ポットコントロールに関して

概要

こんにちは
今回はThe Mathematics of PokerのChapter 7の内容に関して書いていこうと思います。


最近いろいろなゲームに手を出してみているのですが、PLO難しいですよね。

フロップ、ターンでSPRが3-4くらいで早くALL-INしたいけど、どうアクションすれば一番いいのかわからないというシチュエーションに出くわします。


もしかしたらそれのヒントになるかもしれないと思い、今回は「The Mathematics of Poker」の第七章の内容について考察していきます。

3つの例があるのですが、流れ的には一つ目が導入、二つ目が本題、三つ目がそれの発展といった感じだと思います。


Example7.1

お互い相手のハンドが見えている状況の$30-$60studの5thで現在のpotが$400、
effective stackが$120の状況です。

X:ストレート(FDなし)
IP:FD

に関してです。

IPのフラッシュ目のスートを Xが一枚持っているとします。
この時IPは残り42枚中8枚アウツがあるので、Xのエクイティは34/42*33/41で約65%、IPのエクイティは35%です。

5thでpotがいくらになるかは3種類のみです。

1. ベットにレイズが入り、5thでALL-INになる場合
2. ベットにコールしてpotが$520になる場合
3. どちらもチェックしてpotが$400のまま

それぞれの場合のEVについて考えます。

1. ベットにレイズが入り、5thでALL-INになる場合

これは一番簡単です。単純にエクイティ通りに計算できるので、
EV(X) = 640 * 34/42 * 33/41 - 120 = $297です。


2. ベットにコールしてpotが$520になる場合

これは場合わけして考えます。

(1) 6thのカードがYのフラッシュが完成するカードの場合

これはYがpotをとることが確定するのでXのEVは-$60です。

(2) 6thのカードがそれ以外の場合

Yのエクイティは41枚中8枚のアウツを引く確率なので、約19.5%です。
もちろんXはYにフリーカードを与えないためベットし、Yはpotが520に対して60のベットにはオッズが達しているのでXのALL-INベットに対してコールします。
その時のXは7thでIPのフラッシュが完成しなければ+$520、フラッシュのアウツを引かれると-$120の結果になります。

したがって、
EV(X) = 8/42 * (-$60) + 34/42 * 8/41 *(-120) + 34/42 * 33/41 * $520 = $308
と計算できます。

6thのカードがフラッシュ完成かどうかみてから判断できるのでその分5thでALL-INになる場合に比べて得することができます。

3. どちらもチェックしてpotが$400のまま

先ほどと同じように6thのカードがフラッシュ完成のカードならばXは単にギブアップし、そうでなければXがベット、YがコールするのがそれぞれのGTOです。
同じように場合わけして考えて計算すると、

EV(X) = 8/42 * $0 + 34/42 * 8/41 * (-$60) + 34/42 * 33/41 * $460 = $290
となります。

第一項が6thがフラッシュ完成のカードの場合、第二項が7thでフラッシュ完成するカードが落ちた場合、第三項がそれ以外の場合について考えています。


これらをまとめると以下のようになります。

画像1

この場合Xにとってチェックで回るのが最悪の状況なのでベットします。それに対してIPはレイズオールインをすることが最善の選択肢になります。

よってこの場合のナッシュ均衡はXがベットをしてIPがレイズオールイン、Xがそれをコールするという戦略の組み合わせになります。
お互いのハンドが見えているという実際にはない状況ですが、この場合はドロー側はエクイティがアンダードッグにもかかわらずレイズして早めにオールインに到達した方がいいということがわかります。


Example7.2

二つ目の例はホールデムです。
こちらもお互いのハンドが見えている状態で、三種類のスタックサイズの場合について考えます。

X(OOP): AhAd
Y(IP): 8c7c

Flop: 9c6c2d (pot$100)

Yがストレートフラッシュドローで残り45枚中15枚アウツがある状況です。
複雑にならないようにAAがフルハウスを引いたり、87sがツーペアを引いたりする場合が考えないです。

この状況でベットサイズがポットサイズのみ、レイズサイズがポットレイズのみ(どちらもスタックがポットより小さい場合はオールインです。)という選択肢でのGTOを、effective stackが$50, $400,$1300の時についてそれぞれ考えていきます。

現状のXのエクイティは30/45 * 29/44で約44%、Yのエクイティが約56%です。


1. eff stack $50,SPRが0.5の時

これは簡単でフェイバリットのYがbetしてXがcallします。
XのEVは、
EV(X) = $200 * 30/45 * 29/44 - 50 = $37.88
になります。

もしFlopがcheckで回った時のXのEVは30/45 * (29/44 * $200 - $50) = $54.55になります。

YはFlopでオールインにするのがGTOなのでXからベットしてオールインすることもGTOであり、もしYがチェックで回すことがあるならXはチェックすることで搾取することができます。

YはFlopでベットしないとターンでアウツを引いた時にXにペイオフさせることができない分損してしまいます。

実際にpiosolverで計算させてみても、XはチェックでもベットでもEVが同じですが、Yはベットの方がEVが高いです。

スクリーンショット (16)


スクリーンショット (17)


2. eff stack $400,SPRが4の時

この場合はExample7.1の時のように、Flopでのアクションによって場合わけして考えていきます。

(1) チェックで回る場合

この時のXはYにアウツを引かれなければターンは、XがポットベットしてYがコールすることになります。
Yには残り44枚中15枚のアウツがあるのでポットベットにはオッズがあうためです。
もし、Yにアウツを引かれた場合はXは単にギブアップするだけです。
したがってXのEVは、

EV(X) = 15/45 * $0 + 30/45 * (29/44 * $300 - $100) = $65.16

第一項はYのアウツを引かれた場合、第二項はそれ以外の場合について計算しています。

(2) ベット、コールで進んだ場合

Flopで片方のプレイヤーがポットベットして、もう片方のプレイヤーがコールした場合です。
potは$300、eff stackは$300でSPRが1になります。

この場合にターンでYがアウツを引かれなかった場合は、先ほどと同様にXがALL-INのポットベットをしてYがコールすることになります。

この時のXのEVはこれまでと同様に計算できて、

EV(X) = 15/45 * (-$100) + 30/45 * (29/44 * $900 - $400) = $95.45

です。

(3) ALL-INの時

これはエクイティ通りにEVが計算できて、

EV(X) = $900 * 30/45 * 29/44 - $400 = -$4.55

です。


まとめると以下のようになります。

画像2


XはFlopでポットベットにコールが入る状況が理想的であり、YはALL-INになることが理想的です。
見えているドローに対しては刻んでいくことで、得をすることができるという直感と合致するかと思います。

しかし、ここでXがポットベットしてしまうとYにレイズされてしまい、EVがマイナスになってしまいます。Yにレイズされるくらいならポットを諦めた方がいいくらいです。

よってXはチェックします。

そのチェックに対して、YはALL-INに持っていきたいからといってベットすると、Xにコールされてチェックバックした時に比べてEVを損してしまいます。

したがってこの状況でのナッシュ均衡は、Xがチェックして、Yがチェックバックする戦略の組み合わせになります。

実際にpiosolverで計算しても両者チェックの純粋戦略になることがわかります。

スクリーンショット (18)

スクリーンショット (19)


どちらも理想的な状況を求めてベットしてしまうと、最悪な状況に陥ってしまうため、チェックするというアクションに落ち着きます。

お互いのハンドが見えているという仮定のもとでもあり、少し奇妙な気もしますが、これに近いシチュエーションがPLOではあると思います。


3. eff stack $1300,SPRが13の時

これまでと同様に考えていきます。

(1) チェックで回る場合

この時は、ターンでどのカードが落ちてもターンとリバーでレイズに対するコールが入ることはないのでpotが$400の時と同じで、XのEVは、

EV(X) = 15/45 * $0 + 30/45 * (29/44 * $300 - $100) = $65.16

(2) ベット、コールで進んだ場合

この場合も、ターン、リバーでレイズに対するコールが入りpotが$900より大きくなることはないので

EV(X) = 15/45 * (-$100) + 30/45 * (29/44 * $900 - $400) = $95.45

ベット、レイズ、コールで進んだ場合

この場合は、ターンでYのアウツが落ちた場合はXがギブアップ、これ以外の時はXがALL-INのポットベットをうち、Yはオッズが足りているためコールします。
よって、XのEVは、

EV(X) = 15/45 * (-$400) + 30/45 * (29/44* $2700 - $1300) = $186.36

(3) ALL-INになった場合

エクイティがpotを獲得できる確率なので、

EV(X) = $2700 * 30/45 * 29/44 - $1300 = -$113.64


まとめると以下のようになります。

画像3


Xはベットすることで、最善か次善のEVを得ることができるのでベットします。YはALL-INになることが理想的ですが、Xのベットに対してレイズしてしまうと単にコールされてかなりの-EVになってしまいます。

したがってこの状況でのナッシュ均衡は、XがポットベットしてYがコールするという戦略の組み合わせです。

実際piosolverでも計算してみると同じような計算結果をみることができます。

スクリーンショット (20)

スクリーンショット (21)


Example7.3

先ほどの例はベットサイズがポットサイズのみでしたが、今回はポットリミットホールデムです。

X(OOP): AhAd
Y: 8c7c

Flop:9c6c2s(pot$400)
effective stack $100, SPR4


というシチュエーションでの両者のGTOに関して考えていきます。
先ほどと同様に、単純化のためAAがフルハウスになる可能性や87sがツーペアになる可能性は考えません。
残り45枚中15枚のアウツを引いた場合に87sがポットを取れることを考えます。

これまでみてきたようにYとしてはエクイティが約56%とフェイバリットなので可能ならばFlopでALL-INにいきたいです。

逆にXとしては、Yがドローをミスするターンが出た時に大きな利益を得ることができるため、レイズに注意しながら刻んでちょうどいいサイズのベットをしたいです。


それを踏まえてXはFlopでどんなサイズのベットをするのがいいのかを求めていきます。

Flopで結果的にXがポットに投入した額xについてのXの期待値の関数EV(x)を考えます。

0<x<=100の時はターンでポットベットができますが、100<xの時はターンでのベットがポットより小さいALL-INになります。

ターンでYがアウツを引けなかった場合でもエクイティが15/44で1/3以上あるのでYはターンのポットベットにもコールします。

よってこの二つで場合わけして考えます。

(1) 0<x<=100のとき

EV(x) = -15/45 * x - 30/45*15/44 * (x + 2x + 100) + 30/45 * 29/44 *(3x + 200)
EV(x) = 10/33 * x + 65.15

と計算できます。


第一項はターンでYのアウツを引かれるとき、第二項はリバーでYのアウツを引かれるとき、第三項はターン、リバー共にアウツを引かれなかった時に関して考えています。

(2) 100<xのとき

先ほどと同様に計算すると、

EV(x) = - 15/45 * x - 30/45* 15/44 * 400 + 30/45 * 29/44 * 500
EV(x) = - ⅓ * x + 128.79

以上より、EV(x)を図示すると以下のようになります。

画像4

これまでからわかるようにXとしては、ポットを最大限膨らませつつターンでポットベットができるのが理想的なので、Flopでは$100投入したいです。

しかしXのベット額kに対してYは3k+100までレイズをすることができるます。このグラフでいうとYはXのベット額kに対してk<= x <= 3k+100をみたす任意のxをFlopで投入する金額として選択できます。

したがってXはこの範囲でのEV(x)の最小値が最大になるようなkを選べば良いです。そのようなkは、

10/33 * k + 65.15 = - ⅓ * (3k + 100) + 128.79
k = 23.26

と求められます。


Xが$23.26ベットすることでYはコールしてもポットレイズしてもEVが変わらず、それ以外のレイズをするとEVを損してしまいます。

よってXは$23.26ベットし、Yはコールまたはポットサイズレイズをすることになります。
Yにポットレイズをされた場合、Xはコールします。

XはEV(23.26) = 72.20より、$72.20の期待値になります。

まとめ

SPRはポーカーの戦略に大きな影響を与える一つの要素です。

SPRを考慮せずに、なんとなく強そうだから、現状勝ってそうだから、早くALL-INになって欲しいから、などの理由で安易にてきとうなサイズのベットしてあとで困ることにならないようにポットコントロールを意識することも大事なのではないかという内容でした。


今回の内容は以上です。
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