ジョンとポール問題を敷衍する

これは、とある有名なポップス評論家の話である。かつて彼が知り合いにこう尋ねられたという。「ジョンレノンとポールマッカートニー、どっちが好き?」彼は答える。「ぼくはポールのほうが好き」すると相手は「へえー、ポールのほうが好きなんだー。ふーん。」相手の反応には、明らかに、軽蔑とまではいわないが、こちらの好み、感性をいくぶん見下すニュアンスが込められていたという。
この評論家氏はどう思ったか?
穏健派の彼は「おれはオマエの十倍ジョンのことが好きだ!だが、ポールのことがそれ以上に好きなんだ!」という意味のことを、あくまで口には出さず、心の中で思ったという。
なかなかに含蓄のあるハナシである。ミュージシャンの好みなど、それこそ人の勝手という話で、どっちがエラくてどっちがダサいということは言えないはずなのに、ある種の二項対立があるところにはあるようだ。
ジョンレノン。不良。だけどラブアンドピース。ロックンロール。
ポールマッカートニー。軟弱。甘いラブソング。
いささか悪意のある簡略化だが、ある程度ビートルズを聞き込んだ人ではない一般的なイメージだとこんな風になるのかも知れない。初期のロックンロールは共作だし、ポールにはヘルタースケルターというハードロックの傑作もあるのだが。
さらにこれがグループ単位の比較になると、ビートルズよりストーンズのほうがえらい、という傾向が現れる。
ローリングストーンズ。マニアック。本物。カッコいい。
ビートルズ。ミーハー。だれでも知ってる。
(言うまでもないけど、みんながみんなそう思っているなどという極端な主張をするつもりではないですよ。あくまでもなんとなくのイメージの話です。)
そう言えば橋本治がこれ言ってたんだっけ。ビートルズのことバカにしてた。それはともかく。
そこで登場するのが巨人の星とあしたのジョーである。聡明なる読者諸氏はどちらがポールでどちらがジョンに相当するかはもはや自明であろう。
ゆえにこの文章は結論もなく唐突にここで終了する。お読みいただいてありがとうございました。

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