読了『ifの世界線 改変歴史SFアンソロジー』

今年はフォロワーから勧められた本を片っ端から呼んでみようということで早速1冊目を読了しました。

5人のSF作家(石川宗生/小川一水/斜線堂有紀/伴名練/宮内悠介)の5つの作品のアンソロジーということですが申し訳ないことにこの5名の方をこの本を手に取るまで私は存じ上げておりませんでした。

以下個別の感想やあらすじなどになるのでネタバレ注意です。



歌う蜘蛛

「音楽」を使って人間を操る、人間に影響を与えるというのは私の好きなアニメ『マクロス』シリーズでも描かれているギミックでこの時代に落とし込むとこういう使い方になるのかとなりました。
16世紀あたりのヨーロッパ知識が高校世界史Bという遠い記憶の底にあったのでこの時代背景をもっと知っていればより楽しめたのかなと思いました。

パニック-一九六五年のSNS-

50年くらい早くTwitterがあったらみたいな話です。
本来は当時存在しなかったネット回線を利用したSNSが出てくる一方でデバイスが年代相応の古さというギャップもif世界線というのを感じさせて良かったです。
三島由紀夫が決起演説のあと割腹自殺を遂げるのではなくそのまま2000年代まで生存しツイッタラー(作中では「ピーガー」)として活動しているのは妙なリアリティがあるように感じました。

一一六二年のlovein'life

これは見事な百合作品だ……。(結月拓実 1991-)

この作品がSF(Science Fiction)作品かどうかは私には判断できない(空想科学と言えるような科学要素を見いだせなかった)ですが、ifモノのしては非常に面白い作品でした。このアンソロジーの中では一番刺さった作品かもしれないです。
詠語と和語それぞれで詠まれる和歌、今となっては少ないsentenceで綴られる詩として英語圏で親しまれるようになっている和歌をあえて平安時代から存在したという設定で進むお話です。
作中でも言及されている通り主語のはっきりしてしまう詠語とそれをぼかせる和語の違いを想像の余地として描いているのも美しさがあります。

私のTLに巣食う百合愛好家に感想を聞きたいなと思った作品でもありました。

大江戸石郭突破仕留

まさしく歴史改変ifSFという話でした。
読み始めはすこし妙だな?という引っ掛かりの程度でしたがよくよく考えると作中時点で既にかなりの歴史改変が行われておりこの国のかたち自体が代わっているという話の仕組みは非常に面白かったです。
幾度となく大災害に見舞われその度に否が応でも「リセット」を余儀なくされる我が国においてその大災害の一つが無くなったらどうなるのか、その一つがバタフライ・エフェクトのごとく様々な事象に影響していくところまでほのめかされているこの作品の前後の歴史も気になりますね。

二〇〇〇一回目のジャンヌ

SFといえばループものですよね。(諸説あります)
当の本人がループするのではなく後世に作り出された疑似人格がループさせられるのを外側から観測するというのは我々が歴史ゲームでif世界を楽しむところに似ていますが、作中でこれを行っている理由がかなりグロテスクなところがSF作品という感じがバチバチにあってよいですね。
「聖人」とされた人の「本性を暴く」というのに利用されていたこのシステムですが、今度は逆に「大悪人」とされた人の「本性を暴く」方の話も読んでみたくなりました。

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