お家でSTEAM
学校でしか出来ないこと
休校期間に入って,ますます「学校でしか出来ないこと」って何なのだろうかと考えるようになりました。学校じゃなくても出来ることがけっこうあるよね,ということに気づいた生徒はたくさんいそうで,保護者も不安はあるけれども学校でなくてもある程度子どもは学べるのねって思っていて,教員は気がついているけれど認めたくない人がまだまだたくさんいてっていうのが今なのかなと思います。
この話は別に取っておくとして,「学校でしか出来ないこと」って何かなと考えている一方で,「家で何が出来るかな」とも考えています。自分の家はもちろんだし,生徒さんのお家でもやってみたら面白いんじゃないかなと思うこと。面白いだけでなくて,子どもの未来にもきっと役立つこと。せっかくSTAY AT HOMEなんだし。
お家でSTEAM
それが「お家でSTEAM」。サイエンス,テクノロジー,エンジアリング,アート,マスマティクスとか分野ありきで考えてしまうと,いかにこれらを融合したプロジェクトを立案するかなんて小難しい話になる。確かに学校の授業という単位で考えるとそうなのだけれど,実生活における諸問題・様々な課題はハナから教科融合,分野融合しないと解決できないものばかりです。学校の授業という単位の中で実生活の諸問題を解決しようとするとややこしいなら,まさに実生活そのものであるお家でSTEMのプロジェクトをやればいいではないかということです。
ネジも回せないのかよ
棚を設置する。これも身近なSTEAMプロジェクトですよね。物理の知識も必要,もちろん数学の知識も,エンジアリングも。そしてアートの意識も必要。今まで学んだこれらの知識や技術や感覚をどのように組み合わせて,一つの棚を作りつけるというプロジェクトを完成させるのか。
で,先日,たまたま棚を設置する機会があって大学生になったばかりの長男がチャレンジしてみたわけです。しばし格闘する気配がしていて,そして「ネジがもう入らない」と泣き言をこぼしに来ました。彼は運動系のクラブ活動もしていて,既に体格は私より逞しい。たぶん力もある。その彼が回せないネジなんて私に回るはずがない。
まあ無理なら場所を変えてみるかな,なんか固い柱にでも当たってるのかな,なんて考えつつやってみると。スルスルとネジは壁に入っていく。彼もびっくり。押しながら回すんだぜと言うと,ほ〜っと感心されてしまいました。
彼はネジを回したことがないわけではない。でも,ネジ穴が切ってあって,ただスクリュードライバを回せば入っていくようなネジしか使ったことがなかった。ある程度押す力も加えながら回していくような工作を意識してやったことがなかったのでしょう。これはそういうことをやらせなかった自分の責任だなあと反省。
料理の可能性
毎日棚を作るというわけにもいかないので,お家で出来るプロジェクトは何かなと考えると,これは料理だろうと思い至りました。前から長男には「とにかく自立するなら料理ができないとダメ」と言い続け,なんなら将来は料理人とかどうだ?とすすめてきた甲斐もあったのか,単に食い意地が張ってるだけなのか,自分でゴソゴソ料理らしきものをするようにはなってきました。次男は何事にも興味関心があって楽しめるお年頃。これはチャンス。
ラーメンをスープから作るのを手伝わせてみたり,餃子やシウマイを作ってみたり,たこ焼き器を買ってたこ焼きを作ってみたり,あれこれ試してみております。(やたら中華が多いな。。。)ただし気をつけているのは,レシピを示してその通りに作るような調理実習にならないこと。
美味しく作るにはレシピをしっかり守るのが近道だと思いますが,これはSTEAMのプロジェクトなので,レシピも細かくは伝えず,「何でこれが必要なのか」「これを使わないとどういう味になるのか」「餃子とシウマイの具材の違いは何でこうなってるのかな」「焼きと茹での違いは」「ここで塩揉みするとしないとでは」「フツフツと煮るのとガンガンに炊くのと違いは出るかな」と,それぞれの理屈や仕組みを考えてやってもらいます。
たこ焼き器でシウマイ作れると知って,ではやってみようとなった時に,「だったら皮なくてもいいのかな」とか「皮が焼けるとどんな違いがあるんだろう」とか「蒸さなくても大丈夫なのかな」とか「蓋のないたこ焼き器で蒸すとしたらどうすればいい」とか考えることってたくさんあります。もちろんWebで作り方調べちゃえば一発ですが,「きっとこうするに違いない」と考えてから調べるのとは学びの深さが違います。
きっと本来は調理実習でもこういうことは考えて指導されているとは思うのですが,さすがに調理実習では気軽に失敗ができません。家庭料理なら多少の実験や挑戦も可能ですし,失敗してもまあそれはそれで何とか笑って食べられます。
レシピを覚える人・レシピから学ぶ人
料理が苦手な人はレシピを覚えようとする人なのかなと思います。何か作りたいと思ってもレシピがないと作れない。レシピにある材料がないと作れない。何か物足りないと思った時に何を加えればいいか想像できない。
料理が得意な人は今まで作ったレシピから学ぶことができて,新たな味の組み合わせが想像できる人。そしてそこから創造できる人。何か作りたいと思った時にレシピがなくても「これとこれを組み合わせれば」と考えられる。材料がなければ他にこれでできるかなと思いつける。何か物足りないと思った時にあれを入れればいいのかなと推測できる。
「お家でSTEAMを料理でやってみよう」の目標は,このレシピから学べる人を育てることです。STEAMは何かをただ覚えることではなく,新たな課題や問題に出会った時に今まで手に入れてきたものを組み合わせて解決方法を考えることでプロジェクトを進めていきます。新たな料理を作る,今までの料理をちょっと変えてみる,そんな時にどうすればいいのか,経験から仕組みを考えて取り組めることが求められます。
プロジェクトは時間がかかるものもありますが,料理なら大体その日のうちに完結しますし,結果も分かりやすい。思った通りのものが出来たか,そして美味しいのか,実感することができます。
どうせお家にいるのだから,ふだん料理しない人もやってみると面白いし,もしお子さんがいるのであれば一緒にやってみると楽しいだけではなくて,未来を生き抜く力も身についちゃうかもです。
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