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20210925 / かつおぶし、一端をうかがう

起きてすぐにスリッパを買い替えたいことを思った。少し値段は張るけれど、保護猫カフェnecomaで猫が爪研ぎできる通気性の良いスリッパが売っていることを私はSNSで知っていて、電話をして在庫があるか確認した。あったので行くことにした。そのあとには気になっている画家の展示に行くことに決めた。保護猫カフェに入ると妻の友達で知り合いの写真家の人がいてワイワイガヤガヤと盛り上がり、手を洗って中に入った。猫は入るとすぐ寄ってきて、なんやなんやおいおいなんやなんやなどと言っていると、スタッフの方が異なるサイズのスリッパを持ってきてくれた。持ってくるなり、猫達はスリッパに寄ってたかって大変で、もしゃもしゃして嬉しかった。履き比べると意外とMよりもSの方がちょうど良く、黒のSを買うことにして一度奥に下げてもらった。スリッパが下げられてしばらくすると、さっきまで私の周りにいたたくさんの猫達はポツリポツリといなくなり、やはり私が特別人気者なわけではなかった。頼んでいた洋梨サイダーをゆっくり飲み、カフェでやっていた展示をゆっくり見た。展示は手捻りで陶器を作るSHOKKIというレーベルの『かつおぶし』という展示で、SHOKKIのものは家にもいくつか置いている。餌台や水の台、魚や小判のようなものまで全てが陶器で、展示されたり実際に使われたりしていた。欲しかったけれど今日はスリッパも買うし、買うことまではやめた。しばらく猫は寄ってこない。ようやく寄ってきた猫をイラつかせないように触るもそのまま目の前を素通りされる。寝ている猫に近づき、起こさないように慎重に撫でていた。噛み付いてくる猫はおらず、ぶんはどうしていつも噛み付くのだろうと気になった。気づくと時間がきていて、お金を払ってスリッパを受け取りそこを出た。次は画家の豊田涼華さんの展示『一端をうかがう』に向かうが、お腹が減っていたのでケンタッキーでペッパーマヨツイスターを食べてから電車に乗った。江戸川橋には初めて降りた。景観条例などで街に建つ建物の彩度が制限されているのか、真っ白な建物や派手な色味の建物はなく、茶色や薄緑や薄桃色など、落ち着いた色味の外壁が多かった。ギャラリーはもともと郵便局だったようで、「POST OFFICE」という文字が入口の上に残っていた。外壁も一階部分は茶色のタイル張りになっていて、私が好きな建物の感じを纏っていた。入るとその空間は全部を一度に把握できる程の広さで、柱が一本あり、唯一そこが陰になっていた。はじめ1人だけ人がいて、そのあと私がいる間に数人が出たり入ったりした。展示は本当に良かった。緻密とかうまいとか繊細とか、そういう技術的なことではなく、状態や場の空気、オーラのようなものを絵自体が明確に纏っている。どちらかと言えば具象だが抽象的な部分もあり、現実に近い夢のような、現在に近い記憶のような、未来に近い妄想のような、そんな空気が絵の中にある。すごい…と声が出てしまうほどだった。良い気持ちで会場を出る。御茶ノ水で用事を済ませて家に帰った。

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