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『アリスとテレスのまぼろし工場』と私

 子供の頃にたくさん傷ついた思い出が急に蘇ることってありますよね。
失恋,喧嘩,いじめ,落第とか・・・
振り返ると自分で「よく乗り越えたなー」と思うことも。
でも中にはまだ引きずって前に進めないことだってある。

 MAPPA制作の『アリスとテレスのまぼろし工場』を観て,自分って傷つきやすい存在だと再確認しました。傷つきたくないから感情を押し殺して,無理に変わろうとせずに今の自分でいようとする。歳は重ねるけども自己同一性を保とうとする。暑さも寒さも痛みも感じないけども心は平穏。でも急に現実感がなくなってしまう。自分は生きているのか?と。

 今は社会が多様化・複雑化する中で,価値観が頻繁に揺らいで心の動きがジェットコースターのように急降下・急加速してしまうので,心を守るために自ら鈍感になることを選んでいるのだと思います。でも子供の頃に最初に述べたようなことを経験し今ここにいれるのは守って支えてくれる誰かがいたからです。

 一方で,生きる希望は今の自分の感情を大切にしてその願望を叶えることに全力で捧げると自分に誓うことから生まれるのだと,映画を見て気づきました。時には傷ついてガラスの心が粉々に砕けたとしても,立ち止まらずに進む力が希望です。自分の外側からの要求や危険に対処することに手一杯になってしまうと希望を描くことができなくなります。また,外側からの救済を待たずに自分から主体的に動くことによってその希望の灯火がずっと自分を照らしてくれます。

 大人になった今,私は子供のように無邪気に笑って,悲しい時に泣いて,怒りの感情に任せて喧嘩することは少なくなりました。だけど普段子供達のそういった姿をみて感動することがあります。しかし,それを時には指導という名目で,私の力で抑え込んでしまう。必要な時もあるけど,生きる希望とは何かを私は果たして伝えることができているのだろうか,と反省しました。