情報公開請求の決定の際の注意点等(情報公開請求等の受付窓口担当だったときに考えていたこと その5)

開示(不開示)決定通知の書き方

 情報公開請求に対する開示決定において、全部または一部不開示とする場合には、不開示部分が文書のどこ(例えば何ページの何行目)か、それがどの不開示理由に該当するのか、どのような理由でその不開示理由に該当するのかを示す必要があります。ただ、不開示とした部分にどのような記述があるかをはっきり書いてしまうと、その部分を開示したのと変わらなくなってしまうので、「特定の事業者の製品の製造に関する情報」など具体的な内容にわたらない程度で記載する必要があります。
 そのうえで、その情報を公にすると、どういうことになって、どういう支障が生ずるおそれがあり、したがってこれこれの不開示情報に該当する、という形で記載するのが、ベターな記載方法ということになります。
 ここの記載が不十分だと、不利益処分の理由提示に不備があるということになりかねず、ひいては不開示決定処分は違法とされかねません。
 全部不開示の場合、どこに不開示情報が記載されているかという場所の記載は出てこないわけですが、文書全体が不開示となる(つまり部分開示ができない)というところは意識しておく必要があります。
 これは、行政機関情報公開法6条1項本文で、「開示請求に係る行政文書の一部に不開示情報が記録されている場合において、不開示情報が記録されている部分を容易に区分して除くことができるときは、開示請求者に対し、当該部分を除いた部分につき開示しなければならない。」として、不開示情報が記録されている部分を容易に区分して除ける場合に、そのほかの部分を部分開示する義務を行政機関に負わせているからです。
 同項ただし書では、「当該部分を除いた部分に有意の情報が記録されていないと認められるとき」は、部分開示の義務はないともしていますので、不開示情報に該当する部分を容易に区分して除くことができるかどうか、深い情報該当部分を除いたときに有意な情報が記録されているかどうか、というところを検討することになるわけです。
 そして、審査請求や取消訴訟になった場合に、この検討した内容を説明できるようにしておく必要があります。
 この点については、大阪府の情報公開条例の事案ではあるものの、最高裁判所第三小法廷平成13年3月27日判決(民集 第55巻2号530頁)という判決があり、
「1個の公文書に複数の情報が記録されている場合におい て、それらの情報のうちに非公開事由に該当するものがあるときは、当該部分を除いたその余の部分についてのみ、これを公開することを実施機関に義務付けているにすぎない。すなわち、同条は、非公開事由に該当する独立した一体的な情報を更に細分化し、その一部を非公開とし、その余の部分にはもはや非公開事由に該当する情報は記録されていないものとみなして、これを公開することまでをも実施機関に義務付けているものと解することはできない。」
としている(「情報単位論」などと呼ばれます。)のですが、この「独立した一体的な情報」というものの考え方については、なかなか悩ましいものがあり、裁判例等を分析して、また、対象となっている文書の体裁等を踏まえて判断する必要があります。
 総務省のウェブサイトに、行政機関情報公開法6条1項に関する検討の資料が掲載されています。少し古い資料ではありますが参考になると思います。

開示請求の受付についての注意点

 話が前後して申し訳ないのですが、開示・不開示の決定については、それに至る手続きに不備があった場合、決定が違法として取り消されるという事態が生じ得ます。
 このため、開示請求の受付担当としては、請求の受付段階から注意して対応する必要があります。
 行政庁は、法令に基づく申請があった場合には、形式的な要件を充足していないなら、受け付けた上で期間を定めて補正を求め、補正されないなら要件を充足しないことを理由として却下すべきで、要件を充足していないから「受け取らない」という対応は行政手続法あるいは行政手続条例の趣旨に反する可能性があります。
 この意味において、窓口担当者は、事務処理に関する要綱だけでなく、行政手続法または行政手続条例にも目配りをし、請求の根拠となる法令や条例ではどう対応することになっているのかについて、きちんと確認しておくことが求められるといえましょう。先に記載したとおり、手続違反がそれに続く開示・不開示決定の違法事由となることもありますし、また、窓口対応の誤りが国家賠償法の問題に発展することもありますから、十分に注意して対応することが求められます。

情報公開関連の審査請求における国と地方公共団体での手続の違い

 行政機関情報公開法関連の審査請求の場合、行政不服審査法の9条、17条、24条、2章3節及び4節並びに50条2項が適用されない(情報公開法18条1項)こととなります。
 一方、情報公開条例に基づく開示・不開示決定に対する審査請求の場合、一般的には行政不服審査法9条1項のただし書を根拠にするので、同条3項による読み替え及び同法17条、40条、42条及び50条2項が不適用になります。
 具体的な違いが生じてくる場面としては、行政不服審査法2章3節にある41条が適用されるかどうかで、条例で行政不服審査法9条1項のただし書に該当するように定めている場合は、行政不服審査法41条が読み替えて適用されるので、審理手続終結時の通知が必要になります。
 行政機関情報公開法の場合、情報公開・個人情報審査会に諮問することになり(行政機関情報公開法19条1項)、諮問した旨を通知する(同条2項)となっているので、行政機関情報公開法の場合、審理手続終結の通知ではなく、諮問した旨の通知を出しているわけなのですが、地方公共団体の場合には、審理員制度を採用しているかどうかはともかくとして、審理手続終結の通知をすることになります(行政不服審査法41条3項)。
 大した話ではないように見えるのですが、この部分も審査請求手続の一環なので、審査請求における手続上の瑕疵とならないようにするために、きちんと手順を踏んでいく必要があります。

地方公共団体の情報公開請求の書式についての感想

 国の情報公開制度の請求書式では、「求める開示の実施の方法等」の記載が任意とされているのですが、これは、情報公開法施行令5条1項で「記載することができる」としているのに対応するものです。請求者は開示決定通知書で開示されることとなる行政文書の分量を把握するので、通知書を見て開示方法を検討してもらうという意図と思われます。
 また、行政機関情報公開法14条4項では、一度開示を受けた後に、更に開示を申し出ることができるとしていて、具体的には、事務所で閲覧した後に、写しの交付を請求する、つまり、開示決定通知書で行政文書の分量を把握して、一旦事務所で閲覧し、必要な部分だけをコピー機でコピーするとかCD-Rなどの記憶媒体に記録してもらうということができるわけです。このため、一度開示対象の行政文書の全体についてコピーしてもらった場合には、再度の開示はできないという制度になっています。
 行政機関情報公開法25条で、地方公共団体は、情報公開法の趣旨にのっとって、必要な施策を策定することとされているところですが、地方公共団体によっては、開示請求の段階で、求める開示の実施の方法を記載させるようになっていて、ここの記載がない場合に、請求に不備があるという扱いをしているところもあるようです。個人的な見解としては、行政機関情報公開法14条4項の趣旨なども踏まえて、開示請求書の記載事項を定めるべきだろうし、開示請求書に実施方法が記載されていない場合の取扱いを検討するのが望ましいのではないかと考えます。

行政文書(公文書)管理と情報公開の関係の問題、そのほかの余談

 消費者庁で公文書管理と情報公開窓口担当をしていたときに感じたことなのですが、ある行政文書について、当該文書の作成過程で作成された複数のバージョン、さらに電子決裁の対象にした電子媒体のものと、それを印刷して押印した施行版の写しの紙媒体とPDF化したものなどが存在していることがままあります。
 これを前提として考えますと、「○○に関する文書の一切」という形で請求対象文書を記載すると、これらのバージョン違いが全部対象になってしまうのではないかという問題があり、また、請求者にとっても本当に欲しい文書以外のものの交付手数料が嵩んでしまうということにもなりかねません。さらに、対象文書が多くなれば、不開示情報該当性の判断に時間がかかってしまい、全部の文書が開示されるまでかなりの時間を要することにもなりかねません。(基本的には同一文書のはずなので、開示、不開示の判断はおおよそ同じになるはずではあるのですが、バージョン違いの場合、記載内容が完全に同一であると限らず、作成の過程で削除されたり追加されたりした情報がありますので、その部分は更なる検討が必要になります。)
 こういう観点からしますと、請求を受けた行政機関としては、請求者に複数のバージョンがあることを伝え、請求者が欲しいのはどれなのかという意向を聞き取って、請求対象文書の記載の補正をお願いしたほうが良いかもしれません。また、請求者としても、欲しいものに絞った方が、結果的に費用と時間を節約できるので、「どういう文書があるわからないからとにかく全部出してもらいたい。そのために「一切」と書く。」というのは少し考えられた方が良いかもしれません。請求を受け付ける部署ではそのための相談を受けていますから、公開されている行政文書ファイルを検索しても、欲しい文書がどれかよくわからない、また、どの程度の存在するかもわからないというような場合には、相談されることをお勧めします。

 完全に余談なのですが、行政機関情報公開法施行令の別表によりますと、紙媒体をPDF化してCD-R等の媒体に記録して交付する場合、交付手数料はCD-R等の枚数の料金に加えて、元々の紙媒体の文書1枚につき10円の実施手数料がかかるようになっています。ちなみに、元々電子ファイルのものはファイル数で計算(1ファイルごとに210円)し、これに媒体の料金が加わります。

 例えば、エクセルやワード形式のデータであれば、そのまま開示対象にすることが予定されているはずなのですが、そのデータに不開示情報が含まれていればそこを削除し、削除したことが分かるように加工することになるので、データを対象文書にしたから開示にかかる時間が短くなるということでもないと思われます。
 
 窓口担当者であった者としましては、窓口と相談してみると、意外にスムーズに手続が進むこともあるので、情報公開請求をお考えの方は、気軽に受付窓口に相談することをお勧めします。

記載している内容の時系列的な順番が前後しているので、読みにくいところもあろうかとは思いますが、書籍のように整理できているものではないので、ご容赦いただければと思います。