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宅建士【権利関係】制限行為能力者02

1.成年被後見人

制限能力者のなかで一番能力が低い人! → 成年被後見人がやった契約は、全て取消せる。単独の契約は許されない。未成年者のような例外もなし! ただし、日用品の購入などの日常生活に関する行為は、単独で出来る(第 9 条)。

成年被後見人とは? 世の中には、重い精神障害のために、それこそ一億円と一円の区別もつかないような人が実在している。そういう人を保護するために家庭裁判所が、この人を成年被後見人とします。という審判(これを後見開始の審判という)をする。(第 7 条)そうすると、その人は成年被後見人となる。

成年被後見人のまとめ
精神障害の為に判断力(事理を弁識する能力)が欠け、家庭裁判所から後見開始の審判を受けた人(重度の認知症患者など)。
そして、成年被後見人には、成年後見人という保護者がつけられる。この場合、家庭裁判所が後見開始の審判の際に、これを選任することになっている。(第8条) この成年後見人も法定代理人である。なお、未成年後見人(第857条の2)及び成年後見人は複数を選任することができる。また法人を選任することが可能となった(未成年者の場合も同様)。

用語:精神障害:認知症 知的障害・精神障害等のこと。

用語:事理を弁識する能力 法律行為をすることの意味を認識、判断(弁識)できる能力のこと。

審判の申し立て権者
後見開始の審判を家庭裁判所に申し立て出来る者は、本人配偶者四親等内の親族未成年後見人保佐人、保佐監督人、 補助人、補助監督人、検察官(第 7 条)が特別法により、市町村長も特に必要があるときは申し立てすることが出来る。

もし判断力があったら!?
判断力のことを法律の世界では、事理を弁識する能力という。成年被後見人もときには能力を回復することがある。それでも後見開始の審判が取消されない限り成年被後見人である。だから判断力を完全に回復している間やった契約でも取消せる。

2.保護者の権限

(1)代理権
成年後見人は、成年被後見人に代わって契約できる(第859条 1)。ただし、成年後見人は、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物または、その敷地または抵当権の設定その他これに準じる処分をするには、家庭裁判所の許可を受けなければならない。この規定は、保佐人と補助人にも適用される(第876条)。

(2)同意権なし
成年被後見人という人は未成年者よりも、もっと判断力が弱い人である。
たとえば、保護者である成年後見人から、「貴方の家を一億円で売っても良いですよ。」という同意を与えたとしても、一円で売ってしまうかもしれない。そこで、未成年者の場合と異なり、たとえ成年後見人の同意を得た上の契約であっても取消せるとしている。さらに権利を得るだけの契約や義務を免れる契約も未成年者と異なり 取消し得ることになっている。行為の意味さえ理解できないからである。よって、単に権利を得る行為でも、法定代理人のチェックを受けることにしている。

(3)追認権あり
追認する事が出来る。この追認がなされると成年被後見人の行為といえども確定的に有効となる!!

(4)取消権あり
成年被後見人の行った行為は全て取消す事が出来る。

(5)取消権者
本人と後見人だけ。
この場合、成年被後見人自身が取消す時は後見人の同意は必要なし!!

(6)取消権が行使されると。
その行為は最初から無効であったこととみなされる。ただし、その場合、成年被後見人の方は、その行為によって現に利益を受けた限度において相手
に返還すれば良い。

【例】制限能力者が土地を売却して3,000万円を受けとったが、そのうち200万円を浪費してしまったときは、残りの2,800万円を返還すれば足りる。不公平のようであるが、制限能力者の取消しを容易に出来るようにしようという趣旨からからこのように定めてある。ただし、生活費に使った場合は返却しなければならないと解されている。生活費は、生活する上で必要な費用であるからである。

🚨重要

成年被後見人は日用品以外の契約は一人で完全に出来る行為は何もない!どうしても!成年被後見人と契約をしたかったら!全ての法律行為は成年後見人の代理が、または追認してもらうかのどちらかになる。

未成年者と成年被後見人の違い

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3.被保佐人

成年被後見人ほどではないが、精神障害のために、独り立ちするにはちょっと無理な人が世間には実在する。このような人を保護するために家庭裁判所が保佐開始の審判をする(第11条)。

用語:被保佐人 精神障害の為に判断力が著しく不十分な者で、家庭裁判所から保佐開始の審判を受けた人。

被保佐人には、保佐人という保護者がつけられることになっている(第12条)。

💡ここがポイント

成年被後見人と同じく家庭裁判所の審判がない限り、被保佐人となることはない。また、審判の取消しがない限り、能力を回復する事はない。

被保佐人のした契約
被保佐人は、独り立ちはちょっと無理といっても、未成年者や成年被後見人よりはしっかりしている。つまり、ある程度の能力はある。そのため原則として単独で有効な契約を締結する事ができるようになっている。しかし、財産上重要な契約は、単独でやると取消しの対象となっている。

💡ここがポイント

一定の重大な契約をするときだけ保佐人の同意を得なければならず、同意なしにやった契約は取消す事が出来る(第13条)。この一定の契約は第13条1項に規定されている。

※ただし、日常生活に関する契約は、単独で出来る。

保佐人の同意が必要な行為

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👿ここに注意
宅地5年ちょうど、建物は3年ちょうどの賃貸借は、短期賃貸借!被保佐人が、単独でやっても、契約は有効になる点に注意。
なお、家庭裁判所は、場合により上記以外の行為でも保佐人の同意が必要と判断すれば、その行為を審判にあたって追加することができる(第13条2)。

第13 条 1 項以外の契約とは 自分ひとりで契約できる。もちろん保佐人の同意は不必要!!

第13 条 1 項
被保佐人が一定の重要な法律行為をするときは、その保佐人の同意を得なければならず、自分が勝手に単独で行なってはならない。
保佐人の同意が必要な行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所が被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可をすることができる(第 13 条 3 項)。

👍ここに注目
被保佐人が単独でした時効完成の債務の承認は、管理行為なので単独でやっても取消せない。債務の承認は時効更新という効果が生じるが、これだけでは財産上重要な行為といえないからだ。これに対して、時効完成後の承認は、結論が異なる。時効完成に債務の承認をすると、承認をした債務者が時効の完成を知らなくても、時効の援用が出来なくなる。債務者が「私は債務を負っていますよ」と承認すれば、債権者は支払ってもらえると期待することになり、その債権者の期待を保護する必要があるからだ。つまり、債務者は「時効が完成したから払わない」と言うことができなくなる。これは、財産上重要な行為だ。そのため被保佐人が単独で「時効完成後に債務の承認」をすると、取消すことができる。ということになる。制限能力者制度は悪までも弱者を守る制度なのだ。

4.保佐人の権限

(1)取消権
被保佐人が保佐人の同意なしに行った契約を誰が取消せるかというと本人と保佐人である。

(2)追認権
被保佐人が保佐人の同意なしにやった重大な契約も、保佐人が追認すると取消せなくなる。

(3)代理権
原則、代理権はない。家庭裁判所は、被保佐人、保佐人の請求により、被保佐人のため特定の法律行為について保佐人に代理権をつけ与える旨の審判(付与の審判)ができる(第876条4)。

 被保佐人は、同意なしにやった大損する契約だけ取り消せるということになる。

5.審判の申立権者

成年被後見人とほぼ同じ

6.被補助人

被保佐人とは精神上の障害により、判断能力(事理を弁識する能力)が不十分な者で、一定の者の請求(本人以外の者の請求のときは本人の同意が必要)によって家庭裁判所から補助開始の審判を受けた者をいう(第15条)。これを保護する者を補助人という。家庭裁判所が補助開始の審判の際に、これを選任する(第16条)。同様に家庭裁判所により補助開始の審判の取消を受けることにより、能力者となる。

7.被補助人開始の審判の効果

被補助人には必ず補助人が付く。そして家庭裁判所は被補助開始の審判とともに、補助人に同意権または代理権の一方または双方を付与する旨の審判をしなければ成らない。

(1)審判の申立人と本人の同意

補助開始の審判の申立人は、本人、配偶者、4親等内の親族、後見人(未成年後見人・成年後見人)、後見監督人(未成年後見監督人・成年後見監督人)、保佐人、保佐監督人または検察官である(第15条1項本文)。本人以外の者の請求により補助開始の審判をする場合には、本人の同意が必要である(第15条2項)。これは、自己決定の尊重を理由とする。

補助人に権限を付与する審判をする場合にも、自己決定の尊重の観点から、本人の申立てまたは本人以外の申立の場合は本人の同意が必要とされる(第17条2項、第876条の9第2項)(第17条1項、第876条の9第1項)。


(2)被補助人の行為能力

保護者である補助人に同意権を与えた場合、被補助人に対する行為能力の制限の範囲は、民法第13条1項所定の行為の一部に限られる。
なお、補助人の同意を要する行為について、補助人が被補助人の利益を害する恐れがないにもかかわらず補助人が同意しないときは、被保佐人と同様家庭裁判所が補助人に代わって許可をすることができる。


(3)取消権

補助人が同意権を有するときは、その同意なくしてなされた特定の法律行為について、補助人に取消権が認められている。(同条4項)。 取り消すことができる者(取消権者)は、被補助人本人(その承継人)および補助人である(第120条1項)。     

  (4)代理権付与のみの場合

補助人に代理権のみが付与されて同意権が付与されない場合には、被補助人の行為能力は制限を受けない。つまり、被補助人は、完全に単独で行為をすることができる。


(5)代理権の範囲

被補助人のために特定の法律行為について補助人に代理権を付与する旨の審判ができる(第876条の9)。代理権の対象となる特定の法律行為は第13条1項のものに限定されない。

制限行為能力者のアウトライン

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制限能力者の保護者の権限のまとめ

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