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3回の事業ピボットをしたM&Aクラウドの試行錯誤と明日からできるキーマン採用のノウハウ

バイアウト後に設立した、いまのM&Aクラウドを設立した背景、試行錯誤の上での3回の事業ピポット、キーマン採用の確度を上げる具体的な方法などお聞きしています。

起業家や新規事業を考えている方、プロダクトを模索している方にお勧めのコンテンツです。

Podcastの書き起こし&再編集を行ったコンテンツです

元音源はこちら(約27分)


M&A業界でユニコーン企業を作るのは難しくない

Q:M&Aクラウドの起業から現在までのお話を教えてください。

M&Aクラウドを起業した背景としては今まで話したところが原体験にはありました。

僕の考えのベースに歴史に名を残したいというのがあります。デカい市場で、大きな社会課題があり、自分の持ってるものが生かせる。このような領域がいいなと思っていました。

僕の失敗経験もあるので、M&A領域というのはすごく魅力的だなと考えていました。

2015年前後のYahoo!ファイナンスでも取り上げられていたように、M&A業界がすごい儲かって伸びていました。

上場しているM&A仲介会社のストライクは当時アドバイザーの数が確か50人くらいで、M&Aキャピタルパートナーズ(MACP)が100人ぐらいでした。それぞれ時価総額が1,500億ほど。

日本M&Aセンターは300人くらいで時価総額6,000億くらいあった記憶があります。

これだけでも1人あたりの時価総額がいかついなって思うところがありました。

ユニコーン企業を作るのが難しいといわれておりながら、M&Aアドバイザリーでユニコーンがすでに3社あった。しかも実情はIT化が進んでなく、アナログで人集めればいい!みたいな状況で。

それだけでもM&A業界はマーケットが大きく、経済的なところは大分確信がありました。

スキル的役割分担と性格的役割分担

そんなタイミングで共同創業の前川さんにたまたまシェアオフィスで会いました。前川さんが北海道から上京してきて「東京で一旗揚げるぞ!」と。

もちろん最初は全く面識がありませんでしたが、シェアオフィスのオーナーにつつかれて前川さんとお話ししました。

前川さんと出会って5分後くらいに「一緒に起業しようよ!」と言われて「なんて胡散臭い人なんだろう」と思ったんですけど笑。

僕はまだ売った会社のモラトリアム期間というか、どんな事業にベットするのかを考えていた時期でした。

前川さんとアイディアを出し合っていく過程で補助金が通ったり、一定規模の借入ができてました。また、IVSローンチパッドにもリソースの1/3くらいで出れたりしていました。

そんなタイミングでKlab創業者の真田さんと対談する機会がありました。

その時真田さんがくれたアドバイスで「共同創業で失敗するケースで、役割分担ができてないところがある。スキル的役割分担はできるけれども、性格的役割分担はできない。ここの見極めが最初難しい。同じ時間を過ごせばスキルはどんどん似通っていきます。ただ、性格は役割分担できないので、似ている性格じゃなくて違う性格の人とやったほうがいい」と。攻め系の性格と守りの性格みたいなもので。

ふと僕たちを見てみると、僕がめちゃくちゃ攻めで、前川さんは守りでした。そこがすごいよくて共同創業に至りました。

インキュベイトファンドから出資を受けるときの当時のピッチ資料を見ているんですが、今やってることとほぼ変わらない、想定していたのとほとんど変わっていません。それくらいお互いがやりたいことと、できることの分担ができていました。

Q:M&Aクラウドを創業してどれくらいたっているんですか?

設立は15年12月です。サービスのリリースは18年1月で、そこまでは結構ブランクがありました。15年12月から16年の12月くらいまでは合同会社期間で、正直ゆるふわにやっていた期間でした。

16年の12月に株式会社化するタイミングで、そこからちゃんと始まった感じです。

そこから1年半ぐらいはピボット期間。プラットフォームビジネスというのはぶっちゃけ何パターンもなくて。たぶん10パターンぐらいなんですよね。

さらに、M&Aプラットフォームビジネスにすると、うまくいくパターンは6パターンくらいと仮説をもっていました。確実にひとつづつ検証をして、ダメそうならピボットの繰り返しでした。僕の中では「そうですよね」というテンションでピボットを続けていました。

事業失敗の要因は「できるところから始めた」から

Q:今の形になったのは何回目ぐらいのピボットだったんですか?ある程度PMFいけそうだなっていうきっかけやタイミングはあったんですか?

ピボットは3回しました。PMFについては難しい質問です。

「これはいけるだろうな」と思うまでには、僕らが考えていた強い仮定がハマることと、顧客の反応をみて仮説の正しさを感じる2つが重ならないといけないと思ってます。

まず、強い仮説なんじゃないかと思ったのは、買い手を掲載するとなったときのアナロジー。これは人材業界から考えていました。

「求人を掲載することで求職者が集まる」。これが人材業界の求人プラットフォームであったときに、僕たちが最初にやってたのは、売り手を登録してM&Aアドバイザーがスカウトできるというもの。つまり「売り手がM&Aアドバイザーとマッチングできるプラットフォーム」でした。

やり始めてすぐにピボットを考えました。動きながら見てたものとして、そもそもM&Aアドバイザーで独立している人がそもそもそんなにいない、売り手は実はM&Aアドバイザーを比較したいとは思っていない、などのことがわかりました。

そのようなピボットを繰り返し、いまの形である「買い手を掲載して売り手を集める」プラットフォームにアイディアがいきつきました。

この構造は人材業界ではすでにリクナビがあったり、他業界でも同様の構造でした。

ラーニングリーンという名著があります。ゼロイチをするときには多くのユーザーにヒアリングをする、と書いてあるものです。

僕たちが考えたアイディアは、買い手と売り手にヒアリングしなければならず、会社を売ろうとしている人にヒアリングするの無理じゃね?とか、会社を買おうと思っている社長にヒアリングするの難しくね?みたいなのがハードルでした。

そもそも我々のビジネスって、ヒアリングが難しいビジネスでした。ただその難しさがあるからこそ、逆にそれができると良いと思うんですよね。

僕たちの初手の失敗として、ヒアリングしやすさという観点だけで、M&A仲介業者にまずヒアリングして、最初のプロダクトを作りました。それが失敗だったんです。

M&A仲介会社からしたら、プラットフォームだろうと紹介だろうと、案件が入ってくるのであればなんでもいいため、プロダクトのフィードバックも「いいと思う」以上でも以下でもないものしか回答が出てこないからです。

途中で売り手からの薄いニーズとM&Aアドバイザーの数などに気づき「改めてエンドユーザーに聞こう」となりました。

売り手を見つけるのは難しいため、元売り手経験者であるバイアウト経験者に聞いて回りました。買い手は真正面から上場企業の社長などに頭を下げて聞きました。

胆力でちゃんとユーザーにヒアリングできたっていうのが、いまのM&Aクラウドの事業に繋がってますし、とても重要な動きを比較的初期でできたのが強かったかなと実感しています。

Q:そうですよね。新規事業をやるときも、基本的には想定顧客ターゲットにどれだけ話を聞いてインサイトをとれるのかが大事ですし、それができないとそもそもプロダクトを作ったとて本当にそれがマーケットインするのか分かりません。具体的には、領域は関係なく、少なくともサンプル5とか10くらいヒアリングをする必要があると思っています。プラットフォームは両サイドあると思うんですが、どちらかに必ずヒアリングを重ねてインサイトを見つけないと、プロダクトがどう進んでいくのか、本質的なニーズがどうなのか、って分からないですよね。

そうですね。分からないです。ヒアリングし続けることで我々として「この人が一番のペルソナにすべき」と言うのが決めることができれば、その人向けにひたすら解像度上げていくだけです。その1人目を見つけるのが大変ですが、やらなければプロダクトは磨ききれない。

これらの強い仮説である程度ニーズがみえてきたあと、具体的な検証をしていきました。

顧客獲得単価を業界平均の1/20にできたM&Aクラウドのイノベーション

オンラインでのマッチングプラットフォームなので、そもそも集客ができるのか?を検証しました。テスト的にじげんさんを買い手として掲載させていただき、ペライチでLPを作りました。そのLPをFacebookAdで出した時にCPAが 5,000円以下でリードの獲得ができました。

Q:それは買い手?売り手?

買い手も売り手もです。

他の起業家の方もやっているとおもうんですが、「これができたら発明だよね」という証明や基準は、オープンデータから一定想定できると思ってます。我々で言うと当時日本M&Aセンターの決算などを読んで、成約数を分母にし紹介料広告宣伝費を分子にすると、一件成約する獲得コストが1,100万円ほどとわかりました。

M&A 1件成約に1,100万円コストかかっていて、営業利益50%とかなんです。えぐいなと。この獲得コストを10分の1の110万とかにできれば、わかりやすくコストイノベーションです。

この獲得コストをベンチマークにしました。会員登録は少なくとも10万未満とかに抑えることができれば10件に1件は決まるだろう、と。

でも実態は20分の1くらいになりました。これならいけるのでは?と一旦手ごたえがありました。実はこの取組成果だけでいったんシードの調達をしました。

次の確信は、リリース3ヶ月で9.2億のM&Aがぽん、とオンラインで決まったことです。

Q:めちゃくちゃおもしろい。基本M&A系の上場企業や未上場だけどブティック型の数名規模でやってるM&A仲介は、いわゆる売り手の獲得コストを下げるために地銀や地方の企業とアライアンスを組んで、リードを全国から引っ張ってきているのが現状かと。そうなると各方面とのコミュニケーションのために人をどれだけ使うのか?アライアンスなどをどれだけ広げられるかを指標にCPAを下げようとする既存の取り組みだったにも関わらず、デジタルマーケティングで一気に獲得コストの獲得コストの桁を一気に二桁下げた感じですよね。

そうですね。でもこれは簡単は発想でできるもので、大越さんも上場企業の事業内容とweb3をかけ合わせてTweetしてますが、その発想と同じです。

ヤフーファイナンスで時価総額の高い業界をみていくなかで、インターネット化が進んでいないやつを見ていくというだけ。要は、市場の伸び率があるものというのが大体時価総額に込められてます。それをみたあとに、デジタル化がされてないところや弱そうな領域がみえてきます。この観点で見ていけば事業の種が見つけられます。超シンプルですけど。

10枚のピッチ資料「あなたがM&Aクラウドにジョインする理由」で採用オファー?

Q:2022年10月現在、いろんな領域からメンバーが集まってきてますが、どのように採用されてるんでしょうか?

基本はまず僕がめちゃくちゃコミットしているのが大きいです。カジュアル面談から入ることが多いでが、リファラル採用も積極的に行ってます。経営会議で採用したい方をバイネームで目星を作って連絡するまでのタスクに落とし込んだり。そういう当たり前のことをやるだけです。

採用のノウハウというより気持ちの部分ですが、絶対に採用したい方と面談はしなければならなく、気持ち面で「ダメだろう」と思うのはいけない。あって面談をしないと採用はできないわけで、要は超すごい人でもとりあえず声をかけるみたいなマインドセットがあります。やっぱりそれがないと歴史に名を残すような会社を作れないと思うので。

たぶん孫さんとかはそういうふうにすごい人の採用とかをしてきたと思うんです。SHIFT丹下さんなども、それに結構近いと思っています。

精神論っぽいので、テクニック的な手法をひとつシェアすると、採用のオファーだすときはピッチ資料みたいなものを作るんです。

Q:個別でですか?

個別でです。うちに入った方がいい理由みたいな話と、うちがあなたが入ったことによって伸びる理由みたいな話、なぜあなたじゃなきゃだめなのかなど。

その上で、うちが提示できる条件、期待値、もセットで伝えています。今すぐやって欲しい課題だけでなく、中長期の課題も伝えてます。

最終的にはマッチせずにブレイクすることもありますが、基本的にオファー出すときにはやりきっています。

Q:ここまでやるのって他であんまり聞いたことないです。ちなみに打率ってどれくらいなんですか?かなり高そうですが。

3割とか2割5分とかじゃないですかね?

Q:たまたまその時はマッチングしなかったっていう人でも、オファーでプレゼンをしてもらった側は印象に残りますよね。

オファーレターとかではなく、パワポ10枚くらいでやっています。これは結構いいと思っていて、仮に振られたとしても諦めがつきますし、辞退された方から紹介してくれたりすることもあります。エージェント経由だったらエージェントがまた紹介してもいいな、と思ってくれたりいいサイクルになるんです。

僕たちもここまでやって振られたのだったら諦めきれますよね。ちょっと手抜いたりやりきってない感じでオファーしてもこっちがモヤモヤしてしまいますし。

個人的には採用はドラマチックにやりたいというのがあります。ドラマチックなほうが絆が生まれると思ってます。

Q:他のスタートアップで採用めちゃくちゃやりたいですっていうところはすぐにでもやったほうがいいですよね、できるじゃないですか?本気でやりたいなら。

気合いでできますね笑。

起業家って何で起業したんですか?って聞かれるシーンが多いと思うんですが、メンバーも社外のインタビューをされたときに、なんでジョインしたのかって絶対聞かれるんですよね。そこにドラマチックなストーリーがあればあるほど仕事に力がこもると思っています。


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