閑話休題 行政不服審査法に基づく審査請求関連業務について(審査請求書作成の注意点)

行政不服審査法に基づく審査請求対応の業務

 消費者庁の情報公開・個人情報保護担当の課長補佐であったとき、業務の一つとして、開示・不開示決定に対する審査請求が申し立てられたときの事務対応がありました。
 
 行政不服審査法に基づく審査請求についての解説はここでは行いませんが、消費者庁長官が処分庁等(行政不服審査法4条1号)である場合については消費者庁長官に対して審査請求をすることになります。
 ちょっとだけテクニカルな話をしますと、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(行政機関情報公開法)は第3章が「審査請求等」となっていて、行政不服審査法や行政事件訴訟法に関して特別の定めを置いていますので、条文の適用関係をチェックしてみると頭の体操として良いかもしれません。

 消費者庁総務課に置かれた訟務対策官(消費者庁組織規則1条1項)は、消費者庁の所掌事務に関する不服申立てに関する事務を処理する(同条8項)ことになっていますので、消費者庁長官に対してなされた審査請求については、訟務対策官が対応することになります。
 一方で、消費者庁組織令で、消費者庁総務課は、消費者庁の保有する情報の公開に関する事務及び消費者庁の保有する個人情報の保護に関する事務をつかさどる(消費者庁組織令5条8号及び9号)となっている関係で、訟務対策官が受領した審査請求書に関しては、訟務対策官とともに情報公開・個人情報保護担当課長補佐として関わっていました。
 以下では、国の機関に関して適用される法令を前提として、説明を行っていますので、ご注意ください。

審査請求書の記載(特に法人の代表者の住所又は居所について)

 訟務対策官は、受領した審査請求書に行政不服審査法19条2項所定の事項が記載されているかを確認し、記載が十分でないとか不足しているという場合には、同法23条に基づき補正を求めていました。

 私が記憶しているところで、弁護士が法人の代理人として審査請求をする場合の注意点を記載します。

 弁護士が訴訟代理人として訴状を作成する場合、法人の名称と住所、代表者の氏名を記載しているわけですが、行政不服審査法19条4項は、審査請求人が法人である場合、審査請求書には、その代表者の氏名「及び」住所又は居所を記載しなければならないと定めているので、法人の代表者の住所又は居所を記載していないと、審査請求書に不備があるということになってしまいます。
 実際問題としては、行政不服審査法施行令3条1項で、法人の代表者について書面で証明することになっていて、多くのケースで代表者事項証明書を審査請求書に添付していますから、代表者事項証明書の代表者欄の住所をもって、審査請求書の記載に代えているとか、法人の住所(又は居所)が代表者の居所としての記載も兼ねていると読むことにして、補正を求めずに手続を進めたケースがあったという記憶です。
 もっとも、この補正を求められた場合は、形式的には審査請求書に不備があるということですから、補正がなされない場合には、行政不服審査法24条1項で却下の裁決がなされるということもありえますので、仮に補正を求められた場合には素直に従っておく方が良いと思います。

審査請求書の記載の注意点

 そのほか、審査請求書の記載での注意点ですが、行政不服審査法19条2項3号の「処分があったことを知った年月日」の記載や、同項5号の「処分庁の教示の有無及びその内容」の記載が正確でない、ということが見受けられました。

 「処分があったことを知った年月日」については、行政処分の書面を受領した日を記載することになります。
 情報公開請求や個人情報の開示請求の場合、開示(不開示)決定の書面が郵送されてくることが多いはずなので、書面を受け取った日を記憶していないということはよくある話だと思います。
 そこで、受け取ったのが大体この日ということであれば、その日を書けば良いですし、また、記憶している限りで書面が手元にあった一番早いタイミングの日を記載してもらえば記載としては十分です。
 もっとも、処分庁が書面を送ってから、郵便の配達にかかる通常の期間を越えた日を「知った年月日」とすると、処分庁から、配達記録付き郵便などで送付していた場合の配達された日の主張があり、場合によっては審査請求ができる期間(行政不服審査法18条)を越えているので却下すべきという反論を受ける可能性もありますから、あまりに適当な記載は避けるべきでしょう。

 「処分庁の教示の有無や内容」について、個人の方が審査請求する場合、行政処分の書面の後ろの方に「この処分に不服がある場合には~~」というような記載を読んでいなくて、教示は一切受けていないと書いてあるケースもありました。
 教示がなされていないという場合には、それだけで審査請求ができることになるのですが(行政不服審査法83条1項)、処分庁から行政処分をしたときの通知書の写しが提出されて、そこに教示の記載があるとなると、「教示は一切受けていない」という記載は正しくなかったということになってしまい、審査請求人の作成した書面には正しくない記載が含まれている可能性があると注意して読まれるということになりかねませんので、記載には注意していただければと思います。

 思ったよりも長くなってきたので、思い出したところはまた改めてということにします。