大倉工業(4221)がDOE導入し株価急騰
大倉工業(4221)は2024年11月13日にDOEを導入することを発表しました。株価は11月13日終値2771円から翌14日終値2983円と+212円(+7.65%)も上昇しました。その後も上昇し11月26日には3150円の高値をつけました。2025年1月15日現在の終値は2990円と若干下げましたが、11月14日の水準にあります。
本記事では、大倉工業の事業概要や直近決算短信の数字などを確認し、大倉工業がどんな企業なのか現在の儲けはどれくらいなのかなど現状を把握していきます。
また続編ではPERなどの指標、株主還元政策などについて確認し、個人的な投資判断のポイントも紹介しています。続編は下のリンクよりご覧ください。
1. ビジネスモデルと事業の特徴
大倉工業は主に3つの事業セグメントを展開しています。各セグメントのビジネスモデルを詳細に分析します。
1.1. 合成樹脂事業
このセグメントでは、プラスチック製フィルムの製造を行っています。
主要製品: 食品包装用シュリンクフィルム、電子情報材料用フィルム
特徴:
衣食住のあらゆる分野に使用される製品を提供
社会問題に先駆けた製品開発(食品ロス削減、環境配慮型素材、省力化)
多様なニーズに対応する技術力
1.2. 新規材料事業
機能性フィルムの開発・製造を行い、グローバル市場に展開しています。
主要製品: 液晶画面用フィルム、自動車部材用フィルム
特徴:
原料メーカー複数社とのコラボレーション
多種多様な原料の特性に関する豊富な知識と経験
高い技術力による顧客ニーズへの対応
1.3. 建材事業
「住」に関わる素材の開発、製造、販売を行っています。
主要製品: パーティクルボード、集成材
特徴:
木材資源の再利用による環境保護への貢献
住宅の構造材や内装材としての利用
快適な空間創出を目指した事業展開
他事業部門との連携による新製品開発
各セグメントは独立しつつも、R&Dセンターを中心に相互に連携し、新たな製品や技術の開発を行っています。また、環境配慮型製品の開発や再生可能エネルギーの導入など、持続可能な社会の実現に向けた取り組みも進めています。
2. 経営環境分析
2.1. マクロ経済環境
原材料価格、特に樹脂原料のナフサ価格が高騰し、収益に影響を与えました。
電力料や物流コストの上昇が継続し、利益を圧迫しました。
2.2. 市場動向
食品や日用品の買い控えにより、国内市場で販売数量が減少しました。
電子材料用・半導体関連の市況悪化により、海外市場でも販売数量が減少しました。
新設住宅着工の減少や少子高齢化による建設従事者の不足が建材事業に影響を与えました。
2.3. 事業別の状況
2.3.1.合成樹脂事業
不採算製品の見直しを進め、構造改革に取り組みました。
食品のロングライフ化やリサイクルしやすいモノマテリアル化に寄与する多層フィルムの製造設備に投資しました。
2.3.2. 新規材料事業
光学関連製品、電池関連、接着剤などの機能材料が成長しました。
広幅光学フィルム新製造ライン(G2ライン)への大型投資を行い、2024年から量産を開始しました。
2.3.3. 建材事業
パーティクルボード事業では、二次加工製品の販売構成比率を高め、付加価値向上を図りました.。
環境資材事業では、「木守®」の販売強化を推進しました。
2.4. 財務実績
2023年の業績は増収増益となり、純利益は過去最高を記録しました。
売上高は788億6千万円(前年同期比2.1%増)、営業利益は49億5千万円(同31.4%増)となりました。
2.5. 投資と成長戦略
2023年に111億円の設備投資を実施し、生産能力の増強と新技術の導入を図りました。
ケミカルリサイクルの事業化や高周波基板用フィルムの開発など、新たな事業領域への展開を検討しています。
次世代太陽電池材料の開発を推進するため、関連企業への出資を行いました。
2.6. サステナビリティへの取り組み
オンサイトPPAモデルによる太陽光発電システムの導入を進め、CO2排出量削減に取り組んでいます。
2025年までに年間5,300tのCO2排出量削減を目指しています。
この期間、大倉工業は厳しい経済環境の中で積極的な投資と構造改革を行い、収益力の向上と新たな成長機会の創出に取り組んでいます。高付加価値製品の拡販と環境対応製品の開発が今後の成長のカギとなると考えられます。
3. 直近(2025年12月期第3四半期)決算短信からの業績の概要
3.1. 営業成績
売上高: 593.4億 前年同期比1.1%増加
営業利益: 31.8億円 前年同期比13.9%減
経常利益: 34.7億円 前年同期比15.4%減
売上高は増加しているものの、利益面では減益となっています。これは、新規材料事業において新工場の品質安定化に時間を要し、それに伴う費用が増加したことが主な要因とされています。
3.2. 財政状態
総資産: 前連結会計年度末に比べ64億5700万円増加し、1067億3000万円。
売上債権は減少。
投資有価証券、現金及び預金、棚卸資産は増加。
総資産は増加していますが、その内訳を見ると、事業活動による資産増加だけでなく、投資や現預金の増加も影響していることが分かります。
3.3. セグメント別の状況
新規材料事業: 売上高は増加したものの、新工場の品質安定化に時間を要し、費用が増加。これが利益減少の主な要因。
機能材料BU: 車載用途が振るわず、ウレタンフィルムやEV用途の接着剤などの販売が低調。
特に新規材料事業の状況が、全体の業績に大きく影響しています。
3.4. 今後の見通し
現時点では、新規材料事業の品質安定化が今後の業績を左右する重要な要素と言えるでしょう。
4. ネットキャッシュ分析
現金及び預金: 10,513百万円
有利子負債:
短期借入金: 5,239百万円
長期借入金: 1,335百万円
社債: 0
有利子負債合計: 6,574百万円
ネットキャッシュの計算
ネットキャッシュ=10,513-6,574 =3,939百万円(39.39億円)
ネットキャッシュ比率の計算
ネットキャッシュ比率=3,939百万円÷35,500百万円(時価総額)=11.1%
今回の分析はここまでとさせてください。
続編ではPERなどの指標、株主還元政策などについて確認し、個人的な投資判断のポイントを紹介しています。続編は下のリンクからどうぞ!
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