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”みっこのやさい”に込められた想い。片平光子さんが新規就農した理由

6月はじめ、千葉にある友人の畑を訪れました。
ここは、東京から40分程離れた自然に囲まれる町。
じりっとした暑さの中、アイスキャンデーを頬張った野球少年が農道を横切る風景がみられます。

今回訪ねた片平光子さんは、新規就農1年目。地域で若手の女性は特に珍しく、滅多にない事例にてんやわんやの役所との就農の手続きに日々を追われています。

大学では栄養士の資格を取得、その後は某大手食品子会社でのマーケティングを担当したのち、実家の父が面倒を見る畑を手伝うことを決めました。

「自分のやってることに、なんだかなぁって思って。」

栄養分を不自然に添加した商品を売り込む仕事に違和感を覚えたのは、大学在学中での留学経験から。渡航先のカナダでは、ファーマーズマーケットにおける生産者と消費者の食に対する意識調査を行っていました。

「私が調べてみて、ファーマーズマーケットで消費者が野菜を買う理由のうち一番多かったのが"生産者を応援するため"。ただ、日本で同じことを聞くと、ほとんどの人が"国産は安心,安全だから"だって。意識も全然違うし、取り組みの規模感の違いにびっくりしたよ。」

気持ちが離れているのに、本当にこの仕事を続けていいのか。

自身のオーガニックな考え方から離れていたことに、悩んでいた光子さんが本格的に農業を生業として見つめるようになったのはお父さんの存在。思い切って退職した後は、20年間も家族の健康のために無農薬で野菜を育てているお父さんの手伝いを始めた。

「農業なんて、本当に好きな人じゃないと続かないよ。」


そう語る光子さんのお父さんは、慣れた手つきで田んぼの草抜きをする。

毎日のように稲の生育に合わせて水門の管理、草抜きを行い「これが楽しみだから」と機械を使わず草抜きをする。日々の仕事もこなす中で睡眠時間も少ないのに、「よく倒れないよね。」と光子さんと笑い合う。

ただ、どれだけ嫌になっても断固として農薬には頼らない。

目線の先には、お父さんが手掛ける千葉県でほぼ唯一のレンコン畑。2枚で1反ほどのレンコン畑には多様な生き物が集まり、地域の研究者や学生たちの調べ学習先となっている。

「ここには千葉にしかいないカエルやら、珍しい生き物ばっか集まってるんだ。クスリ撒いたらもうおしまいだよ、みーんな死んでしまうから。」

近くの学校から学生のレンコン掘り体験の受け入れや、田植え体験も受け入れることができるのは、農薬を使っていない畑と誇れるものがあるから。

「(植えたところが)バラバラなところもあるから、手間もかかるんやけど」と漏らすが、体験後の学生たちには収穫後のお米を気前良く振る舞う。「美味しい!」「こんなお米食べたことがない!」という声が上がってくるのはさすがお父さんのお人柄。

一般的に有機栽培や自然栽培をする農家が、無農薬や肥料設計にこだわる大きな理由の一つとして環境に対する配慮がある。農業という、特に環境に影響される職だからこそ、経営面でも環境面でも持続可能とは何かを考えさせられる。

お米だけではなく年間30種類もの野菜の栽培に挑戦する光子さんは、生産から販売までを一手に行う。

彼女は自らマルシェイベントなどに積極的に出店し、お客さん個人との繋がりを大切にしている。

新しく農業を始める人を応援する取り組みも、行政や民間で行なっていたりする。ただ、彼女の姿勢を間近で見て、それ以上にそのような空気感を消費者である私たちがつくってはいけないだろうか、と考えさせられた。

ちなみに、僕が光子さんと初めて知り合ったのは、同じ留学生同士のコミュニティ。何回か連絡を交わした後は、食がテーマのイベントに参加したり、僕の師である梅本農園を紹介したり。

スローフードに重なる、同じ考えを持つ光子さんは僕にとって「ちょっと上のお姉さん」だった。久し振りに会えて、就農してからイキイキとしている姿を見て、なんだか僕も嬉しかった。

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