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どうにかなる「考え」と、どうにもならない「構造」

※この記事は2021年12月29日にstand.fmで放送した内容を記事に起こしたものだ。

考えでどうにかなる問題と、構造の話だからどうにもならない問題というものに直面したことのある方は多いと思う。

時々、考えの問題と構造の問題を一緒くたにして困ることがよくある。実際にそういうことで困っている人もよく見かける。

考えの問題と構造の問題を分けるには、やはり、日頃から「どっちの問題なのか?」をある程度意識するしかない。

例えば、いつも100円のリンゴを売っているスーパー。その日も100円でリンゴを買いたかった。ところが、スーパーに行ったら120円のリンゴしか売られていなかった。
この場合、自分の都合でリンゴを100円に値下げすることは当然できない。リンゴの値段が下がるには、リンゴの消費期限やスーパーの在庫状況、あるいはリンゴを納品した農家の収穫具合など、あらゆる要素が絡み合って初めて決定される。これは個人の「考え」でどうにかなるものではなく、「構造」の問題であるから、値段を簡単に変えることはできない。

こういうときは自分の「考え」を変えるしかない。100円でリンゴが買えないなら、100円で買える別の食べ物を探せばいい。リンゴを買いたいと思っていたのは自分だけなのだから、他の食べ物を探そうと思えば簡単に探せる。食パンでもトマトでも、カップ麺でも100円で変える食品なんてスーパーにはいくらでもある。わざわざ100円のリンゴにこだわって飢え死にする必要はない。こういうことは、自分の「考え」を変えるだけでどうとでもなる。

日本の首相の決め方でも似たようなことが言える。日本での首相の決め方は、衆議院選挙で過半数をとった政党、つまり与党の総裁が首相になる。今年、日本では総裁選挙が行われて岸田文雄さんが総裁になったが、この選挙は国民は直接参加はできない。日本が議院内閣制という仕組みをとっていることで、国民が直接首相を選ぶことはできない「構造」になっているからだ。

一方、アメリカの場合は、大統領制という仕組みをとっているので、国民が直接トップを選ぶことができる。これもアメリカの政治の構造によるものだ。

もし、自分に日本の首相に推したい人物がいたとしても、日本ではその人の政党が与党になり、かつその人が総裁選挙で選ばれないと首相にはなれない。アメリカのように大統領制にしたかったら憲法を変えるしかなくなる。これも、個人の「考え」でどうにかなる問題でなく、「構造の問題」なのでどうしようもない。

このように、身の回りの出来事は、「個人の考え方による問題」と「構造の問題」にざっくり分けることができる。
自分の悩みや不安、怒り、習慣づくりのような類は、「考え方」一つ変えるだけで解決できることが多い。ところが、それが「チームを変えたい」「学校や会社の仕組みを変えたい」「国の在り方を変えたい」「世界の貧困や虐待、環境を変えたい」。スケールが大きくなればなるほどそれは「構造の問題」になっていく。そして構造の問題に近づくほど、「個人でなせる限界」に突き当たる。

なので、人間関係や学校・会社の仕組み、政府のあり方などに悩みを抱えることがあったら、もしかしたらそれは「構造の問題」かもしれないので、一人で考え過ぎずに、それについては割り切るか、他人に頼るかして、自分の「考え」でどうにかなる問題だけに時間を割く方が気が楽だ、という話。

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