審査請求や訴訟を想定した情報公開請求に対する決定のあり方について(情報公開請求等の受付窓口担当だったときに考えていたこと その7)

行政不服審査法に基づく審査請求や訴訟を想定した対応をすべきことについて

 情報公開請求に対する開示又は不開示(一部不開示を含みます)の決定は、行政処分ですから、行政不服審査法に基づく審査請求や行政事件訴訟法の処分の取消しを求める訴訟の対象となります。
 実際に審査請求や訴え提起がなされるかは、決定を受けた人が決めることなので予測は難しいところですが、開示を求めた文書が希望通りに開示されないとなれば、不服を持つことは十分に考えられるところです。
 したがって、決定をする行政機関としては、決定に対する審査請求や訴え提起がありうることを常に想定しておく必要があるといえます。

審査請求や訴訟で争点になるポイント

 情報公開請求の審査請求や訴訟の場合、争点になるポイントは大きく2つあります。
 一つは、開示請求から決定(とその通知)までの一連の手続において、行政手続法(行政手続条例)等の法令(行政内部のルールも含みます)に違反していないか、ということです。
 もう一つは、主に、不開示とした部分が、行政機関情報公開法や情報公開条例に定める不開示情報に該当しているか否か、です。
 不開示情報に該当しているとして、部分開示をしなかったことの適法性が問題になることもあります。

手続を定めた法令等に違反していないか

 情報公開請求に対する一連の手続において、法令違反が問題となる場面としては、開示請求書に記載された内容との関係で、適切に対象文書が特定されているか、ということが挙げられます。
 この点については、別の形で触れているので、前の記事をご覧いただきたいのですが、請求者が欲しいと思っている文書は何か、というところを、受け付けた行政機関が正しく把握しているかということがとても重要ですので、請求書の記載だけからは請求者が欲しいと思っている文書が判断できないのであれば、受け付けた行政機関は、請求者にコンタクトをとり、内容を確認し、場合によっては請求書の記載の補正を求めるなどして、請求者と行政機関の間で、請求者が欲しいと思っている文書は何であるかについて、共通理解を構築するようにしていく必要があります。

 余談ですが、請求書に記載された内容から、行政機関が対象文書を特定し、その文書を全部開示する決定をした場合であっても、請求者としては、対象文書の特定がおかしいと主張して、審査請求や訴え提起をすることが可能です。つまり、全部開示決定であっても、その決定に不服があるということはあり得て、審査請求や訴え提起を行うことは法的に許容されうるということです。
 したがって、行政機関としては、決定の対象とした文書を開示請求の対象と特定した理由について、開示・不開示の理由と同様に、説明できるように記録を残しておくということが適当ということになります。

 特に、審査請求の場合には、審査請求人が文書の特定を問題視していないように見える場合であっても、審査会等がその点を問題視するということがありますから、説明が求められた場合に困らないよう、文書の特定についてもその過程や理由を記録しておくことが望ましいといえます。

 そのほか、手続違反が問題となる場面としては、開示決定の期間を徒過したとか、開示請求者への通知がなされていない、第三者意見照会をすべき場面で紹介がなされていないというようなことがありますので、開示請求対応に携わる行政機関の職員は、請求前の請求者からの相談の対応から、決定書を請求書に送付するところまで、どういう手続になっているかをきちんと確認し、また、それらの手続が履践されているかを一つ一つ確認していくのが良いでしょう。

 不開示情報該当性のところについては、これまでの記事で触れた部分もありますが、審査請求や訴訟を念頭に、次の記事でご説明します。