不動産屋にしてやられた話

つい先日、大阪で、
一人暮らし用の物件を探していたのだが、

その際、不動産の上手い誘導によって、
ボクは熟考することなく、物件を即決した。

今思うと、「不動産屋にしてやられたな」と思うと同時に、
非常に勉強になる部分があったので、今日はその話をしようと思う。

まず最初に、その不動産屋は、
ボクを家賃12万円の物件に連れて行った。

予算12万円以下と言ってはいたものの、
いざ行ってみると、
「高いわりに大したことないな」
という印象であった。

次に、その不動産屋は、
ボクを家賃6万円の物件に連れて行った。

すると、さっきの家賃12万円の物件と比べ、

「この安さでこのクオリティか!」

と軽い衝撃を受けるレベルの物件であったのだ。

この時点でボクは、この物件に強い興味を持っていた。

そこに、不動産屋の一言。

「さっき管理会社に確認したところ、
今、この物件で空いているのはこの部屋だけだそうです。
しかも、今この部屋を検討している方が他にいるそうで、
今週中にも埋まってしまうかもしれません。
もし良ければ、取られる前に、部屋止めしておきましょうか?」

ボクは二つ返事で「お願いします」と言っていた。

さて、この一連の話から学べることは3つある。

ひとつは、コントラストの法則。

コントラストの法則というのは、
高額な商品を見た後に、それより安い商品を見た時、
その商品を実際以上に安いと感じてしまう心理的効果のことである。

不動産屋はボクに、先に家賃12万円の物件を紹介し、
その後で、家賃6万円の物件を紹介した。

この2つの物件のコントラストによって、
ボクは実際以上に家賃6万円が安くてお得に感じのだ。

これがもし、先に家賃6万円の物件を紹介されていたら、
おそらく即決することはなかったはずである。

最初に家賃12万円の物件を紹介したからこそ、
その価格・クオリティがボクの判断基準となったのだ。

つまり、最初にどんな商品を見せるか?によって、
顧客の感情と行動は大きく変わってくる。

特に不動産や、保険、太陽光パネルなど、
購入頻度が低い、かつ営業マンとお客の知識差が大きい商品は、
最初にどの価格帯・クオリティのものを見せるか?が重要であろう。

それともうひとつ。

「希少性」である。

物件に興味を持っているボクに対して、
不動産屋はこう言った。

「…この物件で空いているのはこの部屋だけです。」

これを聞いたボクは、
この部屋を自分のモノにしたくなった。

と同時に、
「他の人に取られたくない」という焦りを感じたのだ。

人は、希少性の高いモノ、
つまりなかなか手に入らないモノに価値を感じる生き物である。

そして、その希少なモノを手に入られられるチャンスに遭遇した時、
人は正常な判断をすることができなくなる。

他の人が持っていないモノを手にできる優越感と、
今を逃せばそのモノを失うかもしれないという脅威に支配されるのだ。

つまり、不動産屋による希少性の演出によって、
ボクは埋まりつつある物件に実際以上の価値を感じさせられたのである。

最後にもうひとつ学んだことは、
緊急性の効果である。

ラストの局面で、ボクに止めを刺したのは、
不動産屋のこの一言だ。

「…今この部屋を検討している方が他にいるそうで、
今週中にも埋まってしまうかもしれません。」

この緊急性の演出によって、
「今決断する必要性」が生まれた。

そして、希少性の効果と相まり、
「今を逃せば、もう手に入らなくなる」という脅威に晒されのだ。

人は、怠惰な生き物である。
できることなら、考えたくはないし、
難しい決断からは逃げ続けたい。

故に、緊急性の演出によって、
「今すぐ」決断する理由を与える必要がある。

希少性と緊急性の効果というのは、
人に「今決断しないと、絶好のチャンスを逃すぞ」という脅威を与え、
正常な判断能力を奪うことができるのだ。

以上、今日は、
「不動産屋にしてやられた」という話をしてきた。

簡単に話をまとまると、
コントラストの法則や、希少性、緊急性の演出というのは、
人間の正常な判断能力を奪うことができる強力な武器である。

故に、消費者側は、この法則に支配されず、
冷静な判断を行うことが、失敗しないためには重要である。

一方、販売者の立場なら、この法則をうまく使うことで、
顧客から冷静な判断力を奪い、成約に導くことができるだろう。

いずれの立場にせよ、
これらの原則を理解しておくことは極めて重要である。

それでは、また!

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