざっくばらんに話をしているような雰囲気を纏っている。けれどもネタの内容は、観る側の想定の外側を常に踏み続けるような、意外性に裏付けられた確実にウケを取るネタ。
これって、王道にネタをやり抜くことよりもある意味では難しいことなんじゃないかと思います。

そして、今回の浜松漫才グランプリ本戦。
トップバッターということで、本ネタに入るまでの時間を長めに取ったり、盛り上げに特化した営業よりの始め方をしてらっしゃいました。
先述したように、雑談の雰囲気を纏うワカドリさんの強みに繋げる上では、これは逆風となるはずです。
しかし本番、そうはなっていなかった。
正直、どんな工夫があったかまでを読み取る観察眼はありませんでしたが、これは路上漫才含めて、とにかく色んな舞台を踏み続けてきたワカドリさんだからこそできたことなのではないかと思っています。
もちろん本ネタも、先述した魅力がたっぷり詰まった、意外性とくだらなさを両立したネタで磐石のウケでした。
若手に分類される芸人さんとは思えない見事なトップバッターでした。

2組目 空飛ぶリビングさん

空飛ぶリビングさんはなんだかんだレポるのが3回目になります。
私のレポ最多出演になります。
(私にもっと名声があればお二人の名前を売るのにも繋がれたのに……申し訳ないです……。)

今回は、お二人共にキャラが入ったオタク漫才を披露されていました。
まず第一に、抜群に見やすい。
『こんな漫才をするんだ』とお客さんに理解させる速度は、今回の本戦で最速だったのではないかと思います。
まだボケていなくてもウケるキャラのクセ。絶対に上書きできない強烈なインパクト。
これは、賞レースでライバルとした時にはとても嫌な要素です。
そして、4分の尺とお二人の芸の幅を活かした、キャラをフリにしての裏切り。
他の誰にも真似させない、印象を上書きさせない、空飛ぶリビングさんらしい色の濃い漫才でした。

3組目 三ツ星サウナさん

ここでは語りきれないくらい、名古屋でアツく接してくださる社会人芸人さん。
進出が発表されたときは、自分事のように嬉しかったのと同時に、かなりの焦りを覚えたのを記憶しています。

今回は、今まで拝見したことのある2分ネタに加え、それに向けた助走となるツカミボケを加えた4分間でした。
まず第一に言えるのは、とにかく分かりやすい。
視覚で、聴覚で、しっかりと伝わってくる。
慣れてくると逆におざなりになってしまいがちな基礎が固まっていて、それが魅力の1つのなるほどに磨かれていました。
しかしながら、分かりやすさと引き換えに失われがちなネタのパワーも、決して減少していませんでした。
アイディアの凝り方と分かりやすさのバランスを、この芸歴でここまで掴んでいる。恐ろしいことです。
今後も漫才で戦わせていただくことも多かろうと思いますが、三ツ星さんが大切にされているものを忘れずに四鬼夜行も稽古せねばと思いました。
マケヘンデ。

4組目 ハイプライドさん

これは2本目にも共通して言えることですが、まずフォーマットの見事さに度肝を抜かれました。
まず、フォーマットなのに入りがフォーマットに聞こえないすごさ。自然に会話として入って、気づけばフォーマットの中にお客さんがいる。これは、フォーマット漫才の中で欠かされがちな要素だと思いました。

1本目で特に感じたのは、初めての人を置いていかず、けれども最後に最大瞬間風速を出力するペース管理の見事さ。
フォーマット漫才を練習すればするほど削ぎ落とされがちなお客さんへの配慮を忘れることなく、けれども笑いを減らさずに削ぎ落とせるギリギリを攻めるこの塩梅。
抜群に器用な漫才でした。

5組目 佐藤兄弟さん

浜松漫才グランプリ3年連続本戦出場の常連芸人さんです。
佐藤兄弟さんの第一の魅力は、パワーに尽きると思います。見た目が面白い。声量が面白い。会話の噛み合わなさも面白い。これらが合わさって、客席へと伝えられるお二人の圧。空気。とにかく吸引力の強いお二人です。

そして、今年のネタで感じた大きな魅力。それは、『当たり前を100%で届ける力』です。
兄弟コンビならばなおさら、お二人にとっての面白さが当たり前のことになってしまいがちなはず。けれども、お二人それぞれの魅力をしっかりと客観視して、それを初めて知った時のリアクションそのまま、100%のパワーで客席へと伝える客観力、演技力。そしてそのリアクションを取ることを不自然に思わせない細やかな言い回しの工夫。
パワーの奥に隠れた繊細さを兼ね備えた、とても仕上がった漫才でした。

6組目 アホロートルさん

東京進出された、名古屋の大御所先輩。余談ですが、母がめちゃくちゃファンでサインを欲しがっていました。
やはり見る度に見事だと感じさせられるのは、確立された『アホロートルさんの呼吸』。
緩さを纏った楽しそうなボケと柔らかなツッコミ。それでありながら、くだらなさとワードセンスで交互に揺さぶられるようなネタ。

無邪気に聞かせる声質と、そのネタをその場で思いついてツッコミのリアクションで遊ぶような表情で、お客さんを舞台側の世界へと引き込む安田さんのボケ。
そして、緩いツッコミで失われがちな笑いどころの風速を、イントネーションなどの緻密な調整で作り出す林さんのツッコミ。
双方の個々の技術とコンビの技術が詰まった、最高にアホロートルさんらしい漫才でした。

7組目 なにわプラッチックさん

まず感じたのは、『漫才らしさ』。
漫才協会に所属されていると聞いてすごく納得しました。
安心して見られるお二人の落ち着き。一言では訂正しきれないけれど、どこが間違っているかは分かるボケのバランス。話が一つ一つ前へと進んでいるのを認識させ、お客さんを漫才の世界と集中させるツッコミ。

そこまでのバチバチした空気を、寄席らしい空気に塗り替える場数を感じました。

8組目 周遊さん

見終わった後に感じたのは、後半に向けての加速のすごさ。
決勝進出されていましたが、最初から撒いた笑いの種を後半で育てて一気に咲かせる秀逸さで笑いをもぎ取っていく構成の見事さを感じました。

設定も秀逸。
似合う役・似合わない役のメリット・デメリットをそれぞれ見越した上で、お二人のニンを客観視して、適切に役をはめて笑いに繋がる見応えを生み出していく。
それらが連鎖していく、もはや見ていて気持ち良いぐらいの漫才でした。

9組目 サツキさん

出てきた瞬間から、「お?何か面白そうだぞ?」と思わせる、強い強いキャラの所作。そしていい声。教祖の風格を感じさせる堂々とした喋り。
こういったキャラって、少し油断するとすぐにボロが出て、一気に笑いの量が変わってしまうんです。その緊張感の中で、少しの隙も見せず、この世界に存在しないはずの人間がそこにいるかのように見せる憑依力。
そのキャラのフリが強烈に効くからこそ、文字で書けば単純に思えるようなボケでも、その笑いが何倍にも増幅される。

非日常の空間の中で、ムネタさんの掌の上で踊らされているような感覚。
漫才としての面白さだけでなく、一舞台芸術としての作品性も高いネタ。
主にムネタさんを褒めるだけでこの文章量になってしまったので、のりやさんについては2本目のレポで言及したいと思います。

10組目 ザ★ギャランドゥーさん

出てきた瞬間からネタが始まるムダの無さ。
ギチギチに詰め込まれた、ベタだけれどもお二人の体に染み付いているであろうボケの数々の応酬。

お客さんの完全な理解も待たないまま、嵐のように笑いを叩き込まれる。
それを許す王道のボケとツッコミのキャラ付け。
昭和センスのボケながら、お客さんを昭和側に引き戻す荒業と、それを成し遂げる腕。
ベテランならではの良さが存分に詰まった漫才でした。

11組目 インザパークさん

前年度王者。
昨年の破天荒漫才とはまた一味違った、パワフルなコント漫才。
熱量のあるボケに対して、敢えて着いて行ききらずに、徹底したお客さん目線を貫くツッコミのバランスが絶妙でした。
ボケツッコミのバランスが違うと、ツッコミだけがお客さんを置いて行って冷笑しているだけになりがちなのですが、そうさせず、ボケの1歩後ろを歩き続ける台本と熱量の妙。

そして、「大きな声が面白い」とか、「変な顔が面白い」と言った、徹底した万人に分かる面白さと、それの対比となる少し哀愁漂うボケのハーモニー。
哀愁を漂わせすぎず、いい話にせずに全てを笑いに繋げる、前年度王者の風格ある漫才でした。

12組目 イクラボブチャンチャンさん

事務所に所属されたイクラボブチャンチャンさん。
ガーベラガーデンさんの春祭りで観させていただいたネタでしたが、回数を重ね、より呼吸がブラッシュアップされているように感じました。
特に、ツッコミの間が進化していました。

ボケ主体で笑いを取る所とツッコミ主体で笑いを取る所の間の使い分け。
お客さんの耳に、最も笑いに繋がるフレーズを1番高い割合で届ける技術。
今後も更に進化し続けられるのだろうなと思いました。

13組目 雪柳さん

名古屋でご一緒させていただいたり、声をかけてくださることもある優しい先輩。
今回が、解散前最後の漫才でした。
やはり最後の漫才だと知って見たことの影響もあるとは思いますが、やはり第一に感じたのは熱量。しかし、それだけではありませんでした。

平場の喋りがパワフルな小松さんが、しっかりとキャラに応じた喋りを使い分ける器用さ。
へちまさんの、一言一言をお客さんに確実に聞かせる、基礎を貫いて個性としたツッコミ。
きっとどちらの個性も、新たな場所で新しい輝き方を見せてくれるんだろうと思いました。
小松さん、へちまさん、お疲れ様でした。
お二人と新しい活動形態で共演できることを楽しみにしています。

14組目 ばりかんさん

浜松窓枠お笑いライブで、ピン時代からお世話になっている先輩。
お二人のネタでいつも驚かされるのは、「おじさんらしい面白さ」と、「今の笑いのセンス」の融合。

真ちゃんがバカなことをしているのをゴンさんが咎めているだけのように見えるとっつきやすさ。
けれどそれをしっかり聞くと、巧妙な言葉遊びや設定の面白さ、オチに向かっての展開を兼ね備えた巧妙な台本。
狭いお題や限られたストーリー展開の中で、いくつも美しい言葉遊びを見つけるお二人の語彙力、ユーモア。
パワーとセンスを使いこなす、お二人の貫禄を見せつけられました。

15組目 おーしゃんずさん

段々とウザさが加速していくボケと、それにお客さんと同じ熱量を保ちながら繊細にイラつくツッコミ。
一見 ボケがめちゃくちゃなことを言うだけかと思いきや、新たな情報の展開や例えを活かした、絶妙な説得力を保った4分間。

そして、天丼を基調とした展開ながらも、熱量の上昇をしっかり客席へと伝えるツッコミ。
もっと色んなネタで、色んな言い争いが見てみたいと思わされる漫才でした。

16組目 ドロシーさん

まず、見た目から分かりやすい関係性。
愛嬌があって、何度間違っても元気であろうボケと、ボケが元気だからこそ熱量を出せるツッコミ。
優しいボケと厳しいツッコミながらも、決してボケが可哀想には見えないような絶妙な言葉選び。

表情とジェスチャーとテンポを兼ね備えた、動きで見せるボケと、単純なリアクションツッコミとと説明ツッコミを差別化せずにこなすツッコミ。
とにかく見ていてこちらまで楽しくなってくる、パッと明るい漫才でした。

決勝

1組目 ばりかんさん

出番前に「ネタが覚えきれない」と言っていたのが嘘のような漫才でした。
1本目よりも更に磨きあげられた、いぶし銀の輝きを放つ言葉遊び。
飽きさせない展開。
そして根底にある、2人の細かなニン・所作が作り出すくだらなさ。
トップバッターをご自身で取りに行ったのが納得な、安心して笑える、磐石の漫才でした。

2組目 ハイプライドさん

1本目と同じフォーマットの漫才。
お客さんが最初からルールを分かっているので、序盤から強フレーズを連発して客席を沸かせていました。
ネタの中で1番の笑いになりそうな偏見が矢継ぎ早に繰り出されて、笑うのを辞めるのを許されない、暴力にも似た笑撃。
多少のブラックさを孕んでいるからこその、背徳感も相まった爆発力。
あのテーマであれだけの弾数を出して、お客さんを引かせないどころか全てに着いてこさせるのは、お二人の客観視の上手さが成す業だと思いました。

3組目 周遊さん

1本目とは違ったキャラ付けながら、これまたお二人のビジュアル・所作に絶妙なマッチを見せる設定。
狂気を全面に出しながら、決してお客さんを引き離さず笑わせる演技力。
ボケへの恐怖からツッコミへの共感へと、客席の感情を緩やかに誘導するツッコミの呼吸。
最初から最後まで、他の漫才とは違った楽しみ方をさせていただきました。

4組目 サツキさん

客席がムネタさんを待っていた。
そういう状況だったのは間違いないと思います。
はっきりと言ってしまえば、多少不自然な台本でも、ムネタさんを前に出せばウケるぐらいの『サツキさんの空気』。
けれど、それでは終わりませんでした。
ムネタさんというベールに包まれた存在そのものがフリになって、その正体のギャップが笑いとなる。その明かし方も、客席の想像の1歩上を常に行き続ける美しい台本。

そして私は、ツッコミののりやさんの凄さについても語りたいのです。
教祖を思わせる、ある意味ワンマン的なテンポで話を進めるムネタさん。
それを維持しつつ、会話として全く違和感のないツッコミを作り出す技術。これはコンマ何秒の管理があって初めて成し遂げられるものです。
そして2本目の中で度肝を抜かれたのは、お客さんを困惑笑いさせるボケが出た時に、それをかなり長時間黙って放置しつつ、表情で感じている違和感の足並みを揃える絶妙な管理。
困惑や分からないことに対する笑いって、かなりお客さんの感性に委ねる部分が多いんですね。基本、漫才の台本を書いていると、「ここが間違ってる」と明言して、舞台と客席の意識を揃えたくなる。
そこを、言わない。
けれど、表情で全てを伝える。
言語化できないニュアンスを伝えて、共有して、共感させる。
これはとんでもない技術です。
圧巻でございました。
美しい作品を観せていただきありがとうございました。

後書き

さて、ごちゃごちゃ語りましたが。
何が言いたいかと言えば、全組めちゃくちゃ面白かった
これに尽きます。

だからこそ、あの舞台に立ちたかった。
全組面白いと思われる存在の、その1組になりたかった。
私が生まれ育った浜松で、漫才でそれを成し遂げることに特別な意味があります。
ですから、今回書かせていただいた出演者の皆様に、幸せな時間を与えていただいた感謝をお伝えするとともに、来年戦うべき猛者としての対抗意識を燃やさせていただき、今回のレポの締めとしたいと思います。

来年こそ!!!!!
それでは!!!!!

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