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なぜ指示ゼロ経営は、まだ広まっていないのか

9月9日、「賃金が上がる!指示ゼロ経営 出版記念イベント in 金沢」に行ってまいりました。


改めてたくらみ屋の相棒・米澤晋也(米ちゃん)の考え方を聞き、事例企業・ザカモアさんの素晴らしいあり方に3時間浸かっているうちに、自分の中に大きな4つの気づきがありましたのでまとめてみました。

1.風土から行くか、利益から行くか
2.指示ゼロ経営実践者の「当たり前」の前提を明らかにする
3.「副作用を消す」プロセスが次の展開を創る
4.私の役割は流れを作ること

以前から米ちゃんは「自分が死んでも指示ゼロ経営が残る」ことを目指していると言っています。相棒としてわたくし森本は「本当にそうできるのか?」という視座でいつも見ています。

「指示ゼロ経営をやっている企業はどのくらいでしょうね。。。何万、はまだないんじゃないですか。何千とか。なぜまだそのくらいしかやっていないのか。」

イベント途中のゲストスピーチで、ネッツトヨタ南国の横田さんからもこんなお話がありました。

私も同じように考えていました。そして指示ゼロ経営を実践して生き生きと働く人達が増えるためには、指示ゼロ経営が有効に機能する「前提条件」をもっと明らかにしたいと考えていたのです。

1.風土から行くか、利益から行くか


指示ゼロ経営の考え方を簡潔にまとめた「成熟社会における繁栄の因果」という図があります。

この図の根っこの根っこには「愉快でワクワク働ける風土(みんなでPlan Do Seeを回す)」があります。

風土づくり。土壌を耕す。まさに最近の我々の仕事はここです。

どんなにいい学びやノウハウを入れても、土壌ができていないところでは育たない。

逆に土壌が育てば面白いように学びが生きてくる。

ある土壌が育っている会社は、「在庫は減らしたほうがいいよね〜」って共通言語ができると、特に在庫削減プロジェクトとかしなくても数カ月後にちゃんと在庫が何千万円も減っているっていうくらいになるんです。

方法は未熟でも「あーでもない、こーでもない」ってみんなでPDSを回すっていうことを愉快にやっていると、成果の量もスピードも思った以上にできてしまう。ノウハウも次に継承できるようになる。

だからこの「愉快でワクワク働ける風土(みんなでPDSを回す)」から、結果の現象として売上総利益(MQ)が上がり、賃金が上がる図解はとても納得感があるのです。


しかし一方。。。矢印の逆の方向を辿る企業さんもたくさんあります。

つまり売上総利益(MQ)や賃金の考え方を学んだら会社のやることがはっきりしてきて、価値の創造にみんなで協力して取り組もうとしたら人間関係性が良くなって、愉快な風土になってきたっていう会社もたくさん見ています。

そこで思い出すことがあって、私にしては珍しく?手書きでさっと図を書きました。

TENGE NISHI という文字が見えますね。

米ちゃんの師匠はソニーでアイボを作った天外(てんげ)伺朗さんです。私は同じくソニーにいらしたMG・MQ会計の開発者、西順一郎先生に学んでいます。

よく米ちゃんと私は、天外さんと西先生はあまり気が合わないだろうね〜と話しています(^-^)

でもソニーという会社は「自由闊達で愉快な理想工場」を標榜し、経営者の井深大さんと盛田昭夫さんがそんな多様な人達とを統合していたと言えます。

この図は、愉快な会社という山頂を目指して、天外流の「愉快な風土づくり」という道から登る様子と、西流のMQ(利益)から登る道を表現してみています。

どっちから登るか?

どっちから登ってもいいんじゃないでしょうか。

なぜなら山は登ったら登りっぱなしではありません。

「愉しい風土」から登って、下りてみると「MQ(利益)」という景色が見える。
「MQ(利益)」から登って、下りてみると「愉しい風土」という景色が見える。

事実、愉しい風土を作られたザカモアさんは今期はMG・MQ・MTなどの会計方面の学びに力を入れていくことを決められています。

最終的にはどちらの道も歩くことになる。

「愉快な会社」という山に登るのに、どこから登らないといけないってことはない。いろんな会社の現場があるわけですから、そこは指示ゼロ経営のノウハウに固執せず、いろんな入り方があっていいと考えます。

さて、どっちからでもいいという前提の上で。。。近年は今まで登ろうとしていた登り口を変えようとする人が増えています。

それが「谷を飛び降りて、違う道にチャレンジ」するプロセスです。


2.指示ゼロ経営実践者の「当たり前」の前提を明らかにする


事業は山を登るだけではありません。谷に下りる、落ちる、飛び込むこともある。

私達の周辺に結構多いのは、手書きの図の下部の、深い谷の中に飛び込もうとしている人たちです。

今までの考え方で利益を追うことやってきた。そして上意下達の方法でやってきた。

うまくいく企業さんもあるが、どうもこのままではうまくいかないと感じている。

このままではダメだ。

そもそも愉しい会社を目指しているんだったら、最初から愉しい風土づくりに取り組もう。別の登り口から進んでみよう。

そのためには、目の前にある深い谷を越えないといけない。あるいは飛び込んで、這い上がってくるしかない。

怖いけど、やってみるしかない。

こんな経営者さんが増えています。

実際に米ちゃんと西村拓郎社長(トニー)がやったことは「いきなり指示をゼロにする」ということでした(あまりおすすめはしません)。

なんでそんな、崖っぷちから飛び込むようなことができたのか?!

「なぜ米澤晋也とトニーは、今日から何年も指示をせず黙ると決めることができたのか?」

失敗を全部見守って黙るというのは凄く大変なことです。最初は当然業績も下がります。

しかし今のザカモアの社員さんは、涙ながらに語ります。

「私達ができる失敗を全部させてくれた。広告に失敗して数百万円損失を出した時も自分の給料を下げて見守ってくれた。だから私達は本当に頑張ろうとしたし、成長したし、トニーに凄く感謝している。」

なぜそこまで覚悟を持って黙って見守る、信じることができるのか?

交流会でこの問いをトニーに聞いたら、バーっと7つくらいのことを話してくれました。早すぎて覚えられないくらいに(^-^;;;

みんなはもっとできるはずと信じているとか、力が発揮されていないのが悔しかったとか。そして「人はそもそも善良である」と心から考えているとか。

つまり崖から飛び降りる決断ができた、言語化されていない前提がいくつもあったのです。

「言語化されておらず、皆に共有されていない前提を明らかにする」

実はこれこそは集団の土壌づくりの大きな仕事の一つです。


上記のような前提は、指示ゼロ経営を採り入れている企業さんが、言語化されていないまでもほぼ共通に持っているように思います。

指示ゼロ経営が成り立つ前提は何か。指示ゼロ企業が100%共通に持っている前提は何か。

まだまだその前提は、明らかになっていない。

前提が明確にされていけばいくほど、指示ゼロ経営は再現性の高い理論となります。

前提を明確にするのは苦しい作業です。普段当たり前と思っていることを言語化しないといけないので。普段吸っている空気を意識するようなものです。

自分では苦しい作業ですが、他者が丁寧に質問していくと明らかにしやすいことも多いです。

「指示ゼロ経営実践者が当たり前と思っている前提」の共通点は、ぜひヒアリングして見えるようにしていきたいと考えています。


3.「副作用を消す」プロセスが次の展開を創る


さらに「指示ゼロ経営はこんなメリットがある」と伝えているだけでは広まらない。

指示ゼロ経営のメリットはわかった。愉しそうに生き生きと活動している会社も目の前で見た。

でも一歩踏み出せない。なぜか?

「業績が落ちるんではないか?」「人が辞めないか?」「好き勝手にする人が続出しないか?」

指示ゼロ経営に取り組むと起こるであろう、副作用・デメリットの解決策がわからない。

これが大きいのではないかと思います。

指示ゼロ経営では、多くの副作用が思いついてしまい、心配ごとがとても多くなってきます。

しかしそこで指示ゼロ経営が理論的に「こんな副作用を消すうまい方法がありますよ」と答えを出して行くと、ちょっと違う。

ある時ある所で有効な解決策は万能ではありません。他の状況で効くとは限りません。

ここでは、共に「こんな副作用が出るよね」と見えるようにして、その解決策を考える参画のプロセスが必要となってきます。

私の得意なTOCではネガティブブランチと言って、良い結果と悪い結果を木の枝状に付箋で書き出す方法を取ります。枝を見えるようにした上で、悪い結果の枝を剪定して解決策を共に考えます。

自分で考えたことは自分ごとになりますし、指示ゼロ経営が目指す「参画経営」になっていきます。

自分たちで副作用を消していける土壌と道具を持つ。

これが指示ゼロ経営の可能性を大きく解き放つと考えています。


TOCも「こんなに良いのに、なぜ広まらないか?」が考えられた時期がありました。

その答えは、「TOCが広まらないのは、TOCを広めようとするからだ」という結論になりました。

メリットばかりを推していても、相手が望む解決策は提示されていない。

キャズムを超えるには、相手の望む「副作用の解消」を実現して行くイメージができれば、大きく前進するでしょう。


4.私の役割は流れを作ること


わたくし森本の役割は何か?

それは手書きの図の全ての矢印の流れをスムーズにすることだと考えました。

愉しい風土から創る愉しい会社も。
会計から創る愉しい会社も。
崖っぷちから飛び降りて創る愉しい会社も。

それぞれ進もうとする矢印の流れが滞っていたり、流れが細かったりすると愉しい会社は実現しません。

流れを塞いでいる制約、ボトルネック、阻害要因。

これらを取り除いてよい流れを共に創り続けることが、私の役割であり仕事である。

そんなふうに改めて捉え直すことができました。

昨日のザカモアさんのような、いい風景がある会社。和をたくさん発見できる会社。

苦しいこともチャレンジして喜び合う、楽ではないが愉しい会社。

そんな生き生きとした会社が世の中に増えますように。

まとめ


なぜ指示ゼロ経営は、まだ広まっていないのか?

指示ゼロ経営が有効になる前提がまだまだ明らかにされていない。
指示ゼロ経営をやると起こるであろう、副作用を解決する方法がわからない。
方法を探ろうとしても、皆で助け合って解決する風土ができあがっていない。
風土が出来上がって皆が解決しようとしていても、その具体的方法がわからない。

これからは

指示ゼロ経営実践者にとって当たり前過ぎて言語化されていない前提を明らかにしていく。
指示ゼロ経営の副作用をみんなで解決していける土壌つくり、道具を用意する。

これらをやっていくことで、生き生きと愉快な会社の増え方が加速する。

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