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やりたい仕事に就くことを諦めなかったファラデー

※この記事は2022年1月4日にstand.fmで放送された内容を文字に起こしたものだ。


前回、ファラデーの著作について簡単に解説したが、彼自身のことについてもう少し詳しく。

マイケル・ファラデーは18世紀から19世紀に活躍したブリトゥンの物理学者。電流と磁場の関係について研究した「電磁誘導の法則」で有名だ。

例えば、駅の改札機についているICリーダーや、マイクやスピーカーのようなオーディオデバイスなどは、すべてこの電磁誘導の仕組みを応用したもの。

今でこそ世界的に有名なか科学者のファラデーだが、元々は鍛冶屋の父との元に生まれた労働者階級の出身で、貧しかった。そのため、子供時代の教育は読み書き程度しか教われなかったという。

13歳の時に、書籍販売と製本業を営む店の使い走りとして無給で採用されると、その一年後に製本工の見習いになり、そこで8年間過ごすことになるが、このとき、たまたま目にした電気関係の本に興味を持ち始めて、自分で実験などをやっていくうちに、化学と電磁気学に関心を持つようになっていく。

ある時、王立研究所(今でいう国立の科学研究所とか国立大学の教授などに近い)の教授であったハンフリー・デイヴィーと言う人物の講演会に運良く参加すると、ファラデーはこれをきっかけに「科学関係の仕事に就きたい」と考えるようになる。

ところが、労働者階級で貧しかったファラデーにとって、それは簡単なことではなかった。どうしても科学の仕事がしたかったファラデーは、その気持ちを綴った手紙を王立協会の会長宛に送ったが、一介の製本職人に過ぎない彼の願いを聞き入れられるほど、当時のブリトゥンの階級社会は寛容ではなかった。今のようにスマホで検索すれば簡単に仕事が見つかる時代でもない。

・しかし、ファラデーは手紙が無視されても挫けることなく、今度はデイヴィーの講演会の時につけた講演録のノートを添えて、ディヴィー本人に手紙を送った。すると、ノートを見たディヴィーがその熱意に感動し、ファラデーはデイヴィーと一度面談の機会を設けてもらえることになる。

ただ、デイヴィーもすぐに彼を採用するのは難しく、「科学の道は厳しいから、自分の仕事、つまり製本工に専念した方が良い」と助言を与えるにとどめた。断られたファラデーはかなり落ち込んでいただろうと思う。

ところがその後、何の偶然か王立研究所の助手の一人が喧嘩が原因で解雇されると、デイヴィーは後任の助手が必要になった。そこで彼は迷わずファラデーを採用し、わずかばかりの週給ではあるものの、ファラデーはデイヴィーの実験助手として雇われることになったのだ。

ファラデーは助手として経験を積む傍ら、有機化学や電磁気学の分野で業績を次々と上げていき、名実ともに認められる科学者として後世に名を残すことになっていく。

これ以上は長くなるので省くが、僕がファラデーの生涯を見て学べることがあるとすれば、「純粋な好奇心」と「望みを諦めない熱意」だ。

たまたま手にとった電気関係の本に興味を持って、自分で実験までしていたあたりは、ファラデーがただ好奇心の赴くままに夢中になっていたことが分かる。そうして彼は化学と電磁気学に魅力を感じて、「科学で生計を立てたい」と考えるまでに至った。王立研究所に手紙を送って断られてしまった時も、諦めずにノートと一緒に手紙を送って熱意を伝えたことで、偶然のチャンスに恵まれて、実験助手として一歩踏み出すことができている。

こうしてファラデーの生涯を簡単に振り返るだけでも「好奇心」と「熱意」がいかに大事かがよく分かる。本を読んだだけで実験をしていなかったら、「科学で生計を立てたい」なんて考えることはなかったかもしれないし、一度断られて諦めていたら、欠員の助手に巡り合うこともなかったかもしれない。

歴史に「もし」は禁物なので、僕の仮定は全て可能性でしかないが、それでも自分のやりたい仕事を諦めなかったファラデーの生涯は、現代の生き方にも通じる大事な歴史だと僕は思う。
特に、手紙を送り続けた頃は、自分の存在をまずは知ってもらわないと何も始まらない。ファラデーはそれを分かってたからこそ、ノートを添えた手紙をもう一度送って熱意を伝えようとしたのだ。

これは科学の仕事に限らずどんなことでも言えることだろう。自分を知ってもらうためには、何度も打席に立って数をこなす以外にはない。

歌手になりたいとか、エンジニアになりたいとか、イラストレーターになりたいとか、皆さんそれぞれ目標があると思う。そうなるためには、自分の歌や、コーディングしたアプリや、描いたイラストを「とにかく公開し続ける」ことが重要だったりする。そうしたら、たまたま興味を持ってくれた関係者がスカウトしたり、仕事を発注してくれたりするかもしれない。それがいつなのかは分からないが、何もしないとずっと知られないままだから、やらないよりはやった方がいい。

そうして何度も発信して、打席に立ち続けることが、目標を達成する上で大事になると言う話だ。僕もファラデーに習って、ラジオ配信続けていこう思う。

参考文献:『ロウソクの科学』

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