スクリーンショット_2020-02-26_22

新時代の回復期リハ病棟における脳卒中後の上肢機能回復アプローチ(講演動画付き)

【回復期リハ学会上肢シンポジウムのオンライン開催の見逃し講義動画です!!】

 先日、中止が決まった回復期リハビリテーション 病棟協会 研究大会in 札幌で開催予定であった回復期病院における脳卒中後の上肢麻痺に関するシンポジウムをオンラインで開催致します!!以下、内容です。ご参照下さい。

※なお、こちらは2020年3月14日に既に終了したものの見逃し動画を実装しています。内容が気になる方は是非。

主旨

 中止となった、回復期リハビリテーション病棟協会 研究大会in札幌で実施予定であった、シンポジウムを一部改変し、さらにグレードを上げたものをオンラインにて開催します。


内容

 上記学会で実施予定であったシンポジウム「上肢麻痺へのチャレンジ・・・機能とADL改善へ、もう一歩進むために」の内容に沿って実施する。

1)竹林崇           (回復期におけるCI療法総論とシンポジウム全体の総括)

『新時代の回復期リハ病棟における脳卒中後の上肢機能回復アプローチ』
2)徳田和宏先生(急性期における病棟実施型のCI療法と回復期との連携について)
3)庵本直矢先生(回復期におけるロボット療法の運用方法と実際)
発表時間は一人、30分の発表と最後に竹林崇先生からの総括プレゼンを30分程度の計2時間程度を予定しています。

各種費用について

 ・参加費について:500円


タイムスケジュール

日時:2020年3月14日(土)20:00時〜22:00時までを予定(若干の延長あり)
20:00〜20:05:本日の内容説明,注意事項のアナウンス
20:05〜20:35 :竹林崇の発表
20:35〜20:40:(zoomの音声及び画面共有の挙動確認)
20:40〜21:10:徳田和宏先生の発表
21:10〜21:15 :(zoomの音声及び画面共有の挙動確認)
21:15〜21:45:庵本先生の発表
21:45〜22:00:竹林崇先生からの総括プレゼン
参加方法:zoomを使用する
(購入後のページにURLを記載、終了後、シンポジウム動画も資料内に掲載予定)

進行について

タイムスケジュールに関しては上記に沿って行います。なお、参加者には,事前にzoomアプリのダウンロード,参加時の音声のミュート・動画を使用しないようよろしくお願い致します(こちらでも音声ミュート・動画使用をできない状況に設定しますので、zoomログイン後は音声・動画ボタンに触れないようにお願いします)。多くの参加者が予測されるので、当日の質疑応答は基本的には受け付けません。

*TKBオンラインサロン内では後日質疑応答会を設定する予定にしております。

発表者抄録

『新時代の回復期リハ病棟における脳卒中後の上肢機能回復アプローチ』

大阪府立大学 地域保健学域 総合リハビリテーション学類 
作業療法学専攻 准教授 竹林崇

2000年代半ばより多くの研究者により,生活期における脳卒中後の上肢機能改善に関するエビデンスが蓄積され,多くのガイドラインが特定の手法について,エビデンスレベルAを示し,推奨を行なった.その代表的な例がConstraint-induced movement therapy(CI療法)とロボット療法である.これらの手法は多くのランダム化比較試験により,生活期だけでなく,亜急性期および急性期においてもエビデンスを構築しつつある.
 本邦でも2003年ごろからこれらの療法は臨床利用され,様々な臨床研究が実施されている.我々のグループも主に前述の2つの療法について,様々な検証をしている.例えば,CI療法に内包されている麻痺手の使用頻度を改善させるTransfer packageの有無により,生活における麻痺手の使用頻度の改善の是非を検討した.その結果,Transfer packageが脳卒中患者の麻痺手の使用頻度を促し,その後長期的な上肢機能の維持・改善に寄与できる可能性を報告した.また,ロボット療法については,亜急性期において,通常のリハビリテーションに加えて,介入群としてロボット療法を用いた自主練習を実施した群と対照群としてボバースコンセプトを基盤とした自主練習を実施した群において6週間の介入後の比較検討を実施し,対照群に対し,介入群において有意な上肢機能の改善を認めたと報告した.
 これらの検討の中から,我々はCI療法とロボット療法はそれぞれの欠点を補い合い,対象者の幸福に寄与できるのではないかと仮説を立てた. CI療法は上肢機能および麻痺手の使用頻度を改善するものの,多くの練習時間を要すため,一部の研究者からは実臨床では実施が厳しいと報告されている.一方,ロボット療法を用いた自主練習は,対象者が正確な自主練習を繰り返し実施できるため,練習に関わる療法士の人的負担を軽減してくれるが,実生活における使用頻度の改善には寄与しない.ただし,そのロボット療法の欠点については,CI療法における行動戦略が補うことが考えられた.
 これらの仮説を検証するため,我々は生活期の脳卒中患者を対象に,自主練習によるロボット療法と療法士によるCI療法の併用療法の効果を国内23施設において,PROBE法を用いた多施設共同ランダム化比較試験を用いて検証を行なった.本講義では,ロボット療法という新しいテクノロジーを臨床において,どのように用いるかといった臨床疑問を,本ランダムか比較試験の結果により示そうと考えている.加えて,新時代において脳卒中の上肢麻痺に対するアプローチにおけるロボット療法は非常に大きな位置付けを占めると予測している.その中において,ReoGo-J(帝人ファーマ株式会社)を用いたロボット療法の具体的な使用方法についても述べることで,参加者の臨床に少しでも寄与することを考えている.


『急性期における病棟実施型CI療法と回復期の連携について』

医療法人錦秀会 阪和記念病院 理学療法士 徳田和宏先生

本邦にて脳卒中は年間29万人発症するとされ,その主要な神経症候となる片麻痺は全脳卒中の49.3%に認めるとされている.そのような中,脳卒中後の上肢麻痺に目を向けてみると,実用的なレベルまで機能回復を認める例は5~20%と少ないのが現状である.脳卒中後の上肢麻痺はADLやQOLに及ぼす影響が大きく,これらへの対策は急務であるとことが伺える.現在,脳卒中後上肢麻痺に対しエビデンスを獲得しているアプローチの1つとしてConstraint-induced movement therapy (CI療法)が挙げられる. CI療法について,Takebayashi(2013)は①麻痺手の量的使用②反復的課題指向型アプローチ③獲得した機能を生活の中へ転移させるための戦略(transfer package)とし,これらの実施時間は療法士との練習および自主練習を含め1日5~6時間のプロトコルとされている.ただし,急性期においてDromerick(2009)らは,発症後2週間以内の脳卒中患者を対象に,高負荷のCI療法(1日3時間の介入と起床時間の90%非麻痺手を拘束)と低負荷のCI療法(1日2時間の介入と5時間の非麻痺手の拘束),そして従来の作業療法を対象とした無作為化比較試験を行った結果,高負荷のCI療法は低負荷のCI療法と従来の作業療法に比べ,90日後の麻痺手の機能予後が不良であったと報告し,その後,El-Helowら(2015)は発症14日以内の脳卒中患者に1日2時間のCI療法を実施した30名と通常のリハビリテーションを実施した30名を対象とした無作為化比較試験を行った結果,CI療法群で上肢機能および運動誘発電位において有意な改善を認めたと報告した.以上のことから,急性期から亜急性期におけるCI療法は,練習時間を「2時間以内」という点に配慮すれば有用なアプローチの1つとなりうると考えられる.
 しかし,このような背景を踏まえても,急性期病院や回復期病院での実際の臨床場面において,1日2時間という練習時間を確保することは決して容易ではない.そこで,我々は練習時間の担保という問題を解決する手段の1つとして,病棟看護師と協力し実施する上肢集中練習,いわゆる「病棟実施型CI療法」を開始し継続してきた.多職種連携が重要視される現在のリハビリテーション医療において,とくに病棟看護師とリハビリスタッフとの連携は必須と思われる.よって,今回,CI療法というアプローチをもとに病棟看護師とリハビリスタッフがどのような手続きから上肢練習を開始し,連携を深め,継続してきたかを提示するとともに,これまでの当院における病棟実施型CI療法はどのような成果をもたらしたのかを検証した結果,すなわちエビデンス構築に向けて取り組んだ内容についても提示したい.さらに,我々は2018年から急性期病院と回復期病院が脳卒中上肢麻痺に対するアプローチが一貫して実施できるよう,CI療法連携表を作成し運用してきた.この取り組みについても事例を通じ紹介したいと思う.
以上のことから,本シンポジウムのテーマである「上肢麻痺へのチャレンジ…機能とADL改善へ、もう一歩進む」ために何をどうすべきか,について議論を深める機会にしたいと考えている.

『回復期でのロボットリハビリテーションとCI療法の実際』

社会福祉法人 名古屋市総合リハビリテーションセンター 作業療法士 庵本直矢

脳卒中後の上肢麻痺は,対象者のQuality of lifeの低下をもたらす大きな要因である(Kwakkel,1996).そのため,上肢麻痺の改善は急務であるが,脳卒中後には他の症状も併存するため,実際のところ上肢麻痺に対する必要十分量の訓練が提供されているとは言い難い状況を療法士の大多数は感じたことがあるのではないだろうか.
近年では,脳卒中後の上肢麻痺に対して,質の保たれた十分量の訓練を提供するための一手段としてRobotic Therapy(RT)が注目されており,American Heart Association(AHA)/American Stroke Association(ASA)が2016年に発刊したガイドラインにおいては,中等度から重度上肢麻痺に対して集中的な訓練を提供する合理的な手段として,エビデンスレベルAが与えられている.一方で,普及しているリハビリテーションロボットが少ないことや機器が高価であることから,「RT」というと敷居が高い印象がある.しかし,本邦における少子高齢化を背景とした働き手不足や,医療費増加による財政圧迫などといった社会的情勢を顧みると,今後はリハビリテーション業界へのロボットの導入がより一層活発化することが推測される.そんな中,脳卒中後の上肢麻痺に対するRTの特徴としては,腕が上がるようになるといった機能改善は得意だが,麻痺手の使用行動については改善が困難であると報告されている(Takahashi,2016).すなわち,RTを実施する上で我々療法士は,麻痺手を実生活で「どのように?どれくらい?どの場面で?どう工夫して使う?」などといった麻痺手の使用行動をマネジメントする役割を担うことで,リハビリテーションロボットとの協業を意識する必要があるといえる.
麻痺手の使用行動の改善に有用なアプローチとしては,Constraint-Induced Movement Therapy(CI療法)があり,こちらもAHA/ASAガイドラインにおいてエビデンスレベルAが与えられている.近年においてはCI療法の概念を踏襲しつつ,本邦の診療報酬に則った形での実践報告が増えている.さらには,CI療法の有効性が報告され始めた頃には適応基準外であった重度上肢麻痺例に対しても,RTや電気刺激療法といった他の有効なアプローチと併用することで麻痺手の機能や使用行動の改善を期待できる可能性が示されている.
このようにRTやCI療法を含めたエビデンスベースによる脳卒中後上肢麻痺へのアプローチは,着実に臨床現場にも浸透してきている.本講演では,回復期におけるRTやCI療法の臨床での有用性や有効性について,当院での取り組みを交えながら紹介し,今後の脳卒中後上肢麻痺に対するさらなるチャレンジについて,活発な意見を交わす機会にしたいと考えている.

ここから先は

10字 / 2画像

¥ 500

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?