2020年読書日記22

『首都感染』by高嶋哲夫

なんともタイムリーな小説です。リモートワークが続くある日、日課としている散歩の途中で立ち寄った本屋さんのレジ前に平積み。どうしても手にとってしまいました。帯の惹句がまた刺さります、だって「総理は東京封鎖を決断した」ですもの。

文庫で約600ページ。大作です。新型の強毒性インフルエンザが中国雲南省で発生し、世界で感染が始まり、東京でその拡大を阻止するという……もう現実との同期にクラクラしてしまうこと必定のストーリーです。頻出するワードもいまわたしたちが新聞、テレビ、ネット記事で目にするものばかり。小説でも外出制限が行わています、違うのは封鎖「ロックダウン」しているかしてないか。

奥付を確認すると、発行は2010年!? え、10年前! そんな昔に書かれた小説の世界がまさにわれわれの眼前に現れているって、どういうことだ。著者の高嶋哲夫といえばパニック小説の大家であり、わたしの書評でも地震と原発事故題材にした『メルトダウン』をかつて取り上げたことがありました。

この本も現実を見越したかのような内容に驚愕しきりでしたが、『首都感染』はリアルタイムで過ごしているだけに、腰が抜けるくらいの衝撃です。文庫の書評を書かれている成毛眞さんがいみじくもこうおっしゃっていますーー「わたくしは高嶋哲夫作品をこれから起こる未来の記録、いわば未来のノンフィクションとして読んでいるのです。(中略)まさに高嶋さんの作品は未来の歴史であり、そこから多くのことを学ぶことができると思うのです」。そう、まず学ぶべきはコレに尽きます、「ステイホーム」。


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