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激闘、Wリーグファイナル粘り抜いたENEOS

ものすごい試合でした。

4月17日(月)、武蔵野の森スポーツプラザで2戦先勝方式のWリーグプレーオフファイナルの最終ゲームが行われました。

ENEOSサンフラワーズ対トヨタ自動車アンテロープスは、最終スコア74-65でENEOSがトヨタを下して4シーズンぶりのWリーグ女王に輝き、皇后杯とあわせた2冠となりました

両チームとも8人前後でアクティブロスターを回していたので、主力の選手はほぼ毎日35分以上の戦いとなっていました。これを3連戦してさらにオーバータイム2回です。まさに死力を尽くした戦いというのでしょうか。

最後は止まりそうな足を必死で動かしているような状態でした。

第4Q最後の攻撃は同点でトヨタがポゼッションをむかえています。
さらにオーバータイム①の最終ポゼッションもトヨタが残り11秒を攻撃しました。

度重なるピンチをENEOSが崖っぷちで凌ぎました。

結局、驚異の粘りで耐え抜いENEOSが、オーバータイム②の残り2分に林の3Pと続く宮崎のコーストトゥコーストのバスカンでトヨタを突き放して、ほぼここで勝負がつきました。

それにしても、一進一退の気力を振り絞った壮絶な戦いでした。感動をありがとうございますと素直に言わせてもらいます。

最後はよく言われるような気持ちの勝負だったのだと思います。

そんな中、試合後のコメントで渡嘉敷が(試合が)長引けば長引くほど自分たちが有利かなと正直思ってましたとこう話した理由はトヨタのビッグマン2人のファウルトラブルにあったのであろうと思いますし、そのほかにも理由があったのだと感じるのです。

今回はENEOSが粘り切って優勝を手繰り寄せたその原因を考えてみました。

梅沢とソハナのファウルトラブル

第1Q序盤はトヨタがディフェンスでペースを掴みます。

ENEOSの宮崎(星)がPnRを仕掛ける時、トヨタ山本はアイスでスクリーナーの方向にドリブルさせず、ドロップして守る梅沢(ソハナ)の方向に追い込み挟み込みます。パスを捌かれてもそこからローテーションディフェンスで守ることでゲームのペースをトヨタに持ち込みました。

これに対してENEOSは、3Pがある長岡が、ポップする事でオープンを作りそこから3Pを射抜く事で反撃しました。

また、ENEOSは宮崎、星の速いガードがドライブを仕掛けたり、ディフェンスリバウンドからのトランジションの速攻で得点をしていました。

とは言え、やはりENEOSの得点源は渡嘉敷のポストアタックです。
渡嘉敷がポストでポジションを取れれば高い確率で得点できていました。

これに対してトヨタは渡嘉敷を抑えようとして、また、宮崎、星のドライブを止めようとして、第1Qからソハナが2つ、梅沢が1つのファウルを犯してしまいました。

第2Q残り6分35秒にはソハナが早くも3つ目を犯しました。続いて6分25秒には梅澤もオフェンスファウル、さらに残り5分40秒に渡嘉敷との衝突で3つ目のファウルをして前半のうちに2人のビッグマンがファウル3つとなりました。

これで、大神HCはトヨタの強みである梅沢、ソハナというビッグラインを前半から制限して使わざるを得なくなりました。

ENEOSが点を取りたい時に使ったセット

ENEOSの1番の得点パターンは、この日FG8/16(50%)20得点の渡嘉敷のペイントアタックです。

彼女がいかにポジションを取るかが重要で、ポジションに入れば、1on1でほぼ得点できます。

これに対してトヨタは梅沢やソハナが渡嘉敷に付きます。ここに山本や川井がダブルチームに行く事で楽に渡嘉敷にポストアップさせていませんでした。

そこからローテーションで守るトヨタディフェンスは一定の効果が出ていました。


これに対して、ENEOSは渡嘉敷がポストポジションを取って得点したい時は、ハイポストにいる渡嘉敷に対して対角のコーナーの星や林がクロススクリーンをかけてボールサイドのローポストで渡嘉敷にポジションを取らせてウィングからボールを入れて得点していました。

さらに、ENEOSが勝負どころで使ったセットがもうひとつあります。


前半2Q残り1分58秒とオーバータイム②の残り4分39秒に見せたスペインPnRです。

OT②残り4分39秒
トップに宮崎、右ハイポストに渡嘉敷、左ウィング高田、左コーナー林にエントリーしました。

渡嘉敷が宮崎にスクリーンをセット、さらにコーナーから林が渡嘉敷のマーカー梅沢にスクリーンをかけます。
宮崎がドライブしてアタック。ディフェンスはついてこられずレイアップが決まりました。(63-61)

ここで先手を取ったENEOSは流れを引き寄せ、残り3分2秒には梅沢のファウルアウトを誘い、残り2分の林の3Pへと繋いで勝利を掴みに行きます。

山本とステファニーのPnR、1-3リップ

対して、ENEOSを崖っぷちまで追い込んだトヨタのアドバンテージは山本とステファニーのPnRでした。

いわゆる普通のPG(1番)とスクリーナーが3番のPnRだけではなくて、PG山本がステファニー(3番)にリップ(バック)スクリーンをかけるセットもありました。このシリーズENEOSは幾度となくこのPnRに得点を許しています。

第4Q残り3分17秒
トップ中央にステファニー、右ウィングトップに山本です。山本→ステファニーにパス。
山本は右ウィングトップからペイントにVカットしてステファニーにリップ(バック)スクリーンをセット。
ステファニーがペイントドライブ。
山本はスクリーンから左トップにポップ。
ステファニーがキックアウト→山本
山本の3Pがヒットしました。(50-51)


ところで、この日はトヨタのバックコート陣がリバウンドを頑張って取りました。

ステファニー14本、川井8本、平下6本。

オフェンスリバウンドはトヨタがENEOSを6本も上回っていました。そしてSTは9本あり、ENEOSから19本ものTOを誘発していました。

ディフェンスはENEOSよりも効果的に守れていたと思います。

しかし、トヨタはFG28/86本(32.6%)とシュートの試投数が非常に多く、確率は良いとは言えませんでした。因みにENEOSは29/69本(42%)です。

これは、ゲームが進むほどに体力が削られてタフなシュートが多くなり、しかも梅沢、ソハナが外れてスモールラインナップなるとゴール下での確率の高いシュートが減っていたからです。

一方でENEOSはゴール下の渡嘉敷のショットやガード陣のペイントアタックは高確率で決まっていました。

長引けば長引くほど有利と渡嘉敷が考えていたのはENEOSのゲームプランがはまっていたからではないかと思うのです。

ENEOSリーグ優勝の軌跡

今シーズンのENEOSは、シーズン前半には三菱電機、富士通に連敗して強いENEOSがどうした?と危惧をした時期もありました。

しかし、シーズン後半にはチームがまとまって皇后杯優勝を果たしました。レギュラーシーズンを20勝6敗4位でプレーオフに進出して2冠達成です。

「サンフラワーズが帰ってきました。」
渡嘉敷が試合後のスピーチの第一声で話しました。

優勝を達成する事こそが自分たちのアイデンティーであると言っているのでしょう。

この日の試合見ていれば、その驚異的な粘り強さ、負けず嫌いのメンタリティがギシギシと伝わってきます。

来シーズン、また新チームからのスタートです。

驚異のメンタリティENEOSを筆頭に、今回の悔しさをバネにするであろうトヨタ、奇跡の逆転劇を演出したシャンソン、レギュラーシーズン1位のデンソー。
それぞれがどのように姿を変えてくるのか、楽しみは今秋までとっておきたいと思います。

photos by ちとからぁ

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